(読み)アタマ

デジタル大辞泉 「頭」の意味・読み・例文・類語

あたま【頭】

動物の体の上端または前端の部分で、脳や目・耳・鼻などの重要な感覚器官のある部分。
㋐首から上の部分。かしら。こうべ。「を深く下げる」
㋑人間では、頭髪の生えた部分。動物では頭頂のあたり。「をかく」「犬のをなでてやる」
脳の働き。思考力。考え。「の回転が速い」「に入れておく」「を切り替える」
髪。頭髪。髪の形。「が白くなる」「を刈る」
物の先端、上端。てっぺん。「くぎ
物事のはじめ。最初。はな。「来月のから始める」
うわまえ。「をはねる」
主だった人。人の上に立つ者。首領。長。かしら。「に据える」
人数。頭かず。「がそろう」
(「ひとり」の下に付き、接尾語的に用いて)人を単位とすることを表す。…あたり。「ひとり千円を集める」
10 新聞の一面トップ記事。題号の左や下を占める。→
11 相場の最高点。天井。「つかえ」
12頭金あたまきん」の略。
13 マージャンで、雀頭ジャントウの俗称。
[下接語]毬栗いがぐり石頭大頭金槌かなづち金柑きんか慈姑くわい芥子けし頭・外法げほう孔子頭才槌さいづち散切ざんぎり頭白髪頭り粉木頭・茶瓶ちゃびん禿はげ・ビリケン頭・坊主頭・本多頭・薬缶やかん野郎頭
[類語](1かしら頭部こうべつむりかぶりおつむヘッド雁首/(4先端突端末端先っぽヘッドはじめはなはしっこ突先とっさき突端とっぱな一端いったん/(5初期当初初頭始期はじめ早期初葉まず最初第一一次原初嚆矢こうし手始め事始め優先一番しょぱないの一番真っ先先立ち先頭劈頭へきとう冒頭出出でだ滑り出し初手出端ではなはなはし口開け取っ付きのっけスタート取り敢えず差し当たりひとまず当座序の口皮切り第一歩第一声始まり始まる始めるトップ初発発端端緒濫觴らんしょう権輿けんよ起こりとば口取っ掛かり開始幕開き開幕立ち上がり口切り最優先何をおいても何はさておき何はともあれ口火を切る先ず以て/(8人数員数人員頭数定員人口

とう【頭】[漢字項目]

[音]トウ(漢) (ヅ)(呉) (慣) ジュウ(ヂュウ)(唐) [訓]あたま かしら こうべ かみ
学習漢字]2年
〈トウ〉
あたま。「頭骨頭部出頭台頭低頭点頭禿頭とくとう白頭没頭羊頭
物の先端。上端。「頭注咽頭いんとう巻頭舌頭先頭弾頭
物事の初め。「初頭年頭劈頭へきとう冒頭話頭
上に立つ人。トップ。「頭首会頭巨頭地頭船頭せんどう番頭
その付近。ほとり。「駅頭街頭枕頭ちんとう店頭路頭
〈ズ〉あたま。「頭巾ずきん頭上頭痛頭脳
〈ト〉あたま。「頭巾ときん音頭おんど
〈あたま〉「頭数頭金あたまきん石頭
〈かしら(がしら)〉「頭文字尾頭波頭旗頭膝頭ひざがしら目頭出世頭
[名のり]あき・あきら
[難読]挿頭かざし塔頭たっちゅう主税頭ちからのかみ頭垢ふけ饅頭まんじゅう

かしら【頭】

[名]
人間や動物の首から上の部分。あたま。こうべ。「尾つき」「、右」「に霜を置く」
髪の毛。頭髪。「る」
物のいちばん上、または先の部分。先端。「八歳をに三人の子持ち」
一団の人々を統率する人。統領。特に、鳶職とびしょく大工左官など職人の親方。
(「首」とも書く)人形の首から上の部分。特に、人形浄瑠璃の人形の頭部。「を遣う」
で扮装に用いる仮髪。前は顔までかかり、横は両肩に垂れ、後ろは背丈に及ぶ長いもの。黒頭・赤頭・白頭があり、役によって使い分ける。「獅子しし
もつ焼きで、豚の頭部の肉。
[接尾]助数詞。
動物を数えるのに用いる。
「鹿の一―にても殺す者あらば」〈宇治拾遺・七〉
仏像を数えるのに用いる。
「(仏師ニ)幾―造り奉りたるぞと問へば」〈宇治拾遺・九〉
烏帽子えぼしなど頭にかぶるものを数えるのに用いる。
「折らぬ烏帽子十―、直垂、大口などをぞ入れたりける」〈義経記・七〉
人の上に立つ者、特に大名などを数えるのに用いる。
「あれへ大名一―、瓜核うりざね顔の旦那殿、東寺から出た人さうな」〈浄・丹波与作
[類語]あたま頭部こうべつむりかぶりおつむヘッド雁首ちょうおさトップ大将主将首領親方親分親玉棟梁頭目ボスドン闇将軍

