日本大百科全書(ニッポニカ) 「香料」の意味・わかりやすい解説
香料
こうりょう
perfume
芳香を有し、人間の日常生活に役だつ有益な有香物質を香料という。芳香と悪臭の境界はあいまいであり、また個人差も大きいため、香料の定義も不完全ではあるが、香料の品種は慣習的に定まっている。
人間は快適な芳香を求め、それを生活に利用し、情緒を豊かにした。天然に存在する天然香料だけでは人間の欲求を満足させることができないので、調合香料や合成香料が大きく進歩した。香料に使用される有機化合物は常温で揮発性を有し、その種類は約500種ほどになる。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
起源と歴史
香料の語源はラテン語per fumum(薫(くん)ずる)である。このことは、香りが初め主として「薫香」として用いられたことを意味する。古代民族は乳香、没薬(もつやく)(ミルラ、天然樹脂の一つ)、白檀(びゃくだん)、肉桂(にっけい)、甘松(かんしょう)などを香料として用いた。香料は宗教的儀式から日常生活のなかに取り入れられていった。
人類が香料を用い始めた時期は、およそ紀元前2600年以上も前にさかのぼるといわれている。昔から、人間の自然な感情として、嫌なにおいは邪悪なもの、さわやかなにおいは善であるとされてきた。においのよい植物の葉、花、樹脂を香水や薬として用い、ミイラをつくるときや宗教的な儀式に香油として、また悪霊や悪魔、害虫、伝染病、毒蛇などを追い払うための薫香用香料として用いていた。したがって、当時は香水perfume、薫香incense、香辛料spice、香油aromatic oil、精油essential oilなどの区別は明らかではなく、においのよいもの、すなわち香料と考えられていた。この時代に用いられていた香料は、没薬myrrh、乳香frankincense、デリアムbdellium、バルサムbalsam、シナモン、カシア、クミン、アニス、マージョラム、キャラウェー、コリアンダー、フェネル、カルダモン、ゴマ、サフラン、オニオン、ガーリックなどである。これらのうち、没薬、乳香、デリアム、バルサムは、灌木(かんぼく)の樹皮を傷つけて浸出させた樹脂である。そのほかは芳香植物の花、葉、種子、樹皮、根などで、食品の風味づけに使われるようになっていった。
これらの香料物質について、聖書に出てくる最初の記述は『旧約聖書』「創世記」第2章の、「そして、あの国の金はすばらしい。デリアムあり、縞瑪瑙(しまめのう)もある」である。このデリアムは、高価な没薬にかわる安価な香料として、古代エジプトの女性は小袋に入れて持ち歩いていたという。また、「歴代志・下」第16章第14節には、アサ王の埋葬儀式に芳香植物の薫香が用いられたことが記されている。前1550年に書かれた珍しい医学書『エバース古文書』Ebers-papyrusのなかには、現在食品調味に使われている多くの香辛料が、医薬品として列挙されている。これらの記述から、古代エジプト人は医薬品、化粧品、香水、香油、薫香、調理に、とりわけミイラをつくるのに、これらの芳香性の植物を用いていたことがわかる。
前2000年からの1000年間、アラビア・フィーリックスArabia Felixは、独占的貿易地として東洋と西洋の間の貿易を仲介し、香料の製造からも莫大(ばくだい)な利益をあげていた。とくに乳香は、南アラビアのハドラマウトやドーファーの谷に生育する灌木ボズベリアの樹脂からつくられる半透明こはく色のもので、火に入れると心地よい香りを放つ香料として珍重されていた。この香料は香料の道Incense Routeを通ってエジプトに運ばれていた。没薬を採取する木も元来エジプトには生育しないものである。前1485年、エジプト第18王朝のハトシェプスト女王は、5隻の帆船を連ねてテーベを出発してプント(現在のソマリア)に行き、象牙(ぞうげ)、黒檀(こくたん)、金、銀、シナモン、化粧品、ヒョウの皮、サル、ヒヒ、イヌなどとともに31本の没薬の木を持ち帰った話は有名である。