嘆・歎(読み)なげく

精選版 日本国語大辞典 「嘆・歎」の意味・読み・例文・類語

なげ・く【嘆・歎】

[1] 〘自カ四〙
① 気持が満たされないで、ため息をつく。嘆息する。
書紀(720)継体七年九月・歌謡「つぬさはふ 磐余(いはれ)の池の 水下(みなした)ふ 魚も 上に出て那皚矩(ナゲク)
② かなしみにひたる。かなしんで泣く。悲嘆する。
※書紀(720)斉明四年五月・歌謡「今城なる 小山が上に 雲だにも しるくし立たば 何か那皚柯(ナゲカ)む」
蜻蛉(974頃)上「なげきつつひとりぬる夜の明くるまはいかにひさしきものとかは知る」
[2] 〘他カ五(四)〙
① (ある物事を)かなしく思う。現状を腹立たしく思って恨みかなしむ。「最近の世相をなげく」
伊勢物語(10C前)九一月日のゆくをさへなげくをとこ」
徒然草(1331頃)二六「白き糸の染まん事を悲しび、路のちまたのわかれん事をなげく人もありけんかし」
② 実現しにくいことを、そうしてほしい、また、そうしたいと切に願う。嘆願する。哀願する。
万葉(8C後)一三・三二四一「天地を歎(なげき)乞ひ祷(の)みさきくあらばまた還り見む志賀の韓埼」
浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一「『最期対面を仕度(つかまつりたき)』むね思ひ入てなげきしかば、情ある山名にて暫の対面をゆるし」

なげき【嘆・歎】

〘名〙 (動詞「なげく(嘆)」の連用形名詞化)
① 思いどおりにならなかったり、感嘆したりして、ため息をつくこと。嘆息。
※万葉(8C後)七・一三八三「名毛伎(なけキ)せば人知りぬべみ山川のたぎつ情(こころ)をせかへてあるかも」
② かなしみに浸ること。かなしく思うこと。悲嘆。
平家(13C前)一二「母が悲しみ、めのとがなげき、たとへんかたぞなかりける」
③ 切に願うこと。嘆願。
曾我物語(南北朝頃)三「一門はせあつまり、御不審のなげきを申あげ候べし」

たん【嘆・歎】

〘名〙 (物に感じて、長くためいきをつく、の意)
① 声に出してなげくこと。ためいきをはくこと。なげき。うめき。嘆息。
菅家文草(900頃)四「白毛歎」
侏儒言葉(1923‐27)〈芥川龍之介〉椎の葉「生涯同一の歎を繰り返すことに倦まないのは滑稽であると共に不道徳である」
② ほめること。
※勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章「拠此三徳歎者、法身是万徳之正体」

たん‐・ずる【嘆・歎】

〘他サ変〙 たん・ず 〘他サ変〙
① なげく。うれいかなしむ。また、なげき憤る。
※史記抄(1477)一六「先づ書をうちおいて、嘆するぞ」
※読本・椿説弓張月(1807‐11)残「義経その身の薄命を嘆(タン)ずるのあまり」
② ほめる。感心する。賛嘆する。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)三「このときに、疲極の衆、こころおほきに歓喜して、未曾有なりと歎(タン)(〈注〉ホム)す」

たん・じる【嘆・歎】

〘他ザ上一〙 (サ変動詞「たんずる(嘆)」の上一段化したもの) =たんずる(嘆)

たん‐・ず【嘆・歎】

〘他サ変〙 ⇒たんずる(嘆)

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