(読み)ツクヅク

デジタル大辞泉 「熟」の意味・読み・例文・類語

つく‐づく【熟】

[副]
物事を、静かに深く考えたり、注意深く観察したりするさま。よくよく。じっくり。「寝た子の顔を(と)眺める」「(と)将来を考える」
物事を痛切に感じるさま。しんから。しみじみ。「(と)自分が嫌になる」「社会の厳しさを(と)感じる」
もの寂しく、ぼんやりしているさま。つくねん。
「―と臥したるにもやるかたなき心地すれば」〈紅葉賀
[類語](1しげしげじっくりよくよくくれぐれ念入り入念とくととっくり心して細心丹念克明周到みっしりみっちりつらつらまじまじじっとじろじろじろりきょろりぎょろりきょときょときょろきょろぎょろぎょろはたきっとはった明視がん熟覧細見嘱目瞠若どうじゃく瞠目どうもくめつすがめつの目たかの目のみ取りまなこ視一視目する見入る見張る見澄ます目を凝らす注目虎視虎視眈眈たんたん注視刮目かつもく目配り凝視目撃着目着眼直視正視見る眺める見遣る見詰める見据えるにら目に留まる目を留める目を配る目を注ぐ目を付ける目を向ける目をくれる視線を注ぐ目を遣る目にする目を据える瞳を凝らす瞳を据える目を奪われる目を輝かす目を光らす目を転ずる目を向ける目が行く目を皿にする/(2しみじみ切切痛切切実深刻ひしひしじいん心からせつびんびん哀切哀れ悲しい物悲しいうら悲しいせつないつらい痛ましい悲愴ひそう悲痛悲傷沈痛もの憂い苦しい耐えがたいしんどい苦痛やりきれないたまらないる瀬ない断腸の思い胸を痛める胸が痛む胸が塞がる無性にやたらむやみみだりむやみやたらめったやたらめったやみくもあまり無下に後先なし無謀無鉄砲めくら滅法盲目的後先見ず向こう見ず命知らず破れかぶれやけ自暴自棄ふてくされるやけくそやけっぱち自棄捨て鉢八方破れ無軌道放埒ほうらつ放縦放逸奔放野放図勝手次第好き勝手ほしいままつらつらしんから心が動くこよなくぞっこん度外れめっぽう途方もない途轍とてつもない桁違い過度すごくひどいはなはだこの上ないとても特別ことさらひたすらけだるいアンニュイ胸が裂ける胸が張り裂ける胸がつかえる胸が潰れる胸がつまる気を揉む重苦しい滅入る気遣わしい塞ぐ塞ぎ込む消沈しょげるしょげ返る沈む憂鬱憂愁沈鬱メランコリー気鬱気塞ぎ鬱鬱陰鬱暗鬱鬱屈鬱結鬱気うっき鬱悶うつもん鬱積抑鬱憂さ鬱陶しい悶悶もんもん

じゅく【熟】[漢字項目]

[音]ジュク(呉) [訓]うれる にる にえる なれる こなれる つらつら
学習漢字]6年
よく煮る。煮える。「半熟
果物や作物などがうれる。十分に成長する。「熟柿じゅくし完熟成熟早熟晩熟豊熟爛熟らんじゅく
物事に十分なれる。「熟達熟練円熟慣熟習熟老熟
十分に。よくよく。「熟考熟視熟睡熟読熟慮
[難読]熟寝うまい晩熟おくてずし熟蝦夷にきえみし