シナモンやカシアなどの交易はもっぱらアラビア商人によって独占され、産地は秘密にされていたため、古代ギリシア・ローマの人々は高価な香料を買わされていたが、やがてギリシアのアレクサンドロス大王がエジプトを占領し、アジア、アフリカ、ヨーロッパ3大陸の交易の中心地として前332年にアレクサンドリア港を設けてからは、インドやインドネシアのモルッカ諸島の香料、香辛料がしだいにヨーロッパで消費されるようになり、普及していった。歴史上、香料をもっともぜいたくに使った民族はローマ人だといわれている。香をたいたり、化粧品として使ったり、香辛料を用いた料理を多くくふうし、また香辛料で香味づけしたワインもローマ人がつくりあげている。
ムハンマド(マホメット)を開祖とするアラビアのイスラム教徒たちは、ムハンマドの死後4世紀の間、豊かな文明を世界中に広げ、また貿易や商売で利益をほしいままにしていたが、科学者としても優れていた。とくに冷油脂法によって、においのよい花や種子、葉から香りの精を抽出する方法を考え出し、芳香植物から精油をとる蒸留技術もいくつか完成させている。したがって、食品香料の発祥はこの時代であろうと考えられている。その後、マルコ・ポーロの『東方見聞録』に刺激されたヨーロッパの人々による海洋冒険時代が始まり、香料の貿易もしだいにヨーロッパ人の手に移るようになった。コロンブスのアメリカ大陸発見によって、バニラ、ココア、レッドペパーなどの新しい食品香料も紹介されていった。
16世紀になりフランスでは花精油抽出工業が生まれ、19世紀には有機化学の進歩が香料工業を発展させた。1852年、英仏博覧会に初めてニトロベンゼンがミルバン油の名で出品されたことは特筆に値する。
香料の需要が増大し、天然香料のみでは需要に応じきれないので、合成香料が出現することになる。天然香料の香気成分の化学構造が確認され、これらを石炭タール成分や石油化学製品から化学反応により合成する技術が確立された。そこで、天然香料や合成香料を調合して思いのままの香気を創造しうる時代となった。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
分類
香料はその原料または製法によって天然香料と、広義の合成香料とに大別される。天然香料には動物性、植物性香料があり、広義の合成香料は単離香料と、合成香料に分けられる。合成香料は化学構造上から、ベンゼン系、テルペン系合成香料に大別され、それらのなかには単離香料の香気成分とは異なるが、類似の香気を有する化合物もある。
天然香料および広義の合成香料は、単独で用いても効果がない。実際には、これらをブレンドした調合香料として用いる。調合香料は、用途によって香粧品香料と食品香料に分けられる。普通には、調合香料といえば香粧品香料のことである。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
動物性香料
動物性香料は数は少ないが、高貴な香料として珍重された。じゃ香(ムスク)、霊猫(れいびょう)香(シベット)、竜涎(りゅうぜん)香(アンバーグリス)、海狸(うみだぬき)香(カストリウム)、じゃ香鼠(ねずみ)(ムスク・チバタ)などである。いずれも保留剤として重要である。じゃ香は、チベット、雲南、ネパールの山岳地帯に生息するジャコウジカの牡(おす)の生殖腺(せん)分泌物であり、そのままでは不快臭であるが、アルコールで希釈すると佳香となる。香気成分はムスコンという大環状ケトンであり、調合香料として賞用されてきた。霊猫香は、アフリカ、南アメリカ、東南アジアに生息するジャコウネコの分泌物であり、香気成分はシベトンという大環状ケトンである。竜涎香はマッコウクジラの排泄(はいせつ)物であり、香気成分はアンブレインというトリテルペン化合物である。そのままではほとんど香気を感じないが、保留剤として優れている。海狸香はウミダヌキ(ビーバー)の肛門(こうもん)にある香嚢(こうのう)である。香気成分の本体はまだ不明である。ジャコウネズミは北アメリカの沼沢地帯に生息する。その腺嚢より得られる脂肪性液状物がじゃ香鼠である。香気成分は大環状ケトンである。これらの香料はいずれも生産量が少なく高価である。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
