日本大百科全書(ニッポニカ) 「調度」の意味・わかりやすい解説
調度
ちょうど
一般には身の回りの器具、道具とか、日常使用の用具、家具などをいう。中世の武家の間では弓矢をいった。本来の意味は調えさだめるということで、室内をほどよく調える室礼(しつらい)、鋪設(ほせつ)をいうようになり、平安時代には、貴族の住宅である寝殿の母屋(もや)・庇(ひさし)に室礼をする器物、道具類そのものをいうようになった。初めそれらを規定せず範囲の広かったことから、わが国最初の分類百科事典『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には調度を生活用具から生産、仏教、武器、刑罰の諸用具にわたって包容している。しかしそれより限定して調度を規定したのは、934年(承平4)から1148年(久安4)の期間、公私における平安貴族の行事次第と寝殿の室礼について記録し図解した『類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)』である。同書巻2に、調度を母屋・庇の室内に配置した図を添えながら、具体的に行われた事例を数多くあげている。しかも、同書巻3では、もっと限定し、唐匣(からばこ)、鏡筥(かがみばこ)、鏡台、泔坏(ゆするつき)、二階(棚)、脇息(きょうそく)、薫炉、打乱(うちみだれ)筥をあげる。それらは座の近くに置かれているもので、その他を装束、盥具(かんぐ)、膳所(ぜんしょ)具、理髪具に分けるが、今日でいう調度品が含まれている。
このように10世紀のなかばには、宮廷を中心とする貴族の公私にわたる生活に基づく基本的な平安調度が形成され、さらに有職(ゆうそく)(儀式典礼の法式)に規定された公家(くげ)調度が完成した。権力者が武家に交替するとともに公家調度を主調とした武家調度が多様に、かつ豪華に変化し、近世の大名調度がその頂点に達したものである。各階層もその財力の許す限り、かつ婚家の箔(はく)づけから豪華な婚礼調度を持参するようになった。現代でも、調度という呼び方は古風ではあるが、使用されなくもない。
[郷家忠臣]