精選版 日本国語大辞典 「素」の意味・読み・例文・類語
す【素】
[1] 〘名〙
① 他の要素がつけ加わらない、ありのままのさまをいう。そのままであること。他の語と複合して、「素肌」「素手」「素足」「素顔」「素焼」などと用いることもある。
※志不可起(1727)「何によらずかざりつくろひのなきを、すのままなど云、素の字也」
※歌舞伎・三千世界商往来(1772)口幕「素(ス)で貸しては、踏まれる事が、みすみす見えてあるわいの」
② 邦楽用語。本式の演出に対する略式の演出。芝居用の音楽を芝居から離して純演奏会風に演奏したり、鳴物入りの長唄を三味線だけの伴奏で演奏したり、伴奏入りの声曲を無伴奏でうたったりすること。→素語り・素謡(すうたい)・素唄。
③ 日本舞踊で、特別な扮装(ふんそう)をせず、黒の紋付に袴(はかま)、または着流しで踊ること。素踊り。
[2] 〘接頭〙 名詞などの上に付けて用いる。
① 多く人を表わす語に付いて、平凡である、みすぼらしいなど軽べつの意を添える。「素町人」「素浪人」など。
※浄瑠璃・新うすゆき物語(1741)下「す奴め邪魔ひろぐか。そこ退て勝負させい」
② ただ、それだけである、他の要素が加わらない意を添える。「素一分」「素一本」など。
③ 状態や様子を示す語の上に付けて、そのさまを強調する意を添える。「素寒貧」「素早い」「素頓狂」など。
そ【素】
〘名〙
① 彩色を施してない生地。しろぎぬ。生絹。
※雑俳・軽口頓作(1709)「時による・素を引事も浦の網」 〔古詩‐為焦仲卿妻作詩〕
② 白色。白。
※菅家文草(900頃)一・翫秋花「素片還慙芳意素、紅房温対酔顔紅」 〔詩経‐召南〕
③ かざりけのないこと。いつわりのないこと。また、素直なこと。
④ もって生まれたもの。本質的なもの。どだい。したじ。たち。
※玉葉‐寿永二年(1183)六月九日「客星変異之時上奏、先年若其事黙止者、此時可レ被レ遂歟、於二旨趣一者、偏在二叡慮一、但政道之反レ素、是其肝心也」
すっ【素】
〘接頭〙 名詞・動詞・形容動詞の上に付いて、下にくる語の意味を強調する。東京語はじめ関東で多く用いられる俗な言い方。「すっとんきょう」「すっ影」「すっとぶ」など。
そ‐・す【素】
〘自サ変〙 ある状況に臨む。際する。
※貧乏物語(1916)〈河上肇〉一一「貧賤に素しては貧賤に処し〈略〉一切の境に入るとして自得せざるなきは君子のことである」
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