断腸の思い(読み)ダンチョウノオモイ

デジタル大辞泉 「断腸の思い」の意味・読み・例文・類語

だんちょう‐の‐おもい〔ダンチヤウ‐おもひ〕【断腸の思い】

はらわたがちぎれるほど、悲しくつらい思い。「断腸の思いで諦める」
[類語]びんびん切切せつせつ痛切切実深刻ひしひしつくづくしみじみじいん心からせつ悲痛沈痛悲愴悲傷悲しい物悲しいうら悲しいせつないつらい痛ましい哀れ哀切もの憂い苦しい耐えがたいしんどい苦痛であるやりきれないたまらないる瀬ない胸を痛める胸が痛む胸が塞がる忍び難い忍びない見るに忍びない見るに堪えないけだるいアンニュイ胸が裂ける胸が張り裂ける胸がつかえる胸が潰れる胸がつまる気を揉む重苦しい滅入る気遣わしい塞ぐ塞ぎ込む消沈しょげるしょげ返る沈む憂鬱憂愁沈鬱メランコリー気鬱気塞ぎ鬱鬱陰鬱暗鬱鬱屈鬱結鬱気うっき鬱悶うつもん鬱積抑鬱憂さ鬱陶しい悶悶もんもん

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精選版 日本国語大辞典 「断腸の思い」の意味・読み・例文・類語

だんちょう【断腸】 の 思(おも)

はらわたがちぎれるほどの悲しくいたましい思い。
※俳諧・猿蓑(1691)序「猿に小蓑を着せて、誹諧の神を入たまひければ、たちまち断腸のおもひを叫びけむ」
※不如帰(1898‐99)〈徳富蘆花〉下「少しく仔細を知れる者は中将暗涙を帯びて棺側に立つを見て断腸(ダンチャウ)の思(オモヒ)をなせしが

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故事成語を知る辞典 「断腸の思い」の解説

断腸の思い

はらわたがちぎれるほどの悲しくいたましい思い。

[使用例] 少しく仔細を知れる者は中将の暗涙を帯びて棺側に立つを見て断腸のおもいをなせしが[徳冨蘆花*不如帰|1898~99]

[使用例] まことに断腸のおもいですが、とはいえ不幸を悲しんでばかりもいられません[李恢成死者の遺したもの|1970]

[由来] 「世説新語ちゅつめん」に見える話を背景にしたことば。四世紀の中国でのこと。長江下流を支配していたとうしん王朝の武将かんおんは、しょく(現在の四川省)へと兵を進めるため、長江をさかのぼっていました。その途中、「さんきょう」と呼ばれる渓谷地帯にさしかかったとき、ある兵士が、猿の子どもを捕まえました。母猿は悲しそうな声で鳴きながら、岸伝いにずっとついてきます。数十キロも進んだところで、母猿は船の中まで飛び込んできて、そのまま息絶えてしまいました。そのお腹を裂いてみると、「はらわた、皆すんずんえたり(腸がずたずたに断ち切れていた)」。桓温はそれを聞いて怒り、子猿を捕まえた兵士の職務を解いてしまったということです。

[解説] ❶動物であっても、子どもを奪われた母親はこれほど悲しむのですから、まして人間だったら……。それがわからないこの兵士がクビになったのも、当然のことでしょう。❷中国文学では、猿の鳴き声といえば、悲しい響きがするものと相場が決まっています。そのことを加味すると、さらに味わいが深くなるでしょう。❸実際には、「たいへんな悲しみ」を指す「断腸」ということばは、これ以前の中国の文献にも使用例が見られます。とすれば、この話は、逆に「断腸」ということばにぴったりだったから、有名になったのかもしれません。

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