とう【頭】

[名]
あたま。
「黒き―かな、いかなる人の漆塗りけん」〈平家・一〉
集団の長。かしら。おさ。
「右の―には造物所つくもどころの別当」〈栄花・月の宴〉
蔵人頭くろうどのとう」の略。
「―の君心掛けたるを」〈・末摘花〉
祭礼・集会などの世話役。
それがしが祇園のの―にあたってござる程に」〈虎明狂・煎じ物〉
[接尾]牛・馬・犬などの動物を数えるのに用いる。「牛七

つむり【頭】

あたま。かしら。おつむ。つぶり。「をなでる」
頭髪。
[類語](1あたまかしらこうべかぶりおつむヘッド雁首

かぶり【頭】

あたま。かしら。
[類語]あたまかしらこうべつむり頭部おつむヘッド雁首

がしら【頭】

[語素]
動詞の連用形に付いて、そうした時、そのとたん、などの意を表す。「出会い
名詞に付く。
㋐その中の第一位の者の意を表す。「出世」「もうけ
㋑その入り口、先端などの意を表す。「目」「波
日時を表す名詞に付いて、その初めの意を表す。
「月―には東にあり、月の末には西にあると申す」〈謡・藤戸

かぶ【頭】

《「かぶ」と同語源》あたま。かしら。
「ははあ、―をはないたは」〈虎寛狂・惣八

つむ【頭】

つむり(頭)」の略。→御頭おつむ

じゅう【頭】[漢字項目]

とう

つぶり【頭】

あたま。かしら。つむり。

ず〔ヅ〕【頭】

あたま。かしら。

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精選版 日本国語大辞典 「頭」の意味・読み・例文・類語

かしら【頭】

[1] 〘名〙
① 人や動物の首から上の部分。また、それに類似するもの。
(イ) 人や動物の頭部。特に、顔と区別される部分をいうこともある。あたま。こうべ。
※万葉(8C後)二〇・四三四六「父母が可之良(カシラ)かき撫で幸(さ)くあれていひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」
(ロ) 人形浄瑠璃で用いる操(あやつり)人形の頭部。
※滑稽本・狂言田舎操(1811)上「頭(カシラ)を一つ持ちゃア来ねへ 頭とは人形の頭(カシラ)なり」
② 毛髪を主体とした頭部。
(イ) 頭部に生えている状態の髪の毛。頭髪。
※古今(905‐914)雑体・一〇〇三「かしらはしろく なりぬとも〈壬生忠岑〉」
(ロ) 能楽の道具で、毛の長く垂れたかぶりもの。毛の色によって、赤頭、白頭、黒頭等の名がある。
※申楽談儀(1430)面の額長き事「かしらをかけたれば見えず。乱れたる髪の中よりみゆるにつけて」
③ 物の最も上の部分。また、最も先の部分。うえ。さき。
※枕(10C終)六七「秋の野のおしなべたるをかしさは薄(すすき)こそあれ。〈略〉冬の末までかしらいと白く」
御伽草子・御曹子島渡(室町末)「御座舟と号して、尋常に飾り、かしらには、鞍馬の大悲多聞天
④ 大勢の人の中で、最もおもだった者。
(イ) 一つの集団の最上位にいて、それを統率する人。統領。頭目。
※今昔(1120頃か)四「大自在天と云ふは魔の首(かしら)也」
(ロ) 鳶職(とびしょく)、大工などの親方。また、博徒(ばくと)、侠客(きょうかく)などの首領。
※洒落本・辰巳婦言(1798)宵立の部「頭(カシラ)になるのも附合のうるせへもんだネ」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「馬場のかしらの子分に穴熊といふ若い衆が」
⑤ 多くの物の中で最も大きいもの。値の高いもの、また、上等なもの。
※浮世草子・西鶴織留(1694)五「ことしは四十目をかしらにして次第にさがりて」
⑥ 子どもの中で一番年上であること。また、その子。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「七八才をかしらにして」
⑦ (抽象的に) 物事の最初。第一番目。のっけ。→かしら(頭)から
※古今(905‐914)羈旅・四一〇・詞書「かきつばたといふ五文字を句のかしらにすゑて、旅の心をよまんとてよめる」
※浮世草子・好色二代男(1684)七「太夫もすいたる男なればこそ、かしらより爪掛て切てやる」
⑧ 能楽や長唄で、太鼓・小鼓・歌の拍子を強調する効果をもつ演奏の最初の部分。
※風姿花伝(1400‐02頃)七「太鼓・歌・鼓のかしらよりは、ちちと遅く足を踏み」
⑨ 刀の柄(つか)の先端につける金具。柄頭(つかがしら)
※浄瑠璃・博多露左衛門色伝授(1708)五「関の吉清が打たりし、岩ほくだきの細こしらへ、頭はくもいに名月のうすぐもわけて出るてい」
※洒落本・窃潜妻(1807)下「『治助さん、はしりにある頭(カシラ)は、まだどうもせずにあるな』『かしらとは、ヱヱ大そう大きな芋頭の事けへ』」
[2] 〘接尾〙
① 人や動物などを数えるのに用いる。
※古事記(712)上「汝の国の人草、一日に千頭(かしら)(くび)り殺さむ」
※宇治拾遺(1221頃)七「鹿の一頭(かしら)にてもころす者あらば」
② 人の上に立つ者、特に大名を数えるのに用いる。
※松井本太平記(14C後)一六「外様の大名百六十頭(かしら)
③ 一つの集団、部隊などを数えるのに用いる。
※御湯殿上日記‐文明一二年(1480)九月十五日「この御所のそへはんに、赤松か一そくとも四かしらしこうする」
④ 仏像などを数えるのに用いる。
※宇治拾遺(1221頃)九「『まさゆきが仏やつくりたる』と問へば〈略〉『五頭つくり奉れり』といふ」
⑤ 烏帽子(えぼし)を数えるのに用いる。
※義経記(室町中か)七「一挺の笈(おひ)には折らぬ烏帽子十かしら」
⑥ 瓜(うり)一〇個を一単位として数えるのに用いる。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「ウリ ヒト caxira(カシラ) イクラ スルゾ」
[語誌]→「あたま(頭)」の語誌

