精選版 日本国語大辞典 「天地」の意味・読み・例文・類語
てん‐ち【天地】
[1] 〘名〙
① 天と地。あめつち。天壌。また、天の神と地の神。
※大仏殿西曼荼羅銘(756)「等二日月一而貞明、同二天地一而長久」
※源氏(1001‐14頃)明石「ここら、横ざまなる波風には、おぼほれ給はむ。天地、ことわり給へ」 〔礼記‐曲礼〕
② 宇宙。世界。世の中。
※太平記(14C後)二九「三間芳屋千株松風、ことに人間の外の天地也けりと」
③ ある限られた生活の場を比喩的にいう。
※油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉一「下宿屋秋元の二階を、登って左りへ突当りの六畳敷を天地(テンチ)とする」
④ 天と地ほどの大きな差違があること。天地の相違。天地懸隔。
※蔭凉軒日録‐延徳二年(1490)閏八月一七日「月翁事者、西山与二東京一相隔天地也」
⑤ 紙、本、荷物などの上部と下部。うえした。
※洒落本・通言総籬(1787)一「ひゃうぐもようござりやした。天地はやっぱりふとじけだが」
⑥ (━する) 上下をひっくりかえすこと。
※滑稽本・早変胸機関(1810)「裾廻しは天地(テンチ)するだよ」
⑦ 算盤の桁より上の玉が一個ある所(天)と、その下の玉が五個ある所(地)。江戸時代、上方でいった語。
※新板なぞづくし(1830‐44)五「天地の大算用(とかけて)あづさみこ(ととく心は)くちをよせる」
⑧ 雑俳の折込みの一種で、同一の漢字を頭と尾に置くもの。たとえば、「戸」の題で、「戸袋は戸隠山か引く雨戸」の類。
[2] 「てんちまる(天地丸)」の略。
※雑俳・柳多留‐六六(1814)「和歌のみか天地の動く御船唄」
あめ‐つち【天地】
〘名〙
① 天と地。乾坤(けんこん)。宇宙、世界の全体。
※万葉(8C後)五・八一四「阿米都知(アメツチ)の共に久しく言ひ継げとこの奇御魂(くしみたま)敷かしけらしも」
② 天の神と地の神。天地の神。天神地祇。
※万葉(8C後)二〇・四四八七「いざ子どもたはわざなせそ天地(あめつち)の固めし国そやまと島根は」
※古今(905‐914)仮名序「ちからをもいれずして、あめつちをうごかし、めに見えぬ鬼神をも、あはれとおもはせ」
③ 「あめつち(天地)の詞(ことば)」の略。
※口遊(970)書籍門「大為爾伊天奈徒武和礼遠曾〈略〉衣不禰加計奴 謂之供名文字、今案世俗誦阿女都千保之曾、里女之訛説也、此誦為勝」
④ 天地の詞を書くのに主として用いた字体の意か。万葉がな字体とも、行書体ともいわれ、諸説がある。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「青き色紙に書きて松に書きたるはさうにてなつの字。赤き色紙に書きて卯の花につけたるはかな。はじめにはをとこにてもあらず、をんなにてもあらず、あめつちぞ。そのつぎにをとこで、はなちがきに書きて」
あめ‐つし【天地】
〘名〙 「あめつち(天地)」にあたる上代東国方言。
※万葉(8C後)二〇・四三九二「阿米都之(アメツシ)のいづれの神を祈らばかうつくし母にまたこととはむ」
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