異本(読み)いほん

精選版 日本国語大辞典 「異本」の意味・読み・例文・類語

い‐ほん【異本】

〘名〙
一風変わったところのある書籍。また、珍しい本。珍本
※島崎金次郎宛大田南畝書簡‐享和元年(1801)四月二八日「とかく異本有之候はよろしく、塙検校の古語候も存出し申候」 〔南史‐王僧孺伝〕
元来同一の書物ではあるが、伝来が異なるために、流布本(るふぼん)との間に文字や文句に違った部分のある本。一本。別本
※応永本論語抄(1420)学而「如此伝々するほどに、章の落たる事もあり。文の前後する事もあり。是に依て異本多くでくる也」

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デジタル大辞泉 「異本」の意味・読み・例文・類語

い‐ほん【異本】

同一原典に由来しながら、伝承過程本文順序や組み立てなどに異同を生じた本。別本。→定本流布本るふぼん
世間にほとんど流布していない珍しい本。珍本。
[類語]写本類書流布本海賊版底本原本原典原書テキストオリジナル原作出典典拠種本抄本校本定本

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図書館情報学用語辞典 第5版 「異本」の解説

異本

印刷作業の途中訂正が行われたために発生する,同一版にもかかわらず本文の異なる本.異刷ともいう.ヨーロッパにおける活版印刷初期には,印刷作業は校正作業と並行して行われ,間違いが見付かれば印刷作業を一時止めて訂正を行い,再び印刷を再開したため,異本が生じる.写本の場合は,同一の本文を持つ本はすべて異本となる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「異本」の意味・わかりやすい解説

異本
いほん

流布本に対して,それと同一の書であるが,多少文字や語句に相違するところがある伝本。異本の成立は『源氏物語』などの場合は書写の過程で生じたものであるが,劇作品の場合は作者の自筆原稿,上演用台本,舞台事情による改作のほか,剽窃 (ひょうせつ) 版などの存在がある。異本の比較対照はテキスト・クリティクの重要な部分をなす。

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