とう【頭】

[1] 〘名〙
① あたま。
※浄瑠璃・四天王むしゃ執行(1659)「まなこは日月のごとく、たうにはゑしつのふりたて」
② 集団・団体の長。かしら。おさ。
※後拾遺(1086)秋下・三四九・詞書「上東門院菊合せさせ給ひけるに、左のとうつかまつるとてよめる」
※大和(947‐957頃)八三「頭なりければ、殿上につねにありけり」
④ 祭礼や集会などで、当番にあたって事を行なう人。頭人。
※実隆公記‐文明一一年(1479)後九月一〇日「抑都護卿亭会来月十二日、中御門中納言与予頭也云々。仍短冊三十首為兼日題今朝先遣之」
[2] 〘接尾〙
① 牛・馬・犬などの動物を数えるのに用いる。つ。
※延喜式(927)二〇「右六衛府別大鹿。小鹿。豕各一頭」
② 烏帽子、兜(かぶと)、仮面などを数えるのに用いる。
※延喜式(927)一三「其方相仮面一頭」
③ 昔、数詞につけて、その一〇分の一を表わす。

がしら【頭】

〘語素〙 (あたま、また、初めの意の名詞「かしら(頭)」からきたもの)
① 日時を表わす名詞に付いて、その初めの意を示す。
※浮世草子・新色五巻書(1698)一「八つがしらの日ざしに心をいそがせ立わかれぬ」
※浄瑠璃・心中天の網島(1720)上「月がしらに一枚づつ取かはしたる起請」
② 動詞の連用形に付いて、そうした時、そのとたん、などの意を表わす。「出合いがしら」
③ 名詞またはこれに準ずる語に付いて、その中の第一位の者の意を表わす。「出世がしら」「もうけがしら」

つぶり【頭】

〘名〙 (「つぶら(円)」と同語源)
① まるい形のもの。
※名語記(1275)九「まろなる物をつぶりといへば、ひらつぶりの義歟」
② あたま。かしら。つむり。つぼり。〔和玉篇(15C後)〕
③ 頭髪。
※落語・やつがしら(1900)〈初代三遊亭円左〉「頭髪(ツブリ)はといふと疣尻巻にいたしまして〈略〉男女とも櫛を挿してをりました」

【頭】

〘名〙
① あたま。かしら。こうべ。頭部。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)一「また、菩薩の頭(ヅ)・目・身体をもて欣楽施与して、ほとけの智恵をもとむるをみる」
② 脳の働き。
日葡辞書(1603‐04)「Zzuno(ヅノ) ヌケタ ヒト〈訳〉愚昧な人」

