(読み)せいする

精選版 日本国語大辞典 「制」の意味・読み・例文・類語

せい‐・する【制】

〘他サ変〙 せい・す 〘他サ変〙
① おきてなどをきめる。制定する。
神皇正統記(1339‐43)上「仍(よりて)文字を制するにも日月を明とすと云へり」
② 人があることをしようとしているのをおさえとめる。また、気持などをおしとどめる。おさえる。
※竹取(9C末‐10C初)「月かほ見るは忌むこととせいしけれ共」
平家(13C前)一〇「大将軍参河守あれせいせよ、とどめよと宣へば」
③ おさめる。支配する。意のままにする。意に従わせる。
太平記(14C後)一三「先(さきん)ずる時は人を制(セイ)するに利有りとて」
※読本・雨月物語(1776)吉備津の釜「禽(きん)を制(セイ)するは気にあり、婦を制(セイ)するは其夫の雄々しきにあり」
④ ほどよくする。調和を保つようにする。節制をする。節する。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉八「蓋し人の志を立て行を制するは」

せい【制】

〘名〙
① のり。おきて。さだめ。制度。法度。禁制
※宇津保(970‐999頃)国譲下「同じ色の青、御馬ぞひ四人、せいありて、学僧とむ御前四人」
※栄花(1028‐92頃)暮待つ星「内の御心、いとめでたくあるべかしく、すぐすぐしうさへありて、せいも厳しくなどぞ、おはしましける」 〔春秋左伝‐隠公元年〕
天子のおおせごと。制詔。また、領主支配者命令。君命。下知。
続日本紀‐和銅七年(714)四月戊寅「制。諸国庸綿。丁五両。但安芸国絲。丁二両」 〔史記‐始皇本紀〕
③ おさえること。おしとどめること。制止
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「忠こそ、まろがせいに従ふべくもあらねばなん、しのびて奏する」
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉八「居乍らにして阿容々々(おめおめ)と制(セイ)を受くべきときにあらず」
⑤ ほど。程度。分限。

せい‐・す【制】

[1] 〘他サ変〙 ⇒せいする(制)
[2] 〘他サ五(四)〙 =せいする(制)
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉三「かの地は我国にていふきんちゃく切ごまのはいのたぐひおほくあり〈略〉ゆゑに英人これをせいさんとポリスといふ役名をあてて市中を見まはらしかのぞくをふせぐよしなり」

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デジタル大辞泉 「制」の意味・読み・例文・類語

せい【制】[漢字項目]

[音]セイ(漢)
学習漢字]5年
形を作り整える。「制作編制
おさえつける。おさえとめる。「制圧制限制止制動制約圧制規制強制牽制けんせい自制節制統制抑制
秩序づける枠。きまり。「制度制服王制学制旧制体制法制
天子の命令。「応制
意のままにする。「制球制覇制海権
[名のり]いさむ・おさむ・さだ・すけ・ただ・のり

せい【制】

きまり。おきて。制度。「外国にならう」
天子の命令。支配者の命令。
おしとどめること。制止。
「まろが―に従ふべくもあらねばなむ」〈宇津保・忠こそ〉
[類語]制度機構体制法制仕組み決まり定めおきてシステム

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改訂新版 世界大百科事典 「制」の意味・わかりやすい解説

制 (せい)

文書様式の一つ。中国においては皇帝の発令する正式の文書の一つで,これは日本古代詔書に相当する。しかし日本の公式令には,詔書は定められているが制書は見えない。したがって制は,日本においては正式の文書ではないが,六国史等には数多く見られる。これらの制の中には,法令の制定という一般的な意味や,あるいは詔と同じ意味で用いられている場合があるが,そのほか一定の傾向として,いわゆる太政官処分を指して用いられる場合が多い。太政官の発給する太政官符には,奉勅を経たものと奉勅を経ずに上卿の宣のみによるものとがあるが,後者を,六国史はしばしば太政官処分または制として掲げている。この場合の制は,太政官処分による決定を法令として制定するという意味であろう。なお後世には,中国の制度にならって詔書を制書と称した例が見られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「制」の解説


せい

古代において「続日本紀」以後の正史などにみえる単行法令の称。表記は唐の制書にもとづくと思われるが,詔または勅に準じる場合,勅を奉って太政官からだされた場合,太政官からの奏が天皇に裁可されてだされた場合,太政官独自の裁断によってだされた場合など,多様な法令が含まれる。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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