醒睡笑(読み)せいすいしょう

精選版 日本国語大辞典 「醒睡笑」の意味・読み・例文・類語

せいすいしょう セイスイセウ【醒睡笑】

咄本(はなしぼん)八巻安楽庵策伝作。元和九年(一六二三)の成立。戦国末期から近世初期、お伽衆によって語られていた笑話中心として四二項に分類、集大成した一大笑話集。当時の社会や時代風潮を反映した話が多く、後代落語や咄本などに大きな影響を与えた。寛永五年(一六二八)京都所司代板倉重宗に献呈された。

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デジタル大辞泉 「醒睡笑」の意味・読み・例文・類語

せいすいしょう〔セイスイセウ〕【醒睡笑】

江戸初期の咄本はなしぼん。8巻。安楽庵策伝著。元和9年(1623)成立。戦国末期から近世にかけて語られていた笑話を、全編42に分類、集大成したもの。のちの咄本や落語に大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディア 「醒睡笑」の意味・わかりやすい解説

醒睡笑【せいすいしょう】

江戸時代噺本(はなしぼん)。8巻。誓願寺の僧安楽庵策伝編。1623年成立。京都所司代板倉重宗の依頼で1000余の笑話,逸話を42項に分類編集したもので,先行の《戯言養気集》《きのふはけふの物語》と比べて教訓臭が強い。先行の説話,噺本との重複も多いが,質量ともにすぐれ,のちの笑話本,落語に大きく影響した。
→関連項目仮名草子小咄瘤取爺噺本

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「醒睡笑」の意味・わかりやすい解説

醒睡笑
せいすいしょう

噺本(はなしぼん)(笑話本)。八巻。浄土宗説教僧であった安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)が、京都所司代板倉重宗(いたくらしげむね)の懇請によって編集したもの。1623年(元和9)に完成し、28年(寛永5)3月17日に重宗に贈呈した。写本で伝わるもの(広本)には1000余の咄(はなし)を、整版本(略本・狭本)には311の咄を収め、それぞれ42項に分けられている。内容は、策伝が見聞した各地の逸話、僧界の内情、戦国武将の行状民間説話、風俗や書物から得た説話を材料にした笑話が主であるが、経典の解釈や教訓・啓蒙(けいもう)的な咄も多い。咄の末尾に落ちをつける「落し噺(ばなし)」の型をもつものがほとんどであり、策伝自身がこれらを説教の高座で実演したために安楽庵策伝は後世「落語の祖」とたたえられた。この書は、説教僧としての策伝が、説教話材のメモを集成したものである。したがって、噺本(笑話本)ではあるが、説教本(仏書)の性格をもっている。

[関山和夫]

『鈴木棠三校注『醒睡笑』上下(岩波文庫)』『関山和夫編『醒睡笑』(1981・桜楓社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「醒睡笑」の意味・わかりやすい解説

醒睡笑 (せいすいしょう)

笑話本,噺本。8巻。安楽庵策伝が,京都所司代板倉重宗の依頼によって1615年(元和1)ごろに筆を起こし,23年に完成,28年(寛永5)3月17日に重宗に献呈したもの。写本で伝わるもの(広本)と整版本(略本,狭本)があるが,内閣文庫本(広本)には1039の咄(笑話(しようわ),落し噺),寛永整版本には311の咄が収められ,それぞれ42項に分類してある。この書は浄土宗の説教僧であった策伝が説教の話材を集めたもので,教訓・啓蒙的な咄もあるが,あらゆる種類の滑稽談が網羅され,後世の落語や戯作に強い影響を与えた。本書所収の落し噺は,著者が説教の高座で実演したものであるため安楽庵策伝は〈落語の祖〉と呼ばれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「醒睡笑」の意味・わかりやすい解説

醒睡笑
せいすいしょう

江戸時代前期の咄本 (はなしぼん) 。安楽庵策伝著。元和1 (1615) 年頃,著者が京都所司代板倉重宗の前で咄をしたとき,書き集めて書物にするよう依頼されて起筆,同9年完成,寛永5 (28) 年3月 17日重宗に贈ったもの。著者が幼年時代から耳にしたり読書によって得た笑話を集めたもので,写本では8巻 42項,約 1000話,板本では 300話あまり所収。笑話集として最古のものの一つで,しかも最大。内容は各種の滑稽にわたって豊富。所収笑話はおおむね室町から安土桃山時代に行われたものであるが,広く和漢の書から取材している。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「醒睡笑」の解説

醒睡笑
せいすいしょう

仮名草子。8巻。安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)著。1623年(元和9)成立,28年(寛永5)京都所司代板倉重宗・同重郷父子に献呈された。1030余の短編笑話を42項に分類し収めた写本と,300余話に抄出した版本がある。純粋な笑話もあるが,和歌・狂歌などの風流韻事にかかわる実在人物の機知に富んだ話が多い。「岩波文庫」「噺本大系」所収。

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世界大百科事典(旧版)内の醒睡笑の言及

【安楽庵策伝】より

…長じて山陽・近畿地区で布教活動に従事し,いったん美濃の浄音寺に帰ったが,1613年(慶長18)に京都の大本山誓願寺55世住職となる。同寺在住中に《醒睡笑》8巻を著し,同書が完成した23年に誓願寺塔頭(たつちゆう)竹林院を創立してここに隠居。茶室の安楽庵に風流の人士を招いて茶事をなし,狂歌を楽しむ。…

【落語】より

…それは,武将本位の《戯言養気集》に対して,各階層を主人公にした幅広い題材と平和時代に合致する明朗な笑いを提供したためだった。これと並んで《醒睡笑(せいすいしよう)》(1628成立)も当時の御伽衆の姿を伝えていた。これは,フリーな立場にあった御伽衆の安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)が,京都所司代板倉重宗の御前で口演したはなしの筆録で,武家に関する咄,板倉父子の裁判咄なども収められ,《昨日は今日の物語》にくらべると,庶民性,明朗性に欠ける。…

※「醒睡笑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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