デジタル大辞泉
「蜻蛉」の意味・読み・例文・類語
とんぼ【蜻=蛉/蜻=蜓】
1 トンボ目の昆虫の総称。頭部の複眼は大きく左右に突出し、単眼は3個ある。触角は短く、かむ口をもつ。胸部には長大な2対の翅をもつ。腹部は長く棒状。幼虫は水生で、ヤゴとよばれる。成虫・幼虫ともに他の昆虫を捕食する。不完全変態。イトトンボ・サナエトンボ・オニヤンマ・アキアカネ・シオカラトンボなど。あきつ。かげろう。せいれい。とんぼう。《季 秋》「とどまればあたりにふゆる―かな/汀女」
2 トビウオの別名。とんぼうお。
3 歌舞伎で、役者が立ち回り中に切られたり投げられたりしたときなどに、手をつかずに宙返りすること。とんぼがえり。「―を切る」
4 印刷で、刷り位置を正確にするために版や原稿につける十文字の印。
5 運動場を整地する道具の通称。木製・金属製の丁字形の棒で、地面をならして平坦にする。形状が1に似ることによる呼び名。
6 「蜻蛉結び」の略。
7 「蜻蛉持ち」の略。
[補説]作品名別項。→蜻蛉
[類語]とんぼ返り・もんどり・宙返り・でんぐり返る
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
とんぼう とんばう【蜻蛉】
〘名〙 (「とうぼう(蜻蛉)」の変化した語)
※康頼本草(1379‐91頃)本草虫部下品集「蜻蛉 和止ム波宇」
※花屋抄(1594)「かげろう三色有。一つはとんばうの
かたちしてはねの色みの色」
※滑稽本・狂文棒歌撰(1785)「
海道にて大兵を乗る
駕籠をとんぼうと云」
※
浄瑠璃・国性爺後日合戦(1717)嫁入式三献「間にもたらぬとんぼうめ」
※浄瑠璃・
志賀の
敵討(1776)「髪も美しう、とんばうも今はやる糸巻じゃな」
[
補注]語源未詳で、歴史的
かなづかいも明確ではないが、室町時代までの表記が「とうぼう(蜻蛉)」の例を含めて、「とんばう」「とうばう」のように「ばう」であって「ぼう」でないところから「とんばう」としておく。なお、「とばふ」に「う」音が添って「とうばふ」「とんばふ」となったとする説もある。
せい‐れい【蜻蛉】
〘名〙 昆虫「
とんぼ(蜻蛉)」の漢名。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※廃園(1909)〈三木露風〉廃園「色青くきらめける蜻蛉(セイレイ)ひとつ」 〔戦国策‐楚策・頃襄王〕
えんば ゑんば【蜻蛉】
[補注]「十巻本和名抄‐八」に「赤卒 〈略〉阿加恵无波」また「
胡黎〈略〉歧恵无波」とある。
とうぼう とうばう【蜻蛉】
※
梁塵秘抄(1179頃)二「居よ居よとうばうよ、かたしをまいらんさて居たれ」
あけず あけづ【蜻蛉】
〘名〙 (「あきつ」の変化した語か) トンボをいう。
※混効験集(1711)上「あけづ、蜻蛉の事、和詞にはあきづと云」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
蜻蛉 (トンボ)
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
世界大百科事典内の蜻蛉の言及
【トンボ(蜻蛉)】より
…【朝比奈 正二郎】
【伝承と民俗】
[日本]
古くは〈あきづ〉と呼ばれ,日本の国土を〈あきづしま〉という。神武紀に,天皇が〈国の状(かたち)を廻(めぐ)らし望〉んで〈蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)の如くにあるかな〉といったので〈秋津洲(あきづしま)〉と呼ぶようになったとある。民間では,初秋に突如として群れをなして飛来するところから,祖霊が姿をかえてやってくるとみてこれをとらえることを忌み,とらえると〈盆と正月礼にこい〉と唱えて放つ風習があった。…
※「蜻蛉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報