一端(読み)いったん

精選版 日本国語大辞典 「一端」の意味・読み・例文・類語

いっ‐たん【一端】

〘名〙
① 物の一方の端。かたはし。⇔両端
儀式(872)一〇「中務輔相執敕符一端
② 事柄の一部分。⇔万端①。
※本朝文粋(1060頃)一一・紫藤花落鳥関関詩序〈源順〉「纔記一端。以招衆咲
※西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉外「自から政治の一端を学び得て」 〔礼記‐祭義〕
※延喜式(927)一「春日神四座祭 祭神料 〈略〉曝(さらし)布一端八尺」
神前柏手(かしわで)を打つ回数が一回であること。
※内宮臨時仮殿遷宮記(1496)「後一同拝。手一端」
[語誌]全体と切り離して一部を取り出すことによって、対象として当面するものに焦点をしぼる「一端」と、朝の時間を指すことによって、一時的なものを表わす「一旦」とは、原義を異にする。ところが、同一の事態に対して、当事者からは「一端」のこととして、他者からは「一旦」のこととして把握された場合、両用の表記が可能となり、中世頃から「一端」と「一旦」が原義を越えて混同した用法を生じるようになる。

いっ‐ぱし【一端】

〘副〙
① 事態が臨時、または一度きりであるさま。一旦(いったん)。ひとまず。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② (まだ未熟なものが、さも一人前のように思い込んで行動するありさまをあざけりぎみにいう) まるで一人前のようにふるまうさま。人なみに。えらそうに。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「猿田彦いっぱし神の気であるき」
③ (②のようなあざけりの気持を含めないでいう) ひとかど。一人前。相当。かなり。
咄本・正直咄大鑑(1687)白「いっはしゐわんと思ふきなれば」
われから(1896)〈樋口一葉〉五「何(ど)うぞ世間の人に負けぬやうに、一ッぱしの豪(ゑら)い方に成って下され」
[補注]語源については「一旦」を「一端」と書き、それを重箱読みしたものかともいわれるが、未詳

ひと‐はし【一端】

〘名〙
① 一方のはし。片端。
② 事柄の一部分。
神皇正統記(1339‐43)中「神代より継体正統のたがはせ給はぬ一はしと申さんがためなり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「一端」の意味・読み・例文・類語

いっ‐たん【一端】

一方のはし。片はし。「ひもの一端
一部分。「感想の一端を述べる」
[類語](1片端はなはしっこすえさき先っぽ突先とっさき突端とっぱな先端せんたん突端とったん末端まったんヘッドあたま/(2一環部分箇所かしょところ部位一部一部分局部局所細部断片一斑いっぱん一節いっせつくだりパートセクション一方片方片一方片割れ他方一面半面他面側面片側片面片端一半片鱗一面的一方的サイド

いっ‐ぱし【一端】

[名]一人前。人並み。「口だけは一端のことを言う」「やっと一端板前になった」
[副]
一人前に。人並みに。未熟なのに一人前のように振る舞うさまにもいう。「あれで一端専門家のつもりでいる」
いったん。ひとまず。
「―町の宿老へ断りたれば」〈浮・懐硯・二〉

ひと‐はし【一端】

一方の端。片端。いったん。
事柄の一部分。
言葉の― ―にその時代おくれなことを自白していた」〈佐藤春夫・都会の憂鬱〉

いち‐はな【一端】

いちばん先。真っ先。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android