精選版 日本国語大辞典 「本」の意味・読み・例文・類語
ほん【本】
[1] (漢語では、もともと、草木の根、または根に近い部分をいうが、日本では物事のもとになるもの、根本、基本の意から、規範となるもの、主たるもの、本来的なものなどをさしていう)
① もとになるもの。書写されるもとの書物など、ある状況から転じて現在の姿に変わったものに対して、そのもとのものをいう。
※枕(10C終)七五「物語・集など書き写すに本に墨つけぬ」 〔後漢書注‐延篤伝〕
② ならうべき規範、模範となるもの。手本。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「孫王の君の御許にあめりし本どもを、いとわづらはしく書かせ給ふめりしが」
③ さまざまある中で、すべて、その根元となるようなもの。基本。根本。もと。
※親鸞聖人消息(13C中)略本「凡夫のならひなれば、わるきこそ本なればとて、おもふまじきことをこのみ、身にもすまじきことをし」
④ もっぱら、主たるものとして据えたり大事にしたりするもの。
※風姿花伝(1400‐02頃)六「この道は見所(けんしょ)をほんにする態(わざ)なれば」
⑤ (形動) 本来的であること。本当であること。また、そのさま。副詞的にも用いる。
※史記抄(1477)八「漢書の高五王伝は、次第が是とはちがうたぞ。此が本であらうぞ」
※甲陽軍鑑(17C初)品一三「別而本の未練者は千人の中にもさのみなし」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「これほど有がたい江戸にゐて渡世の出来ぬ奴は本(ホン)いくぢなしだ」
⑥ 官位を示す語に付けて、本来的に相当する意を表わす語。「権」に対していう。
※平家(13C前)七「本三位中将重衡」
⑦ 書籍。書物。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)季布欒布田叔伝第七「忌を忘と作た本がある」
⑧ 特に、脚本・台本の類をいう。
※春泥(1928)〈久保田万太郎〉みぞれ「脚本(ホン)としたら随分悪い脚本(ホン)」
[2] 〘接頭〙
① 名詞に付けて、今、現に問題にしているもの。当面のものである意を表わす語。当の。この。「本席」「本講堂」「本県」「本事件」など。
② それが話している自分にかかわるものであることを表わす語。「本官」「本大臣」など。
[3] 〘接尾〙 (撥音に続く時「ぼん」、促音に続く時「ぽん」となる)
① 植物、またはこれに似た細長い棒状のものを数えるのに用いる。漢語の数詞に付けていう。
※九暦‐九条殿記・五月節・天慶七年(944)五月六日「雅楽寮官人一人令特勝負標二本於伴部二人」 〔漢書‐循吏伝・龔遂〕
② 剣道や柔道などで、技(わざ)の数を数えるのに用いる。「勝負三本」「一本勝負」など。
③ 葉書や電話などの回数を数えるのに用いる。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏「端書を一本寄来した限」
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