じん‐りん【人倫】
〘名〙
① ひと。人々。
人類。特定の個人や集団ではなく、人間一般をいう。
※続日本紀‐大宝三年(703)閏四月辛酉「雖二寿命有レ終、人倫大期一、而自レ聞二此言一、哀感已甚」
※徒然草(1331頃)一二八「すべて、一切の有情を見て、慈悲の心なからんは、人倫にあらず」
②
君臣・
父子・兄弟・夫婦など上下尊卑の人間関係や
秩序。また、そのような人間関係を保持する
道徳・
倫理。転じて、人としての道。人としての倫理。
※本朝麗藻(1010か)下・冬日陪於飛香舎聴第一皇子始読御注孝経〈大江以言〉「人倫高行無レ先レ孝、皇子執レ経幼学間」
※随筆・折たく柴の記(1716頃)下「古の聖人喪服を制し置れし事は、父子・君臣より始て、凡そ人倫の道を厚くし給ふべきためとみえたり」 〔
孟子‐滕文公・上〕
③ 古辞書や作品集などで、語彙・題材などを分類する語。
(イ) 古辞書で、人間や人間関係を表わす語彙。
※十巻本和名抄(934頃)「人倫部第二」
(ロ) 漢詩集などで、人間に関する題材。また、その詩。
※江吏部集(1010‐11頃)中「人倫部」
(ハ) 連歌の式目で語彙を分類する
術語。「人」「我」「誰」など人間を表わす概念。
※僻連抄(1345)「人倫 人・我・身・友・父・母・誰・関守〈如レ此類〉 非二人倫一物 月の主・独・老・命・形・姿・髪・鬚・手・足・目・鼻・口・そほづ〈以上〉」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
人倫
じんりん
儒教では,君臣,父子,夫婦,長幼,朋友の間の道徳的秩序としての人間の倫理を意味する。そこから一般に,人の踏み行うべき道という意味でも使われる。「倫」は,人として守るべき秩序,道理を意味する。また,ヘーゲルの Sittlichkeitの訳語としても用いられる。そこでは,良心の命令に従う主観的な道徳である Moralität (個人的道徳性) と対比されるところの,家族,市民社会,国家において実現される客観的な倫理を意味する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
デジタル大辞泉
「人倫」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
普及版 字通
「人倫」の読み・字形・画数・意味
【人倫】じんりん
人の道。また、人類。身内。〔孟子、離婁上〕規
(きく)(ぶんまわしと、定規)は方員(はうゑん)の至りなり。
人は人倫の至りなり。字通「人」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の人倫の言及
【善】より
…ヘーゲルは道徳的善を,主観的意志として現存すると同時に行為によって現実性を得るある生動的な善として把握した。そのさい行為は人倫性を基礎とし目的として行われるとされ,そして人倫性は人倫的な社会的諸関係の必然的発展として把握された。マルクス主義の立場では,ヘーゲルの基本的な考え方を継承しながらも,道徳的善についての諸観念は,人間がその客観的な諸関心を観念的に反省し言表するさいの必然的なイデオロギー的諸形式の一種にほかならないとされる。…
【道徳】より
…こんにちの用法では倫理という語と根本的な相違はない。倫とは仲間を意味し,人倫といえば,畜生や禽獣のあり方との対比において,人間特有の共同生活の種々のあり方を意味する。倫理とは,そういう人倫の原理を意味し,道徳もほぼ同様であるが,いずれかといえば原理そのものよりも,その体得に重点がある。…
※「人倫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報