つむり【頭】

〘名〙
① あたま。かしら。こうべ。つぶり。つむ。
※御伽草子・ゑんがく(古典文庫所収)(室町末)「づねんのはらふとて、つむりにつきたるひをはらふごとく」
② あたまの毛。頭髪。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「つむりの上がざっと卅両、櫛がばらふで簪が今風二本」

かぶり【頭】

〘名〙
① あたま。かしら。
※浄瑠璃・暦(1685)一「鷹司の公経にしたがひしよきやう、かふりをあげざりき」
※俳諧・犬子集(1633)三「竹の子にかふりをしゆる嵐かな〈連一〉」

つむ【頭】

〘名〙 「つむり(頭)」の略。
※ありのすさび(1895)〈後藤宙外〉五「寒気立ちて、頭(ツム)重く、気分悪るく」

かぶ【頭】

〘名〙 あたま。かしら。頭部。
※虎寛本狂言・惣八(室町末‐近世初)「『ハハア、かぶをはないたは』 笑らふて『扨々そなたはむさとした。夫は皆精進料理の詞じゃ。是は魚頭をつぐと申』」

かみ【頭】

〘名〙 あたま、かしらのこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「頭」の意味・わかりやすい解説

頭 (あたま)
head

動物体の前部にあって1個のまとまりをなす部分をふつう頭という。〈頭部〉も同様の意に用いられる。頭には一般に口があり,摂食器官,感覚器官の発達や神経節の集中化がみられる部域である。動物の積極的な移動は,好適な場所や食物の獲得を主要な動機として方向性をもって行われ,そのための動物体の構造が発達・分化したと考えられる。前後軸の確立と前進方向への運動力の効率的な強化,そして前端部への摂食・感覚および調整の機能の集中などがそれであり,これが頭部形成cephalization(頭化)といわれるものである。しかし,その程度・様相は種類や生活様式によってさまざまである。頭は動物にとって不可欠の部分であって,これを失うと生きていくことができない。

一般に頭部は多少膨らんでいて,口の回りには繊毛・剛毛・とげ・触手などを生じ,背面には眼点・目・触角などを発達させていることが多い。多毛類・甲殻類などではいくつかの体節として区別され,昆虫類ではその体節が合一して著しく可動的になったものもある。半索動物の体は3部域に明りょうに区分され,前体部・中体部・後体部と呼ばれるが,機能的に頭に相当するのは中体部である。軟体動物や袋形動物などでは外形的に頭部の区分の明確でないものが多く,放射型の棘皮(きよくひ)動物やU字形の消化管をもつ触手動物やホヤ類などでは頭部・尾部といった体域区分は適用しにくい。肛門を欠く扁形動物では口が頭部にないものも多い。腔腸動物・海綿動物では頭部形成は認められないので,頭部・尾部などの体域区分はされない。
執筆者:

脊椎動物では,頭骨(頭蓋と下顎骨格)を骨格とする部分が頭である。〈さらし首〉〈首を斬る〉などの表現にみられるように,首から上の部分という意味で,頭のことを〈首〉ということもある。〈かしら〉〈こうべ〉などの語も同じ内容で使われる。高等な動物ほど脳を収容する脳頭蓋の発達が著しいため,狭義には,顔面や下あごを除いて脳頭蓋をおさめた後上部だけを頭と呼ぶことも多い。外形的に頭が胴から識別できるのは多少ともくびれた頸部がある場合で,両生類のなかの有尾類と爬虫類以上の動物である。魚類のうち,軟骨魚類では頭は胴へ連続的に移行し,はっきりした境界を設けることはできない。硬骨魚類では頭と胴は直結するが,鰓蓋(えらぶた)があるのでこれより前を頭とみなすことができる。両生類のうち無尾類は頸部をもたず,頭を動かすことはわずかしかできない。頸部は可動性にとむ頸椎を骨格とする部分で,これがはっきり分化した爬虫類以上の高等脊椎動物は物を見つめたり,食物に食いついたりするとき頭を自由に動かすことができる。もっとも,水中生活に高度に適応し魚類に似た体形へ収れんした中生代の魚竜類(爬虫類)や現在のクジラ類(哺乳類)などは二次的に頸部を失い,頭と胴の境界はない。脊椎動物の頭にはよく発達した脳が含まれ,上下の顎骨を中心とする摂食器官やほとんどすべての感覚器官が集中しているうえ,外敵や異性に対する信号となる装飾的付属器官,闘争のための武器となる器官(くちばし,きば,角(つの)など)まで備わっていることが多い。したがって〈頭化〉はきわめて高度に進んでいるといえる。頭の外形は基本的には頭骨の形と大きさによって決まるが,毛,羽毛,角,こぶ,耳介,とさかなど,各動物に固有の付属器官の形状によって外貌は大きく左右される。
執筆者:

