沼
ぬま
湖沼のうち水深がおよそ5メートル以下で、湖心部においても沈水植物が繁茂する水域。沼よりさらに浅く、最大水深が2~3メートル以下で、全体が抽水(ちゅうすい)植物におおわれた水域は沼沢(しょうたく)とよぶ。なお、抽水植物とは、水面上に茎や葉をのばすヨシやガマなどをいう。
固有名詞としての「沼」の呼び名は、この分類と一致しない場合が少なくない。たとえば、群馬県の尾瀬沼(おぜぬま)(水深9.5メートル)と菅沼(すげぬま)(水深75メートル)など、沼の名がつけられた湖がある。福島県沼沢湖(ぬまざわこ)(水深96メートル)は、歴史的に沼沢沼(ぬまざわぬま)とよばれてきた。
[新井 正]
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ぬま【沼】
〘名〙 一般に、深さ五メートル以下で底は
泥ぶかく、クロモ・
フサモなどの沈水沿岸植物が生えている、規模の小さい湖沼をいう。湖とは厳密には区別されていない。ぬ。
※
古事記(712)中「
新羅の国に一つの沼
(ぬま)有り、名をば阿具奴摩
(ヌマ)と謂ふ」
[語誌]
上代には、沼を指す語として
ヌマのほかにヌも用いられていた。しかし、ヌマが
挙例のように
単独でも用いられたのに対し、ヌは、「
隠沼乃
(こもりぬノ)」〔
万葉‐二〇一〕や「隠有小沼乃
(こもりぬノ)」〔万葉‐三〇二二〕のように、ほとんどが複合語中に見られるところから、ヌはヌマの古い語形と考えられる。
ぬ【沼】
〘名〙 ぬま。多く、他の語に付いて複合語を作る。「こもりぬ」「おぬ」など。
※金剛般若経讚述嘉祥四年点(851)「猶し
汎べる
舟の、東に邁ぐるときに、凝れる沼
(ヌ)を、西に流ると矚たるが如く」
[
補注]「大般若経字抄」「書陵部本名義抄」などでは、「沼」にヌ
ウの
訓をあげている。「書陵部本名義抄」では、ヌに平声、ウに上声の点を付しており、院政期頃には上昇調にヌウと発音されていたと思われる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
沼
ぬま
swamp
水深が1~5mで,いたるところに沈水植物が繁茂している湖沼。湖沼は時間の経過とともに,その姿を変えていく。この変化は非常にゆるやかなものであるが,その主要な作用は湖沼の埋積による。その結果,湖→沼→沼沢と変化して,終局的には湿地から草原となる。沼沢はこの変化の過程で開水面のある最後の段階と考えられる。 (→湖沼 )
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デジタル大辞泉
「沼」の意味・読み・例文・類語
ぬ【▽沼】
ぬま。多く複合語として用いる。「隠り沼」
「行くへなみ隠れる小―の下思ひに我れそ物思ふこのころの間」〈万・三〇二二〉
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沼【ぬま】
湖よりも浅く深さ1〜5mくらいで,沈水植物(エビモ,フサモのように葉,茎が水中にある)が繁茂するもの。もっと浅くなると沼沢(しょうたく)といい,抽水(挺水(ていすい))植物(ヨシ,マコモなど)が繁茂するようになる。
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世界大百科事典内の沼の言及
【湖沼】より
…湖沼とは,海と直接にはつながらず,陸地に囲まれた盆地内に水をたたえた半閉鎖的な静水塊を指す。静水塊とは,河川など水の流動がきわめて大きな水塊に対する言葉である。…
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