左前(読み)ひだりまえ

精選版 日本国語大辞典 「左前」の意味・読み・例文・類語

ひだり‐まえ ‥まへ【左前】

〘名〙
着物の右の衽(おくみ)を左の衽の上に重ねて着ること。死者経帷子(きょうかたびら)を着せる際の習慣。また、洋服の輸入後は、女子の洋服類は左前となった。左衽(さじん)。ひだりえり。
※応永本論語抄(1420)憲問第一四「左衽とは衽は衣のえり也。衣裳を左前にきるを云」
物事が順調にいかないこと。思いどおりにいかないこと。運や金まわり、商売などがうまくいかなくなること。左まわり。左向き
仮名草子・身の鏡(1659)上「万事物がひだりまへになりて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「左前」の意味・読み・例文・類語

ひだり‐まえ〔‐まへ〕【左前】

相手から見て、左のおくみを上に出して和服を着ること。普通の着方と反対で、死者の装束に用いる。ただし、女性の洋服類は左前に仕立てる。
運が傾くこと。経済的に苦しくなること。左向き。「家業が左前になる」
[類語]減退後退下火退潮尻すぼまり廃頽落ち目下り坂不振じり貧どか貧先細り下がり目低落廃る廃れる傾く寂れる衰える尻下がり尻切れとんぼ竜頭蛇尾孤城落日じり安貧乏貧困貧窮貧苦窮乏困窮困乏困苦生活苦ひん赤貧極貧清貧貧寒素寒貧すかんぴん不如意ふにょい文無もんな末期的衰残弱体化衰弱衰微衰退頓挫衰え地に落ちる没落落ちぶれるうらぶれる成り下がる零落凋落ちょうらく転落落魄らくはく淪落堕落末路斜陽成れの果て見る影もない朽ちる消沈衰亡たそがれ失速焼きが回る耄碌もうろくぽんこつ火の車終末大詰め尾羽うち枯らす世も末尻すぼみ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の左前の言及

【襟∥衿】より

…垂領の襟はV字状に交差させ打ち合わせるが,自分からみて左の衽(おくみ)を右の上に重ねる着方を右衽(うじん)(右前ともいう。右手側に衽がくる),その逆を左衽(さじん)(左前)という。古来,中国漢民族の衣服は右衽,周辺の遊牧民族の衣服は左衽であった。…

※「左前」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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