(読み)たん

精選版 日本国語大辞典 「丹」の意味・読み・例文・類語

たん【丹】

[1] 〘名〙
硫黄と水銀の化合した赤土。辰砂(しんしゃ)。また、その色。に。
高野山文書‐嘉吉三年(1443)五月二八日・山王院一御殿造営勘録状「にかへぬりの下行〈略〉四貫文たん十褁代」 〔書経‐禹貢
② 鉛に硫黄・硝石を加えて、焼いて製したもの。鉛の酸化物鉛丹ともいう。黄色を帯びた赤色で、絵の具としまた、薬用とする。和泉国堺で産する長吉丹は上等とされた。
法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「合綵色物壱拾参種〈略〉塔分陸種〈朱砂六十二両一分 胡粉二百八十両一分 黄卅五両二分 丹二百八両〉」
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉八六「丹(タン)で塗った提灯が幾つも掛けてあります」
③ 薬のこと。多く、不老不死の薬をさしていう。
※菅家文草(900頃)一・仲春釈奠、聴講孝経、同賦資事父事君「換白何死、含丹在親」
読本・椿説弓張月(1807‐11)続「丹(タン)を煉(ねり)、真を修し、天地とともに寿(いのちなが)しとぞ」 〔徐陵‐答周処士書〕
[2] 丹波国(たんばのくに)、丹後国(たんごのくに)の略。
[3] 〘語素〙 丸薬・練薬の名前につける語。「万金丹」など。
※二十巻本和名抄(934頃)一二「紫霊丹 一名長生丹一名反魂丹」 〔晉書葛洪伝〕
[補注]((一)③及び(三)について) 道家では水銀に不老長生の効果があると信じられ、「経進地仙丹」「伏虎丹」「養生丹」といった神仙薬が作られた。

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デジタル大辞泉 「丹」の意味・読み・例文・類語

たん【丹】

硫黄水銀の化合した赤土。辰砂しんしゃ。また、その色。に。
黄色みを帯びた赤色顔料日本画に用いる。鉛の酸化物で、人工的に製造される。鉛丹。黄丹
薬。特に、道家における長寿・不老不死の薬。
「―を練り、真を修し、天地とともに寿いのちながしとぞ」〈読・弓張月・続〉
[類語]真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれないべに真紅しんく鮮紅せんこう緋色しゅあけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

に【丹】

《「」と同語原》
赤い色。丹色。「塗りの鳥居」
赤い色の顔料に用いる赤土。
丹生にふさと昔時むかしの人、此の山のすなごを取りて―にてき」〈豊後国風土記
[類語](1真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれないべに真紅しんく鮮紅せんこう緋色しゅあけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

たん【丹】[漢字項目]

常用漢字] [音]タン(呉)(漢) [訓]に あかい
鉱物の一。辰砂しんしゃ。「丹砂たんさ・たんしゃ
赤色の顔料。赤い色。に。「丹朱丹青丹頂
丹砂を配合した不老不死の仙薬。「丹薬仙丹・練丹術」
練り上げた薬。「反魂はんごん万金まんきん
まごころ。「丹精丹念
丹波たんば国、または丹後たんご国。「丹州
[名のり]あかし・あきら・に・まこと
[難読]雲丹うに甲比丹カピタン切支丹キリシタン牡丹餅ぼたもち

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改訂新版 世界大百科事典 「丹」の意味・わかりやすい解説

丹 (たん)
dān

中国,道教でいう不老長生を得るための薬。晋の葛洪の《抱朴子》では,不老長生を得るには,金丹を服薬することが最も肝要であるとする。金丹の金はその火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ,丹の最高のものは九転の丹で,焼けば焼くほど,霊妙に変化する点が重んじられ,この九転の丹を服用すると3日で仙人になれると説く。また丹華,神符,神丹,還丹,餌丹,錬丹,柔丹,伏丹,寒丹の九丹が説かれ,寒丹を1匙ずつ100日服用すれば仙人になり,仙童仙女がそば仕えをし,翼を用いずに軽やかに空を飛行できるとする。丹の材料は,たとえば,九光丹では,丹砂,雄黄,白礜(はくよ),曾青,茲石等であり,丹を作る際には人里離れた名山に行き,斎戒沐浴して身辺を清潔にせねばならないとされる。丹を作る方法としては,務成子丹法等,多くの方法が説かれる。後世,紫陽真人張伯端(987-1082)の金丹道系の道教では,この丹を服用する方法のほかに,人間の身体の中の気の運用により,内部に金丹を作り不老長生を得る内丹の法が主張された。
仙薬 →練丹術
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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【赤】より

…当然,遠古の日本列島住民においても同断である。最古の史料《魏志倭人伝》に〈倭地温暖,冬夏食生菜,皆徒跣,有屋室,父母兄弟臥息異処,以朱丹塗其身体,如中国用粉也〉とみえ,倭人が朱(水銀系の赤色顔料)で身体装飾をしていたらしいのを知る。この水銀朱は縄文後期にあらわれ,弥生時代や古墳時代にはかなり広くおこなわれた。…

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