デジタル大辞泉
「赤」の意味・読み・例文・類語
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あか・い【赤】
〘形口〙 あか・し 〘形ク〙 (「明(あか)い」と同語源)
① 赤い色をしている。朱、橙、桃色などを含めてもいう。
※大智度論平安初期点(850頃か)一六「赭(アカキ)色の衣を着て」
※伊勢物語(10C前)九「白き鳥の嘴と脚とあかき、鴨の大きさなる、水のうへに遊びつつ魚をくふ」
② 赤みを帯びた茶色である。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「少将にくろかげのむま、たけななきばかりなるあかきむま四」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈
仮名垣魯文〉三「かみの毛がちぢれて、赤
(アカ)いとはいへ、日本ことばもよくわかる」
③ 美しい。きれいである。
※
浄瑠璃・百合若大臣野守鏡(1711頃)三「あかいべべをりて着せふの、今をるは、まだ父のとのごのはれぎぬ」
④ 急進的な思想をもっている。共産主義者である。
※三月変(1929)〈岡田三郎〉「五作の奴、すっかり赤(アカ)くなっちまやがったよ」
[語誌]「明
(あか)い(明し)」と同源で、もと、光の感覚を示したと考えられる(→「
あか(赤)」の語誌)。上代では赤色の意の例は見られない。平安時代には色にも用いるが光の場合と用法の別がない。これは今日でも関西方面の「あかい」が「明るい」の意を持つのにつながる。
あか‐さ
〘名〙
あか‐み
〘名〙
あか・る【赤】
〘自ラ四〙
① 赤らむ。赤くなる。赤く映える。
※万葉(8C後)一九・四二六六「もののふの 八十(やそ)伴の男の 島山に 安可流(アカル)橘 髻華(うず)にさし」
② 酒に酔って顔などが赤くなる。
※延喜式(927)祝詞(九条家本訓)「豊明(とよのあかり)に明(アカリ)坐さむ皇御孫の」
③ 顔色のつやがよくなる。血色がよくなる。
※書紀(720)応神一三年九月・歌謡「三栗の
中つ枝の ふほごもり 阿伽例
(アカレ)るをとめ いざさかばえな」
あっか【赤】
① 赤いこと。赤いもの。また、明るくてきれいなこと、また、もの。
※浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)三「是々あっかホホよいのじゃ。アレよそのやや御覧(らう)じませおとなしい事はいの」
※常磐津・四天王大江山入(
古山姥)(1785)「其おとなしい褒美に、此間からあっかのべべ織って着せうと思ふてな」
② 酒。あから。
※読本・夢想兵衛胡蝶物語(1810)前「酒をおとと又あっかともいひ」
あか・む【赤】
[1] 〘自マ四〙 赤くなる。赤みを帯びる。赤らむ。また、赤茶ける。
※書紀(720)皇極元年五月(図書寮本訓)「熟(アカメル)稲始めて見ゆ」
※枕(10C終)二四一「わざと御使して賜はせたりし、唐の紙のあかみたるに、草(さう)にて」
しゃく【赤】
〘名〙 (「しゃく」は「赤」の呉音)
① 色の名。あか。せき。
※虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初)「一段できたよ、せう・わう・しゃく・白・黒、五色をもってまいらふ」
※年中定例記(1525頃)「赤の次の日、赤後の出仕とて出仕あり」
あから・む【赤】
[1] 〘自マ五(四)〙 赤くなる。赤みを帯びる。また、赤茶ける。赤む。
※書紀(720)皇極元年八月(図書寮本訓)「或本云、五日連雨、九穀登熟(ナリアカラム)」
※落窪(10C後)三「恥づかしげにのたまへるに、おもてあからむ心地してなん有りつる」
あか・める【赤】
〘他マ下一〙 あか・む 〘他マ下二〙
① 血流が増えたり充血することによって、顔や目を赤くする。赤らめる。
※落窪(10C後)一「いかに成りぬらんと思ひて、かほあかめてゐたり」
② 金属を赤くなるまで加熱する。赤熱する。
※
信長公記(1598)首「何程にかねをあかめてとらせたるぞ」
あから・める【赤】
〘他マ下一〙 あから・む 〘他マ下二〙 顔などを赤くする。赤める。
※人情本・
春色梅児誉美(1832‐33)初「お長
(てう)は嬉しくも、また恥かしくも赤
(アカ)らめし、㒵
(かほ)におほひし懐紙の包み」
あから・びる【赤】
〘自バ上一〙 あから・ぶ 〘自バ上二〙 赤みを帯びる。赤くなる。
※延喜式(927)祝詞「白玉の大御白髪(おほみしらか)坐し、赤玉の御阿加良毗(アカラビ)坐し、青玉の水江の玉の行相(ゆきあひ)に」
あかる・む【赤】
〘自マ四〙 「あからむ(赤)」の変化した語。
※咄本・正直咄大鑑(1687)黒「おほきなる桃のいとうつくしうあかるみて、ゑだもたゆむ斗になりさがりたるを」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
