立原正秋(読み)たちはらまさあき

精選版 日本国語大辞典 「立原正秋」の意味・読み・例文・類語

たちはら‐まさあき【立原正秋】

小説家朝鮮慶尚北道安東郡生まれ。日本古典に心酔し、「薪能」「剣ケ崎」を経て、昭和四〇年(一九六五)「白い罌粟(けし)」で直木賞受賞。甘美な虚無感をたたえた叙情作品人気作家となる。著「きぬた」「冬のかたみに」など。大正一五~昭和五五年(一九二六‐八〇

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デジタル大辞泉 「立原正秋」の意味・読み・例文・類語

たちはら‐まさあき【立原正秋】

[1926~1980]小説家。朝鮮の生まれ。に深く傾倒し、独特な美意識と叙情性にあふれた作風で人気を集め、多くベストセラーを生み出した。「白い罌粟けし」で直木賞受賞。他に「薪能たきぎのう」「帰路」「冬のかたみに」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「立原正秋」の意味・わかりやすい解説

立原正秋
たちはらまさあき
(1926―1980)

小説家。韓国大邱(たいきゅう)で生まれる。両親は日韓混血、父金井慶文は李朝(りちょう)貴族末裔(まつえい)である。1932年(昭和7)父は自決、35年母再婚のため親戚(しんせき)に預けられ、37年内地に帰り市立横須賀商業学校を経て、44年京城帝国大学予科に入学したが、病気のため帰国。45年早稲田(わせだ)大学専門部法科に入学したが、作家を志し49年(昭和24)中退した。この間米本光代と結婚、世阿弥(ぜあみ)に傾倒し古典に親しむ。56年処女作『セールスマン・津田順一』を発表後、『薪能(たきぎのう)』(1964)、『剣ヶ崎(つるぎがさき)』(1965)などが芥川(あくたがわ)賞候補となり、『白い罌粟(けし)』(1965)で直木賞を受賞。以後その中世美への愛着を軸とした甘美な虚無感と鮮烈な叙情をたたえた作風は多くの読者を得たが、昭和55年8月12日、食道癌(がん)のため死去

[佐藤泰正]

『『立原正秋全集』全24巻(1982~84・角川書店)』『武田勝彦編『立原正秋 人と文学』(1981・創林社)』『武田勝彦著『立原正秋伝』(1981・創林社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「立原正秋」の意味・わかりやすい解説

立原正秋
たちはらまさあき

[生]1926.1.6. 大邱
[没]1980.8.12. 鎌倉
小説家。本名は米本正秋であったが,死の直前に一家で立原に改姓。父母ともに日朝の混血で,父は李朝末期の貴族の末裔。6歳のときに父が死亡,1935年渡日し,37年母の再婚先の横須賀に移り,50年からは鎌倉に住む。 44年京城帝国大学予科に入学するが病気のため帰国。 45年早稲田大学専門学校法律学科に入学,作家を志して 49年に中退。 56年に処女作『セールスマン・津田順一』を発表。日韓2つの祖国をもつ人物を描いた『剣ヶ崎』 (1965) が芥川賞候補作となる。『白い罌粟 (けし) 』 (66) で直木賞を受賞。虚無や美を主題とし,鮮烈な叙情をたたえた作風で『冬の旅』 (69) ,『きぬた』 (73) ,日本の美をテーマとしたエッセイ『日本の庭』 (77) ,『立原正秋全集』 24巻 (82~84) などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「立原正秋」の解説

立原正秋 たちはら-まさあき

1926-1980 昭和時代後期の小説家。
1926年1月6日朝鮮慶尚北道生まれ。金敬文・権音伝の長男。昭和12年(1937)横須賀市の母の再婚先にうつる。小説家をこころざし,能をはじめ日本の古典に傾倒した。「薪能」「剣ケ崎」などが芥川賞候補となり,41年「白い罌粟(けし)」で直木賞受賞,流行作家となった。昭和55年8月12日死去。54歳。早大中退。作品はほかに「きぬた」「冬のかたみに」など。
【格言など】甘えは元来が自制力と節度の欠如がもたらすものである(「心に節度を」)

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百科事典マイペディア 「立原正秋」の意味・わかりやすい解説

立原正秋【たちはらまさあき】

小説家。韓国大邱生れ。両親とも日韓混血,父は李朝貴族の末裔。早大中退。《八月の午後と四つの短編》で近代文学賞受賞,文壇に出る。《薪能》《剣ヶ崎》《漆の花》などの後,1966年《白い罌粟(けし)》で直木賞を受賞。その後も世阿弥の無幻能を背景にした《きぬた》をはじめ,多くのベストセラー作品を出し,また同人誌《犀》を主宰した。

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