精選版 日本国語大辞典 「山手」の意味・読み・例文・類語
やま‐の‐て【山手】
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都市が台地と低地にまたがって成立する場合,低地の下町(したまち)に対して台地部を〈山の方〉という意味で山手という。東京では〈やまのて〉,横浜や神戸では〈やまて〉という。東京の山手は武蔵野台地東端にあたる山手台地(本郷台,淀橋台)を指すが,その西限は1885年の日本鉄道赤羽~新宿~品川間(現,JR山手線,埼京線の一部)が開通して,その路線の内側が目安となった。山手台地は標高20~35m,低地部との比高は大部分が10~20mで,主として神田川水系と古川水系の谷が樹枝状の谷を刻んでいる。
すでに井原西鶴の《好色一代男》(1682)に,吉原の太夫よし田を寵愛した〈山の手のさるお方〉とあり,山手のほとんどは大名や旗本の武家屋敷と寺社で占められ,町家は少なかった。〈当世はやり言葉といふ,御旗本山の手筋より出る也〉(《紫のひともと》1683)といわれるように,通人もあらわれた。また下町の庶民にとっては,〈いっそ飛鳥山へ花見に行,山の手者の女を見よふ〉(洒落本《風流仙婦伝》1780)とうつる存在であった。明治初期の山手は,武家屋敷の荒廃で一時期桑畑や茶畑と化したが,中期以後,〈貴顕紳士の邸宅〉(《日本名勝地誌》)が立ち並ぶようになった。その後大正年代まで続く山手の宅地化は,関東大震災と第2次大戦の戦災を契機にその範囲を広げ,やがて目黒,渋谷,中野,杉並,世田谷も〈山手〉と呼ばれるようになった。
→下町
執筆者:小木 新造
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…広義には都市の低いほうにある町をいうことばで,高台を指す山手の対語である。東京(江戸)では京橋,日本橋から神田,下谷,浅草方面に町家が多く,人口の密集した地域が低地にあったことから,狭義にはこの地域を指す。…
… 廃藩置県後,政府や東京府は旧諸藩邸を接収して官・軍用地にあて,また富国強兵・殖産興業の方針のもとで官営工場を設立するとともに,陸・海軍省所管の軍事工場や軍事施設も設置していった。他方,近代都市をめざして鉄道網も整備され,83年には現東北本線の一部が開業して上野が東北方面への玄関となり,85年には東海道本線との連絡を目的として現山手線の一部が開業,1925年に環状運転されるようになった。市街地改造論や築港問題も政府や東京府関係者の間で検討され,そうした動きは,1888年以降の東京市区改正事業として,道路(鉄道馬車の普及に伴う道路の舗装と拡張),水道(木管水道から鉄管水道への改良)の整備に結びついた。…
※「山手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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