植物性香料
天然香料のほとんどは植物性香料であり、ローズ油、オレンジ油などのように植物の枝葉、花などから得られる精油である。精油は水蒸気蒸留によって留出し、揮発性であり、成分はテルペン化合物が主体をなしている。植物性香料は1500種以上もあるが、香料として取引されている品種は約150種といわれている。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
単離香料
多成分の複雑な混合体である植物精油から、工業的に利用価値があり、調合香料の素材として多量に用いられる成分を単離したものである。たとえば、バラの香気を有するゲラニオール、シトロネロール(シトロネラ油から分離)、l-メントール(はっか取卸油(とりおろしゆ)から冷却法により分離)などが代表的なものである。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
合成香料
石油化学製品、石炭タール製品、テルペン化合物などを原料として各種の化学反応を用いて合成されたものである。工業的に大量生産されているものは約320種である。合成香料は、その本質から次の二つに分類される。
〔1〕天然香料の成分を分析することによって、その化学構造を解明し、それとまったく同じ構造の化合物を工業原料から化学反応によって合成した香料。たとえば、合成l-メントール、合成樟脳(しょうのう)、クマリン、シトラール、桂皮アルデヒド(シンナムアルデヒドあるいはシンナミックアルデヒドともいう)などがそうである。この系列の合成香料が大部分を占めている。
〔2〕天然香料の成分としては存在していないが、香気が類似している化合物、調合に有用な特色ある香気を有する化合物。たとえば、人造ムスク、α-アミルシンナミックアルデヒド(ジャスミン様香気)などがある。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
植物性香料の製法
植物性香料は植物の枝葉、根茎、木皮、樹幹、果実、花、樹脂などから得られる植物精油が主体。植物精油は一般に水より軽く、揮発性で、主成分はテルペン化合物である。植物性香料の重要な製法は、〔1〕水蒸気蒸留法、〔2〕圧搾法、〔3〕抽出法の三つである。
〔1〕水蒸気蒸留法 水蒸気の熱によって香気成分が変化しないものには広く使用されている。採油しようとする植物の各部分を釜(かま)に詰めて水蒸気を吹き込んで蒸留し、凝縮水より精油を分離する方法である。
〔2〕圧搾法 オレンジ、レモン、ベルガモットなど柑橘(かんきつ)類の果皮には油房があり、その中に精油が含まれているから、圧搾するか、傷をつけることで精油が得られる。果肉と分けた果皮をローラーで圧搾する方法は、果実の洗浄、果皮の分離、圧搾などすべて自動機械化された。
〔3〕抽出法 花の香気成分が熱によって変質し、また水に溶けるので、水蒸気蒸留より低温度で、水を使用しないで香気成分を取り出すためには適当である。抽出法には、(1)油脂吸着法、(2)溶剤抽出法、(3)液化ガス抽出法がある。
(1)油脂吸着法 油脂類が香気を吸収する性質を利用して、精製した無臭の牛脂、豚脂、両者の混合脂またはオリーブ油に花の香気を吸着させる。花を油脂に浸して60~70℃に加温する方法を温浸法といい、室温で油脂塗布面に花を散布して花の香気を吸着させる方法を冷浸法という。花の香気を抽出するには冷浸法が理想的であるが、人力と複雑な操作を必要とする。花の香気を飽和させた油脂をアルコール抽出し、低温でアルコールを留去すると花精油が得られる。これは絶対花精油とよばれる最高品である。現在でもチュベロースはこの方法でつくられている。
(2)溶剤抽出法 石油エーテル、ヘキサン、ベンゼンなどの有機溶剤により花の香気を抽出する方法であり、大量処理に適している。今日ではローズ、ジャスミン、ミモザなどの花精油はこの方法で製造されている。花と精製溶剤とを抽出釜に仕込み、室温で攪拌(かくはん)して花の香気を溶剤に移行させたのち、廃花を取り除き、低温で溶剤を留去すると、軟膏(なんこう)状のコンクリートが得られる。これをアルコール抽出して、低温でアルコールを留去すれば花精油が得られる。
