打物(読み)うちもの

精選版 日本国語大辞典 「打物」の意味・読み・例文・類語

うち‐もの【打物】

〘名〙
① 砧(きぬた)で布や絹織物を打ってつやを出すこと。また、そうしてつやを出した布や絹織物。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「これはうち物の所。ごたち五十人ばかり、めのこ共三十人ばかりあり」
② (打ち鳴らすもの、の意から) 小鼓、大鼓、鉦鼓(しょうこ)羯鼓(かっこ)などの打楽器の総称。また、それを打ち鳴らすこと。
※新儀式(963頃)四「又北廊内為雅楽寮頭以下楽人召人等座。〈略〉承香殿西簾下立鼓処。打物皆在其間
③ (打ち斬るもの、の意から) 刀剣薙刀(なぎなた)、槍などの武器の総称。転じて、一般に兵器、武具の類をもいう。
今昔(1120頃か)二九「或は調度を負ひ、或は打物を取て、皆甲冑を着て」
④ 剣術。
浄瑠璃・初庚申楽遊(1679)一「早わざは、たうとかゐき得、うち物は、しばうが術をつたへ給ひ」
⑤ 打ち鍛えて作った鉄、その他の金属器具の総称。⇔鋳物(いもの)。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑥ (代償となる物品を打ち入れることの意から) 品物を代えあうこと。物々交換。また、その品物。
※狂言記・富士松(1660)「『そのぎならば、うちものにいたそ』『それはなにと御ざりませうぞ』『かへ物といへば同心でおりやるの』」
菓子一種で、型に打ちこんで製したもの。落雁(らくがん)の類。打ち菓子。
落語・京阪見物(1894)〈三代目春風亭柳枝〉「上方の打物と云ふたら矢張世界随一ぢゃ」

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デジタル大辞泉 「打物」の意味・読み・例文・類語

うち‐もの【打(ち)物】

雅楽で使う打楽器。羯鼓かっこ三のつづみ太鼓鉦鼓しょうこなど。
刀剣・薙刀なぎなたなどの、打ち合って戦うための武器。
打ち鍛えたり、打って延ばしたりして作った金属器具。→鋳物
穀物の粉と砂糖をまぜ、型に入れて固めた菓子。落雁らくがんなど。打ち菓子。
きぬたで打って柔らかくしたり、つやを出したりした絹織物などの布。
品物の交換。また、そのための品物。
「『いや、あれは人ので御ざりまする』『その儀ならば、―にいたそ』」〈狂言記・富士松〉
[類語](2片刃諸刃両刃替え刃やいば刃物凶刃/(4菓子和菓子洋菓子茶菓子銘菓名菓粗菓茶請けお茶請けスナック菓子餅菓子駄菓子生菓子半生菓子蒸し菓子焼き菓子打ち菓子干菓子ひがし

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