無下に(読み)むげに

精選版 日本国語大辞典 「無下に」の意味・読み・例文・類語

むげ‐に【無下に】

〘副〙
① 全くその状態であるさまを表わす語。すっかり。まったく。完全に。
蜻蛉(974頃)上「こどもあまたありときくところも、むげにたえぬときく」
② その状態がはなはだしいさまを表わす語。ごく。ひどく。やたらに。
※枕(10C終)八七「むげになかよくなりて、よろづのことかたる」
今昔(1120頃か)一九「病无下に重く成ぬれば」
③ (下に打消を伴って) そのことを全面的に否定する語。すこしも。全然。いっこうに。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「はづかしさいはむかたなけれど、むげにきこえざらんもわかわかしければ」
徒然草(1331頃)一八八「法師の無下に能なきは、檀那すさまじく思ふべし」
④ 冷酷・無情な態度で事を行なうさまを表わす語。すげなく。冷たく。
日葡辞書(1603‐04)「Mugueni(ムゲニ) コロサレタ」

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デジタル大辞泉 「無下に」の意味・読み・例文・類語

むげ‐に【無下に】

[副]
冷淡なさま。すげなく。そっけなく。「相手懇願無下に拒む」
度外れなさま。むやみに。やたらに。
「たれの子とも知れぬものを、―めでいつくしんで居ったげでござる」〈芥川・奉教人の死〉
まったく。すっかり。
「聞こえさせてもかひなき物ごりにこそ―くづほれにけれ」〈賢木
(打消しの語を伴って)ちっとも。全然。
「顔―知るまじきわらはひとりばかりぞ、ておはしける」〈夕顔
[類語](1すげない意地悪突っ慳貪けんどんけんけんつんけんつんつんぷいとむしゃくしゃかんかんぷりぷりぷんぷんかちんかっかぷんとつんと邪慳じゃけんそっけないつれないよそよそしいにべないけんもほろろ冷たい気がない刺刺とげとげしい・取り付く島も無い・ぎすぎすぶっきらぼう意地悪いないがしろ白い目で見るかろんずる/(2みだりやたらむやみ無性にむやみやたらめったやたらめったやみくもあまり後先なし無謀無鉄砲めくら滅法盲目的後先見ず向こう見ず命知らず破れかぶれやけ自暴自棄ふてくされるやけくそやけっぱち自棄捨て鉢八方破れ無軌道放埒ほうらつ放縦放逸奔放野放図勝手次第好き勝手ほしいまま切実切切痛切つくづくつらつらひしひししみじみこころからしんから心が動くこよなくぞっこんじいん度外れめっぽう途方もない途轍とてつもない桁違い過度すごくひどいはなはだこの上ないとても特別ことさらひたすら

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