(3)液化ガス抽出法 プロパン、ブタンなどの低級炭化水素を用い、特殊な装置で花の香気を抽出する新しい方法である。溶剤抽出法では溶剤の除去に加熱が必要であるが、本法は低温で抽出できる点が優れている。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
単離香料の分離法
植物精油は多くの成分が複雑に混合しているので、含有されている主成分のみを分離して単離香料として使用している。分離する方法には、〔1〕蒸留法、〔2〕冷凍分離法、〔3〕化学処理法の三つがある。
〔1〕蒸留法 精油の脱色・不揮発性不純物の除去を目的とした精製は、常圧蒸留・水蒸気蒸留を行えばよいが、含有されている主成分を高純度に単離するには分留塔を用いた分別蒸留を行う必要がある。しかし、精油成分は一般に熱に不安定なので、減圧分別蒸留法が適している。
〔2〕冷凍分離法 抽出法で得た花精油中の花蝋(かろう)分やタンパク質を低温度に冷却して固化させて除去し、また樟脳油中の樟脳、はっか取卸油中のl-メントールの分離には本法が適している。
〔3〕化学処理法 精油成分中には特定の官能基をもつ化合物があるので、それに特定の試薬を加えて化学反応をおこさせ、生成物の特性を利用して単離する方法である。シトロネラ油中のシトロネラールを亜硫酸付加体として分離する方法は代表的な例である。
単離香料としてゲラニオール、リナロール、シトロネロール、l-メントール、樟脳、シネオール、サフロールなどが重要である。シトロネラ油から単離したゲラニオール、シトロネロールはバラの香気を有し、バラ油調合香料の原料として重要である。樟脳白油の主成分であるシネオールは人造ユーカリ油の原料となり、樟脳赤油の主成分であるサフロールはヘリオトロピンの原料として用いられる。単離香料は調合香料原料であって、単独に用いられることは少ない。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
合成香料の製法
合成香料は、精油、石油化学製品などを出発原料として化学的に合成したものである。現在、香料として使用されている合成香料は3000種という多種類に上っている。このように多数の化合物であるから、その合成にはあらゆる有用な有材合成反応および分離・精製手段が駆使されている。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
ベンゼン系合成香料
ベンゼン系合成香料は、コールタールや石油化学製品を出発原料として全合成される。代表的な例について記述する。アニスアルデヒドはアニス油の主成分であり、花精油の調合に重要である。これはp(パラ)-クレゾールから全合成される。クマリンは南米ギアナ産トンカ豆の香気成分であり、桜餅(さくらもち)の葉や枯れ草様香気を有し、香粧品香料として重要である。これはp-クレゾールから全合成される。シンナミックアルデヒドはシナモン皮油の主成分で食品香料として重要である。これはベンズアルデヒドとアセトアルデヒドを縮合させて製造する。バニリンはバニラ特有の甘味ある芳香を有し、食品香料としてもっとも重要である。フェニルエチルアルコールはローズ油の主成分で、バラの香気を有しローズ系調合香料として用いられる。スチレンから製造される。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
テルペン系合成香料
従来、精油からの単離香料を加工して製造されてきたが、テルペン系合成香料の消費量増大に伴いこれらを合成するようになった。ゲラニオールは調合香料として重要なばかりでなく、ビタミンE、ビタミンAなど医薬品原料としても重要である。石油化学製品であるイソプレンを出発原料として大量に生産されている。シトラールはレモン様の快香を有し大部分はヨノンの製造原料である。シトロネロールは調合香料として広く利用される。ボルネオールは合成樟脳製造の中間体として安価に入手され、せっけん香料として利用される。メントールははっか油の主成分で、チューインガム、歯磨きなどに添加し、清涼感を高める効果をもつ。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