医学上〈頭〉といえば狭義のそれをさすことが多く,狭義の頭と顔との境は鼻のつけねからまゆと頰骨弓(きようこつきゆう)(頰骨のたかまり)とを通り,耳の穴に達する線となる。耳の後方は直接に首と接しており,乳様突起から外後頭隆起という頭の後面正中線にある突起まで引いた線がその境である。頭は前頭部,頭頂部,後頭部,側頭部,耳介部,乳突部の6部に分けられる。前頭部のことを額(ひたい)ともいう。頭は表面が円滑で,ほとんど突出もくぼみもない。全面が厚い皮膚でおおわれ,皮膚には前頭部(大部分),耳介部,乳突部を除いては頭髪がはえている。皮膚の下には帽状腱膜という広い結合組織の膜があり,この膜は後方は後頭筋,前方は前頭筋につながっている。これらの筋および帽状腱膜の下は骨膜をへだててすぐ頭骨(頭蓋骨)であり,頭蓋骨のなかには脳膜に包まれて脳が蔵されている。頭型の人類学的価値ははなはだ重要である。種々の人種の頭型を比較するために頭示数cephalic index of the livingというものが用いられる。これは(頭幅÷頭長)×100で,したがって〈頭の長幅示数〉とも称せられる。ここに頭幅とは頭のいちばん幅の広いところの左右径,頭長とはまゆの間と後頭部の最も突出した点との間の直線距離(すなわち最大長径)である。上から見た頭の形は,頭示数が小さいほど前後に細長く,大きいほど幅が広い。74.9以下のものを長頭,80以上のものを短頭,その間の値を有するものを中頭といい,これによって諸人種の頭型を比較すると,黒人は長頭,白人は中頭,中国人および日本人は短頭と中頭との中間,蒙古人,満州人,朝鮮人は短頭ということになる。頭の形は同じ人種内でも男女の間にかなりの差がある。その最も大きな点は,女の頭は比較的小さいこと,ことに高さが低いことである。頭の高さの測り方の一つに頭耳高があるが,これは耳の穴の上縁を通る水平面から頭の頂点までの高さである。
頭骨
執筆者:

〈頭は全宇宙の形に似て球形をなし,脳を包む最も神聖な身体部分で,他の部分を支配する〉とプラトンはいう(《ティマイオス》)。〈人だけが直立していて,身体の上方部分を宇宙の上方に向けている〉とアリストテレスがいう(《動物部分論》)のも,大宇宙(マクロコスモス)と照応する小宇宙(ミクロコスモス)としての人体という思想をうかがわせている。《説文解字》によれば〈天〉とは人の頭のことであり〈至高にして上なし。一大に従ふ〉という。これを天空の意に用いるのはむしろ転義であり,古代中国では人の頭としての天が非人格的な天を指して照応している。アリストテレスは上の書の中で目のあるところが頭だとした。触覚や味覚は心臓に関連しているが,視覚の本性は水と同一で,脳も液体だから目は脳の近くになければならないという。この理由づけは誤りだが,頭を目のあるところと規定したのは,魚類や昆虫など聴覚や嗅覚の感覚器官が頭にないことからみても卓見である。大プリニウスも脳は諸器官のうち最も高く位置し頭の穹窿(きゆうりゆう)で保護されている(《博物誌》11巻)というが,目と頭との関係には言及していない。頭が脳を含み,また宇宙との関係で位置づけられるため,頭は心や知性,宇宙や太陽や王制または権威あるものを表徴することになる。子宮が繁殖と豊穣(ほうじよう)を象徴するのに対して,頭は知性の座として男性を特徴づける点で男性的であるともされる。頭はまた,身体の他の部分から独立していると思われたので,男性の頭が死後もなお口をきく話が多く残っている。〈〉の項目を参照。

 頭痛は脳または脳膜の症状であるが,英語でheadache,ドイツ語でKopfschmerz,フランス語でmal à la têteとすべて頭で代用する。ケルススcapitis doloresとラテン語の頭の語を使った(《医術について》)。〈頭を悩ます〉も〈頭が良い〉も同様である。頭はさらに転用されて〈頭を丸める〉など〈髪〉を意味したり,〈筆頭〉や英語の〈headline〉のように物事の上部・始まりを指すようになる。