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精選版 日本国語大辞典 「熟」の意味・読み・例文・類語

こな・す【熟】

〘他サ五(四)〙
[一] 形あるものを細分する。粒状、また粉状にする。
① 細かくする。砕いて細かくする。粉砕する。
書紀(720)欽明五年一二月(北野本南北朝期訓)「島の東の禹武邑(うむのさと)の人、椎子を採拾(とり)て熟(コナシ)(は)まむと為欲(す)るに」
古今著聞集(1254)二〇「件(くだん)の上人如法経かかんとて、かうぞをこなして料紙すきけるとき」
② 土などを耕しならす。土を掘り起こして砕き細かくする。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
俳諧・猿蓑(1691)四「かげろふや土もこなさぬあらおこし〈百歳〉」
③ 稲、麦、豆などの穀類を穂から落として粒にする。脱穀する。
浮世草子・好色二代男(1684)四「麦こなしたるわらを重(かさね)置ける所」
食物を消化する。
※全九集(1566頃)一「夫五味は口にいり胃にをさまるといへども、是をとろかしこなして脾にわたせば」
※こゝろ(1914)〈夏目漱石〉下「それ以上の堅いものを消化(コナ)す力が何時の間にかなくなって仕舞ふのださうです」
[二] 上位に立って他を思いのままに扱う。
① 思いのままに自由に扱う。与えられた仕事、問題をうまく処理する。
説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)上「きをば一ぽんきりたるが、こなすほうをしらずして、もとをもっておひきあれば」
人情本・春色辰巳園(1833‐35)初「色の世界のならひとて、〈略〉男をこなす取まはし」
② 思うままに処分する。片づける。征服する。
※両足院本山谷抄(1500頃)一「艸枯時分に夷をこないてくれうと思ぞ」
③ 見くだす。軽蔑する。軽く扱う。
※土井本周易抄(1477)一「上なる物は負くるもやすいぞ。下なる者は一度あやまりしたれば、取てかへされぬぞ。こなさるる程にぞ」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三「元主人の娘のおめへを、あんまりこなした仕打だから」
④ いじめる。ひどい目にあわせる。苦しめる。〔観智院本名義抄(1241)〕
※虎明本狂言・右近左近(室町末‐近世初)「おのれはなぜにさんざんに身共をこなすぞ」
[三] 補助動詞として用いる。他の動詞に付いて、その動作を要領よく、巧みにする意を添える。うまく…する。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)一〇「馬をよくのりこなす者を云た」
※趣味の遺伝(1906)〈夏目漱石〉三「之を読みこなさなければ気が済まん」

じゅく‐・する【熟】

[1] 〘自サ変〙 じゅく・す 〘自サ変〙
① よく煮える。また、酒などが醸成する。
※玉塵抄(1563)三「は煮てしゅくしてただれたを云ぞ」
② (果実などが)よくみのる。うれる。じくす。
※今昔(1120頃か)二八「其の瓜只大きに大きに成て、皆微妙き瓜に熟しぬ」
③ 物事が十分の状態になる。十分に成熟する。
※大鏡(12C前)五「この会のにはにかしこう結縁し申て、道心いとど熟し侍める」
④ なれる。なれて巧みになる。熟練する。習熟する。熟達する。
※日蓮遺文‐観心本尊抄(1273)「聞一句一偈等下種或熟或脱」
史記抄(1477)一〇「日本は専ら呉音に熟するぞ」
⑤ よくととのう。調和してまとまる。
※歌舞妓年代記(1811‐15)一「夫大文字は一文字に、人を加えて是大也。二字にじゅくして見る時は、一人と書け」
[2] 〘他サ変〙 じゅく・す 〘他サ変〙
① 十分に考える。事こまかに考察する。熟考する。
古道大意(1813)上「言の清濁、上下りまでを熟したる上にて、御書取せ遊ばさうと」
② 十分に身につける。くわしく知る。熟知する。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一一「蓋し読書学問する所以(ゆゑん)は、知識を熟し、徳行を修め、仁善の心を益し」

