沢
さわ
山地斜面を刻み込んでいる小さな谷で、尾根に対する語。普段は多少湿っている程度で、雨が降ったときだけ水流がみられる。地方によってはかなり大きな谷でも沢とよぶことがある。恒常的に水が流れていても沢とよぶ場合があり、沢、谷、川などはそれほど厳密に区別して用いられていない。谷川岳の一ノ倉沢、マチガ沢、北穂高岳の涸沢(からさわ)などのように登山ルートとして稜線(りょうせん)沿いのコースよりも有名になっている所もある。水面や湿地を沢とよぶこともあり、沼沢地という場合がこれに相当する。
[髙山茂美]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
さわ さは【沢】
〘名〙
① 浅く水がたまり、草の生えている湿地。水草の生えている地。
※
書紀(720)雄略二年一〇月(前田本訓)「遂に従
(めく)りて林泉に憩
(いこ)ふて藪沢
(やふサハ)に相羊
(もとほりあそ)ひて」
② 山間の谷。また、そこを流れる水。渓流。谷川。
※万葉(8C後)一四・三三五八「さ寝(ぬ)らくは玉の緒ばかり恋ふらくは富士の高嶺の鳴る佐波(サハ)のごと」
たく【沢】
〘名〙
① 低くて草がしげっている湿地。さわ。野地
(やち)。〔
春秋左伝‐宣公一二年〕
② うるおっていること。また、たくさんあること。潤沢。〔易経‐夬卦〕
※江戸繁昌記(1832‐36)二「豈に昌平の沢ならずや」 〔書経‐畢命〕
④ つや。ひかり。光沢。〔春秋左伝‐襄公二八年〕
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デジタル大辞泉
「沢」の意味・読み・例文・類語
たく【沢】
めぐみ。恩恵。恩沢。
「海内久しく穏かにして人民泰平の―を楽みたりしかども」〈田口・日本開化小史〉
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世界大百科事典内の沢の言及
【髪油】より
…現代では狭義にはヘアオイル,香油であるが,広義にはヘアクリーム,ポマード,チック,ヘアリキッドなどもいう。中国では古くから,ゴマ油やクルミ油を綿にしみ込ませて広口の壺に入れた髪油を,沢(たく)とよんでいた。日本でも奈良時代以降,沢を阿布良和太(あふらわた)とよんでいたことが《和名抄》にみえる。…
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