 動物は一つの頭をもつのが通例であるが,シュペーマンはイモリの卵を毛で縛って前部二重体をつくってみせた(《イモリの卵の発生生理学的研究》1903)。このような二重体は奇形として生まれることがあり,対称性二重体のうちとくに二対称性頭・胸結合体や前部二重体(側面二重体の一つ)が一つの身体に頭が二つあるような外観をとる。二対称性頭・胸結合体はヤヌス体ともいわれる。ローマの古神ヤヌスは門の守護神で,門はすべての物事の始まりであるとともに終りであることから,正反対の方向を向く二つの顔と頭があった。祈りや祭儀において神々の先頭におかれ,ユリウス暦では年の初めの1月をヤヌアリウスJanuarius(英語のJanuary)と称した。一方,前部二頭体にはデューラーの描いた三腕二頭体や伝説的なトルコ射手のような二腕二頭体などがある(E. ホーレンダー《15~18世紀版画に見られる怪異,異常出産および奇怪な形姿》1922)。
執筆者:

頭 (かしら)

(1)能の用語。(a)小鼓の打音名。調緒(しらべお)を強く締めたまま革の外側を強く打った,高く強い音。流派によっては〈甲(かん)〉と呼ぶ。〈タ〉と唱えられ,譜面上では〈△〉または〈〉と記される。(b)大鼓の打音名。腕を十分に伸ばして打った,強く響く音。〈チョン〉と唱えられ,譜面上では〈△〉または〈〉と記される。(c)太鼓の手組名。左撥(ばち)(8拍)・右撥(1拍)と続けて大きく強く打つこと。
執筆者:(2)能・狂言や歌舞伎舞踊などに用いる仮髪の一種。前髪は額におおいかかり,横は両肩,後ろは身長におよぶ長い仮髪。赤頭(あかがしら),黒頭(くろがしら),白頭(しろがしら)の3種があり,役柄や演出により使い分ける。能の常の演出では,赤頭は神体(《賀茂》《嵐山》など),竜神(《春日竜神》《竹生島》など),天狗(《鞍馬天狗》《是界》など),鬼畜(《小鍛冶》《鵺(ぬえ)》など)に用い,黒頭は童子または慈童(《田村》《大江山》《枕慈童》など),怨霊(《通(かよい)小町》《藤戸》《船弁慶》など),《隅田川》の子方,《邯鄲》《弱法師(よろぼし)》のシテなどに用い,白頭は老体の神霊や鬼畜・霊(《玉井》《竜虎》《恋重荷(こいのおもに)》)などに用いるが,演出意図によって常は(かつら)をつける役が赤頭や白頭をつけたり,同様に赤頭を黒頭や白頭に,黒頭を白頭に変えたりする。その場合は,赤頭,黒頭,白頭の呼称をそのまま小書(こがき)名として用いることが多い。とくに白頭は小書で用いられる事例の方が多く,小書名としては〈はくとう〉とも呼称する。狂言の頭の使用度は少なく,赤頭は閻魔王とその家来(《首引》など),鬼(《節分》),雷(《神鳴》)など,黒頭は動物(《蟹山伏》《横座》《止動方角》)や幽霊(《武悪》)など,白頭は《野老(ところ)》などに用いる。歌舞伎舞踊では石橋(しやつきよう)物の獅子や《猩々》などに赤頭,《舟弁慶》の知盛などに黒頭,石橋物でも親獅子の役や《鏡獅子》に白頭を用い,歌舞伎舞踊独特の色彩として《戻橋》や《紅葉狩》の鬼女がつける茶の頭がある。なお,文楽の人形の頭の部分をも首(かしら)というが,これについては〈人形浄瑠璃〉の項目を参照されたい。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「頭」の意味・わかりやすい解説


あたま

脊椎(せきつい)動物の大きな特徴の一つとされる中枢神経系は、体の背側にあって前方が拡大して脳となっているが、これを入れるために脊椎の前端に骨の箱、つまり頭蓋(とうがい)が発達している。この部分をとくに頭という。一般に動物が一定の方向に移動するとき、つねにその前端となるのが頭であり、ここに脳が発達して目、耳、鼻などの感覚器が集まっており、口もこの部分に開いている。すなわち、動物が体全体を移動させるのは、栄養となる有機物を食物として摂取することと関連して発達したと考えられる。まず感覚器で環境からの情報を受け取り、脳を通して運動器官に命令し、目的に適した行動を発現するのに役だつわけである。体の一部がこのような形になることを頭化という。原索動物とともに脊椎動物を、その祖先とみられる脊索動物の一群に含める場合に有頭類とよんで区別することがあるのは、頭の存在がとくに目だつためである。しかし、頸(くび)の発達していない魚類や両生類では、鳥類や哺乳(ほにゅう)類ほどに区別が容易でない。前者の場合、頸があって頭が自由に動いては、水圧の関係から、水中生活がやりにくいためであり、哺乳類のクジラをみても明らかである。

