他界(読み)たかい

精選版 日本国語大辞典 「他界」の意味・読み・例文・類語

た‐かい【他界】

〘名〙
① 他の世。自己が属していない、ほかの世界。
※三教指帰(797頃)下「転一音之鸞輪。摧群心之蜋械。抜大千。投擲他界
太平記(14C後)一二「若此の龍王他界に移らば、池浅く水少なくして国荒れ世乏からん」 〔周書‐劉璠伝〕
② (━する) 仏語死者の世界。また、その世界に行くこと。ぬこと。死去
明月記‐治承四年(1180)一〇月八日「日来重病、今日他界云々」
③ 他の地方。他の境界

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百科事典マイペディア 「他界」の意味・わかりやすい解説

他界【たかい】

人間の現実世界とは別の,神霊や祖霊がいる世界。死後の世界を意味する場合は来世に同じ。また理想世界を意味する場合もある。天国浄土地獄などが代表的な他界で,日本では記紀にみえる〈常世国(とこよのくに)〉や〈黄泉国(よみのくに)〉の思想があるほか,山中他界の観念が長くみられた。→終末観
→関連項目来世観

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デジタル大辞泉 「他界」の意味・読み・例文・類語

た‐かい【他界】

[名](スル)
自分が属さない世界。よその世界。
死後の世界。あの世。来世。また、夢や忘我状態のときに魂がさまよう所。
死ぬことを婉曲にいう語。「祖父は昨年暮れに他界しました」
[類語]死ぬ死亡死去死没永逝長逝永眠往生逝去物故絶息絶命大往生お陀仏死する辞世成仏昇天崩御薨去卒去瞑目落命急逝夭折夭逝亡くなる没する果てる眠るめいするたおれる事切れる身罷みまか先立つ旅立つ急死する頓死とんしする横死する憤死する息を引き取る冷たくなるえなくなる世を去る帰らぬ人となる不帰の客となる死出の旅に出る亡き数に入る鬼籍に入る幽明さかいことにする黄泉こうせんの客となる命を落とす人死に物化まかくたばる絶え入る消え入るはかなくなる絶え果てる空しくなる仏になる朽ち果てる失命夭死臨終ぽっくりころり突然死即死

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世界大百科事典 第2版 「他界」の意味・わかりやすい解説

たかい【他界】

他界という観念あるいは表象は,人間が死を不可避の宿命と自覚することに発生基盤をもっている。身体的な死が人間存在にとって究極の,それ自体としては解決不能の悲劇ととらえられるとき,他界,すなわちこの世界とは別の世界がどこかにあり,そこで死者が第二の生を生きるという観念をもつことは,死という問題を想像力の領域ないし文化の領域で解決することに等しい。他界観は,したがって,死後の運命についての観念つまり終末論の一部である。

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世界大百科事典内の他界の言及

【神道】より


[信仰と参詣]
 神道の世界観は,高天原(たかまがはら),葦原中国(あしはらのなかつくに),黄泉国(よみのくに)(根の国(ねのくに))の三つの世界を考えるが,この天上,地上,地下の垂直的な世界観のほかに,海上のかなたに妣(はは)の国,常世国(とこよのくに)があるとする水平的な世界観が併存している。またそれらの世界とは別に,山中に他界を想定する信仰も広く存在していた。人間が死ぬと霊魂は肉体から離れて,他界に行くと考えられた。…

【来訪神】より

…第1は,来訪神が新年や小正月,豊年祭,節祭など1年の季節の変り目に1度来訪することである。第2は,こうした来訪神が海上はるかなる他界から来訪すると信じられていることが多いことである。南島ではこうした海上他界をニライカナイとよび,そこから来る来訪神をニロー神,ニイルピトとよんでいる。…

※「他界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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