香気が類似した化合物
天然香料から単離した香気成分と化学構造は異なるが、香気が類似した化合物は人造じゃ香およびα-アミルシンナミックアルデヒドやシクラメンアルデヒドなどが重要である。天然じゃ香の香気成分が大環状ケトンであるムスコンであることが発見されてから、多くのムスク香を有する香料が合成された。シクロペンタデカノリッドやエチレンブラシレートはともにムスク香を有し、それぞれ高級せっけんや香粧品の調合香料として広く用いられている。一方、化学構造的には天然じゃ香とまったく関連がないのに、香気がじゃ香に類似しているニトロムスクやインダン系ムスクがある。ムスクキシレン、アンブレットムスクおよびファントリッドなどが合成、市販されている。これらは安価のためせっけん香料として広く用いられる。また、α-アミルシンナミックアルデヒドはジャスミンの香気をもち、ジャスミン系花精油の調合に重要である。p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒドはシクラメンの香気を有し、天然には存在しない。花精油やせっけん香料に重要である。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
食品香料
現在、食品香料と一般によばれているものは、「食品衛生法施行規則」第5条に関してあげられている有機化合物類がこれにあたり、「食品添加物公定書」では着香料として規定分類されている。使用基準は「着香の目的以外に使用してはならない」とあるだけで、使用量に対する規制はない。天然香辛料、薬味、果物、花、葉茎、根茎、種子、およびこれらからにおいの精を抽出してアルコール類に溶解したエッセンス類、さらにこれらのにおいの成分を化学的に合成した合成香料が着香の目的で使用される場合は、すべて食品香料ということになる。
種類は、前記「食品添加物公定書収載一覧表」に着香料として96種が記載され、また「食品衛生法施行規則」第5条に関しての着香料は、有機化合物群が次にあげる17種類に分類されて記されており、その数は非常に多い。(1)イソチオシアネート類、(2)インドールおよびその誘導体、(3)エーテル類、(4)ケトン類、(5)脂肪酸類、(6)脂肪族高級アルコール類、(7)脂肪族高級アルデヒド類、(8)脂肪族高級炭化水素類、(9)チオアルコール類、(10)チオエーテル類、(11)テルペン系炭化水素類、(12)フェノールエーテル類、(13)フェノール類、(14)フルフラールおよびその誘導体、(15)芳香族アルコール類、(16)芳香族アルデヒド類、(17)ラクトン類となっている。これらは単体として使われるより、各種のものを混ぜ合わせ、調合香料として使用されることが多い。使用に際しては、食品の形態、調理加工、料理目的にあうように加工されており、天然ガム質で乳化させ、噴霧乾燥したコーティング香料、食塩やデキストリンなどに吸着させたソリュブル香料、乳化剤で均一に分散させた乳化香料、アルコールや植物油などに溶解させたエッセンス、チンキなどとして使われている。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
香料工業
香料工業は、香料そのもの、あるいは調合して香りを創造し、せっけん、香粧品そのほか香気を必要とするものに供給する工業である。精油工業(天然物から香料を採取する工業)、合成香料工業、調合、に分けられる。合成香料は単離香料と同様に単味で用いることは少なく、天然香料に近い香気を得るために調合して利用する。数百種類にも及ぶ各種香料を基礎として、幻想的な香りをさえつくりだすことが可能となってきた。まさに「においの芸術」といえよう。合成・調合技術の進歩とともに、新しいタイプの香料合成の方法が開発されつつある。
[佐藤菊正・齋藤 浩]
『藤巻正生他編『香料の事典』(1980・朝倉書店)』