 無脊椎動物で頭化の著しいものは、陸上の昆虫類、水界の甲殻類に代表される節足動物で、体はいずれも頭、胸、腹の3部からなる。軟体動物では巻き貝の腹足類(マイマイ、アメフラシ)や頭足類(イカ、タコ)に頭化がみられるが、二枚貝類(アサリ)には頭がない。環形動物のミミズやヒルでは、体の前端の2節が多少変形して頭をつくり、内部に脳を含むが、多毛類(ゴカイ)では触糸や目などの感覚器官の発達が目だつ。扁形(へんけい)動物のウズムシ類では頭部に脳と眼点はあるが、口は頭部と独立して腹部に開く。

 一般に、積極的に移動する左右相称動物には頭化がみられるが、ウニやヒトデのような放射相称動物では頭化がない。なお、このような本来の頭と形態が類似していたり、移動する際に前端部となるところから頭とよばれる場合があり、ホヤの幼生やオタマボヤにみられる体主部、または精子の核部分などがその例である。

 頭の骨、すなわち頭骨とは頭蓋と内臓骨との総称であるが、高等脊椎動物では内臓骨に由来する骨格が喉頭軟骨(こうとうなんこつ)以外はすべて頭蓋の形成にあずかるので、頭骨と頭蓋骨は同義語として用いられる。内臓骨由来の骨格はおもに顔面をつくるので顔面頭蓋(内臓頭蓋)といい、脳や感覚器を包む部分を脳頭蓋(神経頭蓋)とよんで区別するが、後者は狭い意味で頭蓋骨ともいう。頭蓋の形成初期は、胚(はい)発生の過程で脊索の前端と脳の下側に生ずる細長い板状の軟骨で、これの骨化と結合組織から直接形成された硬骨が加わる。軟骨頭蓋は原始的で、無顎(むがく)類(ヤツメウナギ)、板鰓(ばんさい)類(サメ、エイ)、全頭類(ギンザメ)、肺魚類(プロトプテルス)にみられる。頭蓋はイカやタコの類にも認められるが、一生軟骨のままで、構造も簡単である。なお、頭骨を構成する骨の数は、脊椎動物が高等になるほど減少してくる傾向がある。魚類では100~180個もあるが、両生類や爬虫(はちゅう)類では50~90個となり、哺乳類になるとほぼその半数まで減少し、類人猿やヒトでは30個以内にとどまる。また、魚類では頭の形によって雌雄の別がはっきりするものもある。カンダイの雄は額部がこぶのように突出しており、かつてはコブダイとよばれて雌とは別種と考えられていたほどである。シイラの雄も成長につれて雌とは頭の形が変わり、前額部が隆起してくる。

[川島誠一郎]

ヒトの頭

人体の場合、形態的には頸部(けいぶ)から上方の部分を頭といい、頭の部分(頭部)と顔面(顔部)とに大別される。顔面を除く頭の部分とは、前頭部(眉(まゆ)の上から頭髪の生え際あたりまでで、いわゆる額(ひたい))、頭頂部(前頭部に続き頭の頂上まで)、側頭部(耳介の上方)、後頭部(側頭骨の乳様突起から後頭骨の最突出部まで引いた線より上方)、乳突部(耳介の後下部)、耳介部の6部を含めた範囲をいう。乳突部と耳介部は、両者を総称して側頭下部とよび、側頭部に含まれることもある。前頭部、耳介部、乳突部には毛髪は生えていない。頭の形態をつくっている骨格は頭蓋骨(とうがいこつ)で、脳髄(のうずい)を収容しているので脳頭蓋ともいうが、頭の区分名と同名の骨が頭蓋を構成している。すなわち前頭骨、頭頂骨、側頭骨、後頭骨、さらに蝶形骨(ちょうけいこつ)、篩骨(しこつ)が加わる。蝶形骨、篩骨は頭蓋底の真ん中に位置しているから、頭の外形をつくっているのはおもに前頭骨、頭頂骨、側頭骨、後頭骨である。皮膚(頭皮)は厚くて硬く、太い毛髪が生えている。頭皮下には皮下組織が少なく、薄い筋層や結合組織の膜(帽状腱膜(けんまく))があるのみで、すぐに骨膜に覆われた頭蓋骨に接しているため堅い物が頭部にぶつかると、直接、頭蓋骨に外力が及んで損傷をおこしやすい。

