片端(読み)カタハシ

デジタル大辞泉 「片端」の意味・読み・例文・類語

かた‐はし【片端】

一方の端。「綱の片端を持つ」
ほんの一部分一端。「学問の片端をかじる」
[類語](1一端はなはしっこすえさき先っぽ突先とっさき突端とっぱな先端せんたん突端とったん末端まったんヘッドあたま欠けら/(2一方片方片一方片割れ他方一面半面他面側面片側片面一端一半一環片鱗一面的一方的サイド

かた‐わ〔‐は〕【片端/片輪】

[名・形動]《「片」は不完全の意》
からだの一部に障害があること。
考え方などにつりあいがとれていないこと。また、そのさま。
不完全なこと。未熟なさま。また、欠点。
「此の大臣は色めき給へるなむ少し―に見え給ひける」〈今昔・二二・八〉
見苦しいこと。また、そのさま。不格好。
「御前には、さらぬ折だに―なるまでの御物おぢなれば」〈狭衣・三〉
きまりが悪いこと。また、そのさま。
「いと―なるほどになりぬ、など急げば」〈かげろふ・上〉
[補説]「片輪」は当て字

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精選版 日本国語大辞典 「片端」の意味・読み・例文・類語

かた‐わ ‥は【片端・片輪

〘名〙 (形動) (「片輪」は、発音によるあて字)
① 不完全であること。欠点があるさま。また、不十分な点。欠点。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「京にみ給ふるに、ひとの御らんぜんもことなるかたはなき女などは、おほかるものにこそあめれ」
※能因本枕(10C終)七七「露のくせ、かたはなくて、かたち心ありさまもすぐれて、世にあるほど、いささかのきずなき人」
② 肉体的、または精神的、知能的に、一部、障害をもっていること。また、その人。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「いぶかしさに、さいつころ、おとどのうちにものし給しころ、みにものしたりしかど、さらに見せ給はず。なにしにかは。かたはやつきたる」
太平記(14C後)二五「生れ給ひし後、三年迄御足立たずして、片輪(カタワ)に坐(おは)せしかば」
③ 見苦しい様子。不都合でよくないこと。けしからぬこと。
※伊勢物語(10C前)六五「をとこ、女方ゆるされたりければ、女のある所に来て向ひ居りければ、女、『いとかたはなり。身もほろびなん。かくなせそ』といひければ」
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「やんごとなき人おほく候給ふとて、この人たちのはかなくてまじらひ給はん、かたはにはこそあなれ」
④ 不体裁できまりが悪いこと。みっともないさま。
※蜻蛉(974頃)上「『いとかたわなるほどになりぬ』などいそげば、『なにか、いまは粥などまゐりて』とあるほどに、昼になりぬ」
※宇津保(970‐999頃)内侍督「あな苦し。ことやうなる参りかな。さる心も思はぬものを。かたはなるめををも見るかな」
⑤ (多く「かたはなるまで」の形で用いる) 常軌を逸したさま。異常。度はずれていて不体裁であるさま。
※枕(10C終)三一五「なほつねにものなげかしく、世の中心にあはぬ心地して、すきずきしき心ぞ、かたはなるまであべき
⑥ 考え方などがかたよっていること。つりあいがとれていないさま。
※読本・雨月物語(1776)貧福論「此士いと偏固(かたわ)なる事あり。富貴をねがふ心常の武扁(ぶへん)にひとしからず」
[補注]カタは不完全、不十分の意。類例に「かたおび」「かたこと」「かたとき」「かたなり」などがある。ハは「はし(端)」の意で、間人(はしひと)皇女書紀‐舒明天皇二年正月〕の「間」の例、また「万葉‐三四〇八」の「新田山ねにはつかななわによそり波之(ハシ)なる子らしあやにかなしも」に見られる例などから、「はし」にも中ほど、中途半端の意があり、「かた」「は」でどっちつかず、十分でない状態を意味する。

かた‐はし【片端】

[1] 〘名〙
① 物の一方の端。一端。かたっぱし。
古事記(712)中「其の咋ひ遺したまひし蒜(ひる)の片端を以ちて、待ち打ちたまへば」
※宇津保(970‐999頃)祭の使「かたはしは水にのぞき、かたはしは島にかけていかめしき釣殿つくられて」
② 物事のほんの一部分。
落窪(10C後)一「おほいぎみよりはじめて、くはしく問ひ聞き給ひしかば、かたはしづつ聞え侍りしに」
愚管抄(1220)三「かく其御記をみぬ人までもれきく事のかたはしをかきつけたるを」
[2] 〘副〙 (助詞「に」を伴うこともある) =かたはし(片端)より
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「トウフクジ バカリ ワヅカニ ノコレドモ ソレサエ ショダウ catafaxini(カタハシニ) クヅレ ユク〔物語〕」
咄本・鹿の子餠(1772)押込「出るもしばり出るもしばり、片(カタ)はし猿ぐつわをはめ、柱へくくしつけるに」

かたっ‐ぱし【片端】

(「かたはし(片端)」の変化した語)
[1] 〘名〙
① 物の一方の端。また、物事のほんの一部分。
浄瑠璃持統天皇歌軍法(1713)一「一寸でも脚(すね)をのべ紙と、腰にさいたる七九寸、かたっぱしに半切紙
② とるに足りない存在であるが、一応の仲間であること。はしくれ。
※闇の夜(1900)〈永井荷風〉上「乃公(おいら)ア此でもね、江戸っ子の片端(カタッパシ)なんだ」
※浄瑠璃・一谷嫩軍記(1751)三「邪魔ひろぐとかたっぱし、そっ首ころり打落す」

かた‐はな【片端】

〘名〙
① 片方のはし。かつぐ荷物や棒などの一方のはし。
② 一方の端をになうこと。
※浄瑠璃・吉野都女楠(1710頃か)五「是そこな衆、先肩(がた)でも後肩(がた)でも、いづれもよって片はななされ」
③ 争いごとなどの一方の中心人物。〔日葡辞書(1603‐04)〕

かたわ‐かたは‥【片端】

〘形シク〙 (「かたわ(片端)」を形容詞化した語) かたわである。かたわらしい。
※米沢本沙石集(1283)九「生きておはせん時も、目のかたはしくおはせしが」

かた‐つま【片端】

〘名〙 一方のはし。かたはし。
※今鏡(1170)三「檜扇のかたつま引き折りて」

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日本歴史地名大系 「片端」の解説

片端
かたは

[現在地名]中区丸の内まるのうち一―三丁目

「尾張志」に「片端 御くるわ外はじめての横筋也、北は御廓の外堀にて南片側武士屋敷なる故片端と呼へり、堀川より建中寺の西まで、其内東の方に作子町飯田町等の町あり」とある。「金鱗九十九之塵」は「片端筋」として「街東西、在京町通、此所東西とも皆武士屋敷なり。東に大坂あり、坂より東ハ作リ子町にいたる」と記す。片端(筋)は名古屋城南外堀の南、西はほり川より、東は外堀の東限武平ぶへい町筋(現東区)に至る東西筋である。この片端(筋)南片端みなみかたはとも称された。

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