赤 (あか)
色名の一つ。日本工業規格(JIS)では有彩色として10色名,無彩色として5色名の計15色名を基本色名に定めているが,赤は有彩色の基本色名の一つである。可視光線の単色光の示す色刺激,すなわちスペクトル色は,人によって色感覚が異なり,それぞれの色の限界波長は一定でないが,赤の波長はほぼ600~650nmの範囲にある。
象徴としての赤
赤という漢字は,大と火を組み合わせたものであるが,日本語の〈あか〉は〈あけ〉と同じで(夜明けの〈あけ〉,あかつきの〈あか〉),太陽と結びつく。赤を意味するヨーロッパ語の多く(red,rot,rouge,……)は,血を語源とする。かくて赤の象徴は,主として火,太陽,血と関係するものと考えられる。まず中国の字典《説文(せつもん)解字》によると,赤は〈南方の色なり〉という。《淮南子(えなんじ)》天文訓は天の五星を説明して〈南方は火なり,その帝は炎帝……その獣は朱鳥〉という。仏座や墓室に見られる四神の図のうち,南方に朱雀(朱鳥)が配されるのは,それが太陽(天の火)の方角だからである。多くの宗教において神は太陽と同一視されるが,神の顔はしばしば赤く彩られ(《ヨハネの黙示録》1:16参照),あるいはその眼は赤いものとされる(《ヨハネの黙示録》2:18,プラトン《国家》4:420参照)。仏教では赤は阿弥陀如来の身色である。また赤は火の色であるところから,すべてを焼きつくす恐ろしい色と解される。《大毗盧遮那仏眼修行儀軌(だいびるしやなぶつがんしゆぎようぎき)》によると,〈赤色はこれ威猛除障の色〉とされ,護法尊,忿怒(ふんぬ)尊の身色となり,あるいはこれを赤の火炎光背が囲む。また赤が戦火,災害,懲罰を象徴するのも,それが火の色であるからであり(《ヨハネの黙示録》6:4,9:17など),さらに同じ理由で悪魔の色ともなる(《ヨハネの黙示録》12:3など)。東洋では,赤は青と組み合わされて陽と陰とを象徴する色として用いられるが,キリスト教社会では,赤は愛,青は智の象徴と解され,神はしばしば赤と青に彩られた雲に乗って姿を現し,あるいは赤と青の2種の天使(セラフィムとケルビム)を伴う。赤が愛の象徴とされるのはそれが温かい血の色だからであり,それゆえにまた赤は生贄を象徴する。殉教者の祝日に際してキリスト教の司祭が赤い祭服を着るのはこのゆえである。血の色は,また不吉な災害を象徴するが,古代エジプトでは赤は一般に禍いの色とされ(セト神の色など),パピルス文書では,不吉な字句を記すのに黒を避けて赤のインキを用いた。
執筆者:柳 宗玄
日本文化のなかの赤
明度および彩度の大きい赤の色が好まれるのは,世界中の民族に共通しているから,とりわけて日本人の特徴だとか日本文化の特質だとか考えるには及ばない。今日ではすでに常識となっている民族学的説明として,赤は,人間の原始的感情にとり,燃えあがる火の色であり,命のかよう血の色であり,そこから派生して歓喜,美麗,戦い,残虐,死,悪霊などのシンボルであると考えられてきたとされる。当然,遠古の日本列島住民においても同断である。最古の史料《魏志倭人伝》に〈倭地温暖,冬夏食生菜,皆徒跣,有屋室,父母兄弟臥息異処,以朱丹塗其身体,如中国用粉也〉とみえ,倭人が朱(水銀系の赤色顔料)で身体装飾をしていたらしいのを知る。この水銀朱は縄文後期にあらわれ,弥生時代や古墳時代にはかなり広くおこなわれた。《古事記》神武天皇の条に,皇后富登多多良伊須須岐比売命(ほとたたらいすすきひめのみこと)(またの名,比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ))は,丹塗矢(にぬりのや)に化身した三輪山の祭神が美人の女陰を突いて生ませた〈神の御子〉だという記事があり,たたら(踏鞴,鉄鍛冶)と神との関係を想像させるが,鉄丹および鉛丹の技術も並行しておこなわれたのであろう。《万葉集》巻七の〈大和の宇陀(うだ)の真赤土(まはに)のさ丹(に)著(つ)かばそこもか人の吾(わ)を言(こと)なさむ〉(1376)などもその例証のひとつ。万葉人が赤を最も好んだことについて,伊原昭《万葉の色相》は〈用例数を系統別にみると,赤系統が54例,黄系統1例,緑系統2例,青系統2例,紫系統3例,黒系統1例,白系統4例,色彩不詳5例となる〉と報告している。万葉人は,赤系統の色彩に対して〈にほふ〉〈てる〉〈ひかる〉〈はなやか〉とうたいあげ,2番目に好きだった白系統の色彩を〈きよし〉〈さやけし〉〈いちしろく〉と詠じた。このような古くからの赤色嗜好が,のちのちまで,日本人の色彩感覚の基調となるのだが,もうひとつ忘れてならないことは,7~8世紀に中国律令政治方式をそっくり導入・受容した際,五行(ごぎよう)思想に基づく正色(せいしよく)の思想を受けいれ,宮廷位階にもこの考えかたを適用した(赤は,紫に次ぐ四・五位の高官の衣服に用いられた)という点である。平安時代には位袍(いほう)の色がいっそう厳格に守られ,茜(あかね),蘇芳(すおう),紅花(べにばな)による染法の進歩とともに,赤は貴族階級の文化を彩る役割をになった。赤が真に民衆のものとなるのは,中世末期,京都西陣をはじめ日本各地に一般庶民の手になる繊維産業が発達してから以後である。