 新生児の頭の頂点の前後で、指を頭皮にあてると拍動を感じる部分があるが、これは脳の動脈の拍動が伝わるためである。新生児の頭蓋骨は出生時にはまだ骨化しないで、頭蓋骨相互の癒合を生じていないために、拍動がわかるわけである。癒合を生じていない間隙(かんげき)には、結合組織が充填(じゅうてん)されているが、頭頂部には矢状縫合と冠状縫合とが交わる部位、および矢状縫合とラムダ(状)縫合とが交わる部位には、比較的広い骨間隙ができており、前者を大泉門(だいせんもん)、後者を小泉門とよぶ。泉門は年齢の増加に伴い、頭蓋骨の発育とともに消失し、しだいに骨縫合に変わる。小泉門は生後約2か月、大泉門は14~22か月で閉鎖する。

 頭の形は個人差が著しく、また、性別差、年齢差、人種差、民族差といったさまざまな要素が関係しているため、頭の形の分類はむずかしいとされている。しかし、遺伝学的にも頭型の比較は重要な意味をもっているため、この研究には一定の方法に従って計測する頭径示数が用いられる。代表的な示数表示法として長幅示数(頭径最大幅÷頭径最大長×100)や、長高示数(頭径最大高÷頭径最大長×100)がある。長幅示数は頭の上方から見た示数、長高示数は頭を側面から見た示数である。長幅示数では、頭の形が前後に長いほど示数が小さく、幅が広いほど示数は大である。過長頭(示数70未満)、長頭(70~74.9)、中頭(75~79.9)、短頭(80~84.9)、過短頭(85以上)の分類があり、また高さでは低頭(70未満)、正頭(70~74.9)、高頭(75以上)の分類がある。この頭径示数を基準にして日本人をみた場合、かなり変化があるが、一般的には日本海側や北日本の地域では長頭、低頭傾向で、西日本地域では短頭、高頭傾向、関東地域では中頭、高頭の傾向があるという。人種的にも、黒褐色系の皮膚をもつ人種(黒人など)は長頭型で、黄褐色あるいは明淡色系皮膚をもつ人種(白人、アイヌ)は中頭型、黄褐色から土色皮膚の人種(東洋人、アラブ人)は短頭型である。日本人は全般的には短頭と中頭との中間といわれる。

[嶋井和世]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「頭」の意味・わかりやすい解説


あたま
head

もともとは動物の体制の先端にあって,運動の際に前端となる部分をいう。しかし,頭には中枢神経系の中心部 (脳) や,消化管の入口 (口) や視・聴・嗅覚の感覚器官が集中していることが多いので,前端になくても,これらの器官などのある部分を頭と呼ぶこともある。たとえば頭足類 (イカ,タコ) では,運動方向に沿っておおまかにいえば,腹,頭,足の順になっている。また頭という場合,この部分がある程度独立した形態をもっていて常識的に区別できる必要があるので,たとえば,同じ棘皮動物でも,ナマコの頭という言い方は一応できるが,ウニの口部のある下面中央を頭と呼ぶことは無理である。

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盆栽用語集 「頭」の解説

盆樹の頭部、樹冠部のこと。芽ひとつを指すのではなく頭部全体を指して使うことが多い。頭をうまくまとめることができるかどうかでその人の技量をはかることができるほど、盆栽にとって重要な部分。一般に、頭が丸いほど古木感が表現できる。

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とっさの日本語便利帳 「頭」の解説

人形の命ともいえる首の部分。バネを使って口、目、眉などが動くものもある。着物を着けて劇中の人物を作り上げる。役柄に応じた様々なパターン化された頭がある。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【頭】より

…動物体の前部にあって1個のまとまりをなす部分をふつう頭という。〈頭部〉も同様の意に用いられる。…

【頭屋(当屋)】より

…神社の祭りや(こう)行事に際し,その準備,執行,後始末などの世話を担当する人,またその家のこと。頭(とう)とはもと儀式などの主宰の責任をゆだねられることを意味し,神事仏事の諸負担を均等化するべく,集団の中に交代勤務を定めるところから,頭役(とうやく)の制が生じ,その勤務者を頭人(とうにん)とよんだ。さらに神事に欠くことのできない斎屋(いみや)(こもりや,こもり堂,精進屋)の存在と結びついて,あまねく祭りに緊要な〈とうや〉の語を生むにいたった。…

※「頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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