右近左近(読み)オコサコ

デジタル大辞泉 「右近左近」の意味・読み・例文・類語

おこさこ【右近左近】

狂言内沙汰うちざた」の、大蔵流での名称

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精選版 日本国語大辞典 「右近左近」の意味・読み・例文・類語

おこさこ【右近左近】

狂言。各流。女狂言の一つ。田の稲を左近の牛に食われた右近は、妻を地頭に見立てて訴訟練習をしているうちにとんだ泥仕合になってしまう。和泉鷺流では「内沙汰(うちさた)」という。なお、「おこ」は愚者の意の「おこ(痴)」から取ったものかとする説もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「右近左近」の意味・わかりやすい解説

右近左近
おこさこ

狂言の曲名。女狂言。大蔵流の曲名で、和泉(いずみ)流では『内沙汰(うちざた)』という。右近(シテ)は、左近の牛が田を食い荒らしたので訴訟にかけようと妻に相談するが、口下手な右近ではとても勝ち目はない。妻のアイデアで裁判の稽古(けいこ)をすることになったが、たちまちしどろもどろ、妻が扮(ふん)した地頭の叱声(しっせい)に気を失い、天を仰いで卒倒。やがて気がついた右近は、悔しまぎれに妻と左近の密通の事実を持ち出し嫌みをいうが、怒った妻に引き倒されてしまう。1人残された右近は起き上がり、妻に向かって悪態をつく(または空虚に笑って終曲)。「留(と)め」という狂言独特の劇終結法が、一こまの生活喜劇を人生の深奥をのぞかせる劇にまで高める効果を生む。和泉流では、訴訟での左近のいかにも世慣れた地頭とのやり取りを右近がまねてみせ、2人の性格の違いを際だたせる。

[油谷光雄]

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