貧困(読み)ひんこん(英語表記)poverty

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貧困」の意味・わかりやすい解説

貧困
ひんこん
poverty

生活必需品が欠乏したために肉体的,精神的な生活力が減耗した状態。かつて貧困は天変地異悪政,個人の怠惰などの結果,社会の必然的現象として現れるなどと考えられた。しかし,現在では社会の経済的機構ゆえに生じる社会的問題であり,貧困者を救済し国民の最低生活を保障することは社会の義務であると考えられている。この考え方は日本国憲法にもうたわれ,さまざまな社会保障制度が発達してきている。

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精選版 日本国語大辞典 「貧困」の意味・読み・例文・類語

ひん‐こん【貧困】

〘名〙 (形動)
① 貧乏で生活に困っていること。また、そのさま。困窮。貧窮。
※三代実録‐元慶六年(882)五月二九日「是月霖雨、賑給京師貧困病患之輩
※史記抄(1477)一四「御内はつよく貧困なれば」 〔史記‐管仲伝〕
② 欠けて不足していること。乏しいこと。また、そのさま。
※善財(1949)〈石川淳〉二「おのれの語学力の貧困をかくさうとする苦衷にほかならず」

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デジタル大辞泉 「貧困」の意味・読み・例文・類語

ひん‐こん【貧困】

[名・形動]
貧しくて生活に困っていること。また、そのさま。「貧困の中に育つ」「貧困な家庭」
大切なものが欠けていること。内容に乏しいこと。また、そのさま。「政策の貧困」「貧困な精神」
[類語]貧苦困苦困窮貧窮窮乏貧乏困乏生活苦ひん赤貧極貧清貧じり貧貧寒じり安どか貧素寒貧すかんぴん不如意ふにょい文無もんな落ち目減退後退下火退潮尻すぼまり廃頽下り坂左前不振先細り下がり目低落廃る廃れる傾く寂れる

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世界大百科事典 第2版 「貧困」の意味・わかりやすい解説

ひんこん【貧困 poverty】

貧困は時代や社会によりそのあらわれ方は大きく異なるが,現代資本主義社会における社会問題としての貧困は資本主義そのものの所産である。また貧困の原因は,怠惰,無知などの個人的責任や天変地異その他にあるとされていたが,資本主義の進展とともに,むしろ社会そのものにあると考えられるようになった。労働力以外に生産手段をもたない労働者階級が成熟するなかで,極貧の過剰人口が累積し,膨大な沈殿層を形成していく。こうした貧困者は生活が非常に低位にあり,必然的に肉体的・精神的荒廃をもたらし,社会的に見放され,制度的に遠ざけられ,陰蔽される。

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普及版 字通 「貧困」の読み・字形・画数・意味

【貧困】ひんこん

貧窮。

字通「貧」の項目を見る

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世界大百科事典内の貧困の言及

【経済学】より

…金融論,銀行論,農業経済学,工業経済学等々,また最近ではサービス経済学という分野も出てきている。
【社会科学としての経済学】
 経済学は,人間の営む経済行為を直接の対象とし,現実の経済現象の根底にひそむ本質的な側面を引き出し,経済社会の基本的な運動法則を解明することを試みるとともに,貧困の解消,経済的発展の可能性等を探ろうとする。経済現象は,一つの社会ないしは複数の社会において,数多くの人間が,相互に深いかかわりをもちつつ,それぞれの置かれた歴史的,文化的,技術的,制度的な諸制約条件のもとで,どのような経済的行動を選択するかということによって,その特徴が定まってくる。…

※「貧困」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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