こなし【熟】

〘名〙 (動詞「こなす(熟)」の連用形名詞化)
① こなすこと。細かに砕くこと。また、そのもの。
※俳諧・江戸新八百韻(1756)「夕月や一つ打蚊に又ひとつ〈米仲〉 麦のこなしにむせる旅人〈亀成〉」
② 表現をわかりやすいものにすること。かみくだいて説明すること。
※俳諧・旅寝論(1699)「我当時の流行をうかがひ侍るにも、言(ことば)の平懐(コナシ)なるをかつてきらひ給はず」
③ 体、また、身につけるものの取り扱い方。立ち居振舞いや手さばき。
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)相の山「ぢがみふさふさいしゃうのこなし、心りはつで道中よふて」
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「体の動作(コナシ)からして疲切ったやうにガッカリして居る」
④ 江戸時代の遊里語で、その場にふさわしいとりなし。上手な取り扱い方。さばき。座配。
※評判記・色道大鏡(1678)一「こなし 男女共に、よくとり入て、心のままにうけひく貌(かたち)をいふ。麦をこなすなどいふにかよふ詞(ことば)也」
歌舞伎で、俳優が台詞によらず、主として動作で心理を表現する演技
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「瀬平いろいろ思入有。用水手桶の水にて水鏡を見る。無念のこなし」
⑥ いじめること。つらい目にあわせること。〔日葡辞書(1603‐04)〕

こな・れる【熟】

〘自ラ下一〙 こな・る 〘自ラ下二〙
① 砕けて粉となる。細かく砕ける。
② 食物が消化する。〔俳諧・望一千句(1649)〕
※滑稽本・七偏人(1857‐63)五「午時飯のお菜に煮た芋をせしめ込だのが、夫が貶(コナ)れてきたと見えて」
③ すっかりまじってしまい、それとわからなくなる。まざって調和する。また、とけこんで不自然でなくなる。
※歌舞伎・夢結蝶鳥追(雪駄直)(1856)三幕返し「人の噂も七十五日、こなれた時分に内会(ねえげえ)で、勝った積りで遣って見ろ」
※変痴気論(1971)〈山本夏彦〉省略「『私はあなたを愛します』というのは不自然で、〈略〉これはまだ日本語としてこなれていない」
④ 世間にもまれ、性格や考え方のかどがとれる。世間になれて円満になる。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「そんな所がこなれいでは本御女郎買とはいはれぬ」
⑤ 技術、知識などをすっかり身につけて思い通りに活用できるようになる。熟練する。
※ある対位(1926)〈ささきふさ〉四「附箋から外(そ)れて封筒の中央に彼の名を書いてゐる手は、何処かこなれぬといった感じの稚拙さだったので」

う・む【熟】

〘自マ四〙
① くだものが成熟する。十分実がいる。うれる。熟する。
※二度本金葉(1124‐25)雑上・五七七・詞書「子をうみてけるがもとよりうみたる梅をおこせたりければよめる」
② 十分に熱や湯気などが通る。むれる。
正法眼蔵(1231‐53)示庫院文「御斎・御粥は、むませさせたまひたる、とまをすべし」
③ ものごとが十分にできあがる。熟する。
※浮世草子・当世芝居気質(1777)二「借銭乞にせがまれては、うんだ趣向もどこへやら」

じゅく‐・す【熟】

[1] 〘自他サ変〙 ⇒じゅくする(熟)
[2] 〘自サ五(四)〙 =じゅくする(熟)(一)
※仙人(1915)〈芥川龍之介〉上「夏は麦が熟す時分から」

こなれ【熟】

〘名〙 (動詞「こなれる(熟)」の連用形の名詞化) こなれること。なれまじること。消化。
※落語・京阪見物(1894)〈三代目春風亭柳枝〉「早く飯を食ふ様にさせ度(たい)と、柔けへ消化(コナレ)の良い物で養って遣るのだらう」

う・れる【熟】

〘自ラ下一〙 う・る 〘自ラ下二〙 果実が熟する。実がいる。また比喩的に、成熟する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※薪能(1964)〈立原正秋〉六「こんなに熟(ウ)れてしまったからだを十日間も独りにしておくのは」

じゅく【熟】

〘名〙 熟した柿をいう女房詞。熟柿(じゅくし)
※御湯殿上日記‐文明九年(1477)九月二一日「おか殿よりかき、しゆくまいる」

い・る【熟】

〘自ラ四(五)〙 果実などが熟す。
※古文真宝笑雲抄(1525)二「さて秕なし一もなく、実が能入ぞ」

こな・る【熟】

〘自ラ下二〙 ⇒こなれる(熟)

う・る【熟】

〘自ラ下二〙 ⇒うれる(熟)

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