執筆者:斎藤 正二
赤[村] (あか)
福岡県北東部,田川郡の村。人口3251(2010)。周囲を丘陵に囲まれ,英彦(ひこ)山から北流する今川に沿って小盆地が開ける。今川は村境を東折して周防灘に注ぐ。郡内で炭鉱のなかった唯一の村であるが,炭鉱への通勤者が多かったので石炭不況に際し離職者が多発し,深刻な打撃を受けた。そのため工業団地を造成して男子の雇用機会確保に努めている。産業の基盤は農業で,米作のほか野菜栽培が中心である。山林が村域の約7割を占め,良質の杉を産する。東の戸城山には南北朝時代の城跡のほかアスレチック施設がある。南部の犢牛(こつとい)岳山麓には大音・琴引の両滝があり,観光客が多い。
執筆者:松橋 公治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
赤
あか
「あか」は、古くは、明るい、明らかなことを意味していたといわれている。そして色の名前として用いられても、かならずしも単一の色に対応するというよりは、色の傾向を示すために用いられていたようである。ただ経験的に赤系統のものをさらに細分化していて、それに対して色名を与えている。赤に対しての日常的な区分は、ある意味で現在のほうが大ざっぱといえるようである。たとえば、赤と朱は現在ほとんど区別して使っていない。
赤に対応する光の波長は、640~780ナノメートルの範囲である。一般色名の日本工業規格(JIS)では、色相50Rで、明度3.5~5.5、彩度9~13の範囲の色に、赤という色名をつけている。
赤に対する連想は、太陽、血、炎などが多く、赤が象徴する代表的なものとしては、情熱、興奮、恋、危険などがあげられる。赤を見たときに生じる感じとしては、はでな、暖かい、情熱的な、強い、動的な、陽気な、興奮したといったものがあげられる。このように赤の印象は、外へ向けエネルギーを発散させるという感じである。図形では円などが印象としては類似している。そして暖かい感じを受けることから、暖色系の色として扱われる。また同じ位置にあるとき、青に比べやや前方に位置して見えるので、前進色ともよばれている。
赤は刺激の性質として強いため、目につきやすいといわれる。このことと連想、象徴の内容などから、交通信号の「止まれ」を示すサインとして用いられたり、火に関係する器具類などに使用されたりしている。安全色彩において、赤は消火器、火災報知器などに使用することになっているのも、赤のもつ視覚的性質が考慮されているからである。赤に対する嗜好(しこう)はかならずしも一般的ではなく、かなり偏りを示すように思われる。
[相馬一郎]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
あか【赤】
色名の一つ。JISの色彩規格では「あざやかな赤」としている。一般に、新しい血の色をさす。概念としては幅広い色を含み、紅梅色、朱色、鉛丹色、薔薇色、緋色、紅色など赤系統の色の総称でもある。中国から伝えられた五行説では「木火土金水」の「火」に相当し、季節では夏を表す。夏の別名を「朱夏」というのはこのため。また、青、緑とともに光の三原色の一つ。印刷で用いる色の三原色はマゼンタ、イエロー、シアンだが、マゼンタは「赤」と訳される。日本の国旗に描かれている赤い丸は「国旗及び国歌に関する法律」によって「紅色」と定められている。
出典 講談社色名がわかる辞典について 情報
赤
特定の牌が赤く染めてあり、常にドラとして扱われるルール。あるいはその牌。五萬・五索・五筒が対象となることが多い。
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
知恵蔵
「赤」の解説
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
世界大百科事典(旧版)内の赤の言及
【色】より
…私たちは物を見るときその形を知覚するが,黄だとか青だとか,あるいは赤だとかの色も同時に知覚する。このように色とは私たちの目が光に対して感ずる知覚の一つであると表現することができよう。…
【化粧】より
…
[色彩の象徴性]
先史時代には約20種の顔料があったことがわかっているが,これらは現存の未開社会の化粧用顔料と正確に対応している。未開社会における色彩への嗜好を見ると,赤,白,黒の3色を圧倒的に好み,ついで植物性の青,緑が続く。各民族とも色ごとに象徴的な意味をもたせてある。…
※「赤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」