(読み)まずしい

精選版 日本国語大辞典 「貧」の意味・読み・例文・類語

まずし・い まづしい【貧】

〘形口〙 まづし 〘形シク
財産金銭に乏しい貧乏である。ともしい。
万葉(8C後)五・八九二「我よりも 貧(まづしき)人の 父母は 飢ゑ寒(こ)ゆらむ」
② 豊かでない。みたされていない。乏しい。少ない。貧弱である。
海道記(1223頃)豊河より橋本「北は韓康独往くの栖、花の色、夏の望に貧く」
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生富士を観る「およそ先生程所謂『心の貧しき』人を自分は知らない」
まずし‐げ
〘形動〙
まずし‐さ
〘名〙

まどし・い【貧】

〘形口〙 まどし 〘形シク〙
① 貧乏である。まずしい。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「姉の煎迫交(マトシキ)こと、済弁せぬことを知る」
② 十分に行なえない。おろそかになる。不十分である。
徒然草(1331頃)三八「財多ければ身を守るにまどし」
[補注]「まづし」の交替形。両形の使い分けは明らかでないが、「まづし」に比べ、全般漢文訓読文、あるいは少し改まった言い方に見られるようである。

ひん【貧】

〘名〙 (形動)
① まずしいこと。財産などが乏しく生活が苦しいこと。貧困であること。また、その人やさま。貧民。貧乏。
※海道記(1223頃)極楽西方に非ず「貧なりとも嗟くべからず」
※天草本伊曾保(1593)鼠の事「finuo(ヒンヲ) タノシム モノワ ホカニワ タノシミワ スクナイト イエドモ」 〔書経‐洪範
② 欠乏していること。減退したり不足したりしていること。また、そのさま。
浮世草子日本永代蔵(1688)三「無分別に水をへらしぬ。此貧(ヒン)、取かへす事なく」

まじ まぢ【貧】

〘名〙 まずしいこと。貧乏。貧困。
※御巫本日本紀私記(1428)神代下「貧窮〈末知(マチ)〉」

ひん‐・する【貧】

〘自サ変〙 ひん・す 〘自サ変〙 貧乏する。貧乏になる。〔書言字考節用集(1717)〕

ひん‐・す【貧】

〘自サ変〙 ⇒ひんする(貧)

まずまづし【貧】

〘形シク〙 ⇒まずしい(貧)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「貧」の意味・読み・例文・類語

ひん【貧】

[名・形動]まずしいこと。また、そのさま。貧乏。「に耐える」
「その内容に於ては反って之よりも―なる者である」〈西田・善の研究〉
[類語]貧乏貧困貧窮貧苦窮乏困窮困乏困苦生活苦赤貧極貧清貧じり貧貧寒じり安どか貧素寒貧すかんぴん不如意ふにょい文無もんな落ち目減退後退下火退潮尻すぼまり廃頽下り坂左前不振先細り下がり目低落廃る廃れる傾く寂れる

ひん【貧】[漢字項目]

[音]ヒン(漢) ビン(呉) [訓]まずしい
学習漢字]5年
〈ヒン〉
財産が少ない。まずしい。「貧窮貧苦貧困貧者貧富極貧清貧赤貧
足りない。乏しい。「貧血貧弱貧打
ビン〉まずしい。「貧乏

びん【貧】[漢字項目]

ひん

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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