都市(読み)とし

百科事典マイペディア 「都市」の意味・わかりやすい解説

都市【とし】

比較的狭い地域に多数の人口,家屋が密集,農業以外のおもに商工業などが経済生活の主体をなす集落村落に対する用語だが,その差は必ずしも人口数では定義されえない(市町村)。都市の性格は各時代,各地域の歴史的・社会的背景によって異なる。たとえば,前6千年紀から前1千年紀,アジア(各地域)で都市が誕生した時代のオリエントのオアシス都市(ウルなど),ヨーロッパの古代都市(ポリス),中世都市自由都市,東洋では中国の長安,日本の平安京に代表される古代専制政治に基づく計画的都市,日本の封建制下に発達した城下町市場町港町門前町など。産業革命以後は資本主義のもとに工業中心の産業都市が多数発生,20世紀に入ると人口が数十万から100万を超える大都市が数多く出現し,さらに1000万前後の巨大都市(メトロポリス)も先進諸国に現れた。今日では多くの発展途上国を含めて都市化が世界的な一般傾向となっている。今日の都市の人口構成は一般に第3次産業従事者が多いことで特徴づけられる。都市景観を代表するものは各種商店,官庁,会社,劇場,映画館,その他の娯楽施設などで形成される市街地の発達で,都市全体としては市街地,住宅地域,工場地域などと機能的に分化した地域構造となっている所が多い(下町山手)。そのほか病院,公園,スポーツ施設,ガス,水道,電気,下水道などの公共施設,整備された道路網,鉄道駅,港湾,空港など,バス,地下鉄,市街電車などの都市交通機関を有する。今日の大都市共通の問題としては,人口の流入・増加による市街地の拡大と過密状態の発生,住宅問題,交通問題,生活廃棄物処理問題,環境問題などがある。→囲郭都市都市計画都市問題スプロール現象ドーナツ化現象インナー・シティ問題
→関連項目集落都市化都市圏都市公園農村

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「都市」の意味・わかりやすい解説

都市
とし
city

多くの人口集団をもち,家屋その他の建造物が密集,住民の生産がおもに第2次,第3次産業に依存して発達した集落村落に対する地域社会をさす。都市を規定するのに,人口の多少をもって基礎とすることは古くから行われているが,国によって必ずしも決っていない。日本では,だいたい人口3万以上で,中心街を形成し,人口の密集している地域をもって行政上の市制の施行地域の基準としている。都市は政治,経済,文化,交通などの中心となるところが多く,歴史の古いものも多い。

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精選版 日本国語大辞典 「都市」の意味・読み・例文・類語

と‐し【都市】

〘名〙 人口の集中した地域で、政治・経済・文化の中心になっている大きなまち。都会。みやこ。古代ギリシア・ローマのように都市が国家の形態をとっていたり(都市国家)、中世ヨーロッパにみられるように国家内の国家的存在となっていた(自由都市)こともある。
※布令字弁(1868‐72)〈知足蹄原子〉二「都市 トシ 京ノマチ」
※市制町村制発布の上諭‐明治二一年(1888)四月一七日「都市及町村の権義を保護するの必要を認め」 〔漢書‐食貨志・上〕

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デジタル大辞泉プラス 「都市」の解説

都市

米国の作家クリフォード・D・シマックのSF短編集(1952)。原題City》。国際幻想文学大賞受賞(1953)。

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デジタル大辞泉 「都市」の意味・読み・例文・類語

と‐し【都市】

多数の人口が比較的狭い区域に集中し、その地方の政治・経済・文化の中心となっている地域。「商業都市」「学園都市
[類語]都会

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世界大百科事典 第2版 「都市」の意味・わかりやすい解説

とし【都市】

都市という日本語は明治中期以後の語で,しばしば行政上の市や町と混同されるが,まったく別の概念である。英語のtowncityは日本では行政上の町と市,および集落単位の町や都市の訳語にも用いられるが,イギリスではtownとcityはほぼ類似の意味で用いられ,とくにtownが小型の集落だけを意味していない。アメリカ合衆国ではtownは行政上の群区の単位としてほぼ小型の都市的集落を意味するが,cityは大型の都市的集落を指すとともに市民や市会の意味をもっている。

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普及版 字通 「都市」の読み・字形・画数・意味

【都市】とし

城市。まち。〔漢書、食貨志上〕賈の大なるは、積貯倍息し、小なるは、坐列販賣し、の奇(きえい)(過不足)を操(と)り、日に市に游ぶ。

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世界大百科事典内の都市の言及

【在郷町】より

…日本近世では法的に都市・と農村の区別が存在したが,農村地域にありながら実質は町として活動しているものをいう。郷町,町分,町場,在町,町村などの名称をもつ場所をさす。…

【慈善事業】より

…貧民への喜捨は修道士の霊的救済のために必要なのであって,その限りで貧民救済が続けられていたにすぎない。 中世ヨーロッパの各地に都市が成立すると,慈善事業に新しい局面が訪れる。都市内に成立した手工業者や商人の兄弟団(組合)がキリスト教の教義に基づいて盲人,啞者,病人などの世話をしたからであり,とくにベギン会やベガルド会などの在俗修道会はこの方面で大きな活動を行っていた。…

【集落】より

…日本で最初に〈集落〉の語を用いたのは新渡戸稲造の《農業本論》(1898)で,農業経営の立場から農村の集落形として疎居・密居のあることを述べている。そして〈集落〉が現在のように都市・村落を含めた人類居住の意に用いられるのは,ヨーロッパの集落地理学が紹介されて以降,1921年前後からである。最近では農林業センサスでも〈農業集落〉の用語が用いられるようになった。…

【プラ】より

…サンスクリットで〈都市〉を意味する語。《リグ・ベーダ》の時代には,アーリヤ人が遭遇した先住民の拠っていた〈城塞〉を意味した。…

【文明】より

…文明の語civilizationがラテン語の市民civisや都市civitasに由来するように,とくに都市の文化をさすことが多いが,19世紀の末に〈文化〉を最初に定義したE.B.タイラーは,〈文明〉と〈文化〉を同一視している。プラトン,アリストテレス,T.ホッブズなどは〈文明〉と〈社会〉を同一視し,文明以前を無秩序な状態(自然状態)と考えた。…

【夜警】より

…中世には,すでにカール大帝が自由人に一般の軍役のほかに夜間の見張りを義務づけている。国の秩序の維持と都市や城塞の警備,帝国国境の警備が主たる内容で,遠征に赴くことのできない貧しい人々にも夜警の義務が課されていた。のちには塔守が現れたが,それは戦時の警備だけでなく,城の安全と平和を守るために配備されたものであった。…

【ヨーロッパ】より

…そのため船舶による河口からの遡行距離がきわめて長く,河川による交通は陸路をしのぐものがあった。古代の沿海文化が中世の内陸文化に移行しても,河川に沿った無数の中世都市が交易の拠点となりえたのである。
[人文地理的概念――三つの地域]
 次に人文ないし歴史地理学的に考えてみると,ヨーロッパは大きく分けて次の三つの地域にまとめることができる。…

※「都市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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