所得
しょとく
income
経済活動に参加し生産のために提供した労働・土地・資本などの生産要素の代価として受け取る報酬をいう。所得には個人所得、企業所得、政府所得がある。個人所得には賃金・給与などの雇用者所得と、地代・利子・配当などの財産所得がある。企業所得、政府所得も個人所得に準じて把握される。これらの所得を国民経済全体について集計すると国民所得が得られ、生産要素ごとに集計すると分配国民所得が得られる。国民経済計算では、雇用者所得、財産所得、企業所得に区別し、これらの合計から負債利子を控除して分配国民所得を得ている。これを人口で割ったものが1人当り国民所得である。また、個人所得から所得税・社会保険料などの税負担を控除したものが個人可処分所得である。個人可処分所得は貯蓄や消費量を最終的に規定するところから、最近では1人当り国民所得とともに、その動向が注目されている。
[鈴木博夫]
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しょ‐とく【所得】
〘名〙
① (━する) 自分の身に得ること。会得(えとく)すること。また、得たもの。
※今昔(1120頃か)一四「何(いかに)況(いはむ)や、人として説の如く修行せむ所得の功徳(くどく)をや」
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉停留所「彼は其落付を
品性と教育からのみ来た所得
(ショトク)とは見做し得
なかった」 〔大智度論‐一〕 〔春秋左伝‐襄公一九年〕
② 自分のものとなった品物・金銭や
利益・
収入。もうけ。
※源平盛衰記(14C前)三四「院の御厩(むまや)の別当に成りて、思ふさまに馬取り乗らんも所得(ショトク)也とて、押して別当に成りてけり」
③ 個人または法人が一定期間の
勤労・事業・資産などから得る収入。税法では、そこから
必要経費や所定の額を差し引いた残高をいい、所得税、法人税が課せられる。〔英和外交商業字彙(1900)〕
しょう‐とく【所得】
〘名〙 得をすること。もうけること。収入。利益。
しょとく。
※
古本説話集(1130頃か)五八「この布をひとむら取らせたれば、男おもはずなるせうとくしたりと思ひて」
[
補注]「所」字には「せう」の音がないところから、「抄徳
(せうとく)」(「うまいことをする」の意)と解する説もある。しかし、その意味・
用法は当時の「所得
(しょとく)」に類似しており、「女
(にょ)」を「にょう」と発音し、
院政時代には「
女房(にょうぼう)」を「ねうばう」とも表記したように、「所
(しょ)」を「しょう」と発音し、「所得
(しょうとく)」を「せうとく」と表記したものと考えられる。ただし、「
色葉字類抄」をはじめ、当時の古辞書で「所得」は「ショトク」であり、「ショウトク」あるいは「セウトク」とする例は見えない。
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しょとく【所得 income】
[定義]
一般には,一定期間の勤労,事業,資産などから得る収入全体をさし,賃金,俸給,地代,家賃,利子,利潤などがそのおもな構成要素となるものを意味する。所得は,さまざまな財やサービスの獲得能力,すなわち富力を代表する重要な指標と考えられている。それがただちに購買力として行使されるか,あるいは潜在的な購買力としてストックされるかは,家計の消費行動に大きく規定される。しかしいずれにせよ,産業社会においては,フローとしての貨幣所得が国全体,あるいは一家計の富力を表す指標として最も適切なものであることには変りはない。
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デジタル大辞泉
「所得」の意味・読み・例文・類語
しょう‐とく【▽所得】
得をすること。もうけること。
「これにかへてんやと言ひければ、玉のぬしの男、―したりと思ひけるに」〈宇治拾遺・一四〉
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普及版 字通
「所得」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の所得の言及
【利益】より
…一般的には,利益とは資本の運用益をいい,元本に対する果実に相当し,期間的に把握される。ある期間の利益は,期首と同じ資本を維持したうえで,期間中に消費しうる最大の額と定義される。企業会計が対象とする企業の利益は,出資者の資本を維持したうえで,出資者に分配しうる額を意味し,その期間中に出資者の新たな追加出資および出資の払戻しがないかぎり,期末の資本から期首の資本を控除することによって計算される。会計計算上は,資本は資産マイナス負債で純財産とも呼ばれるので,利益は期末純財産から期首純財産を差し引くことによって計算される。…
【所得税】より
…所得税は,正確にいえば個人所得税と法人所得税の両方を指す。日本では前者を所得税,後者を法人税と呼んでいる。…
※「所得」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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