調味料(読み)ちょうみりょう

精選版 日本国語大辞典 「調味料」の意味・読み・例文・類語

ちょうみ‐りょう テウミレウ【調味料】

〘名〙 料理や食品に味や香りをつけるために用いる塩・味噌・醤油・酢などをいう。また、胡椒・山椒などの香辛料を含めていうこともある。〔日本料理通(1930)〕

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デジタル大辞泉 「調味料」の意味・読み・例文・類語

ちょうみ‐りょう〔テウミレウ〕【調味料】

調味に使う材料。砂糖・味噌・醤油・塩・酢など。
うまみ調味料
[類語]化学調味料旨み調味料甘味料香辛料香味料香料スパイス

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「調味料」の意味・わかりやすい解説

調味料
ちょうみりょう

料理の味あるいは素材の持ち味などを調整し、料理全体の味をととのえる働きをするものの総称。食塩、砂糖、酢、しょうゆ、香辛料といったものから、広い範囲では、トマトケチャップウースターソース、油、酒の一部も含めることがある。昆布やかつお節などのうま味成分を含むうま味調味料も調味料の一つとされる。

河野友美・山口米子]

歴史

調味料のなかで、まず自然発生的に使用されたものは食塩であろう。これは味つけだけではなく、人体に必要な重要成分として生命維持に欠かせないものであった。したがって、調味料というはっきりした意識なしに使用されているうちに調味料として独立した可能性が強い。次に古いものは酢と考えられる。これは穀類や果実などが自然に酢酸(さくさん)発酵して得られたものや、柑橘類(かんきつるい)その他の果実中に含まれている酸がそのまま利用されたからである。この酸は塩の味をまるくするのには必要であった。また塩漬け発酵させたものに、酸味を加えると味がまるくなるところから、酸味の利用は古くから行われたと考えられる。また糖類も古くからある調味料である。古代ギリシア・ローマでは養蜂(ようほう)が行われ、蜂蜜(はちみつ)が主たる甘味料であったが、これらは当然料理にも用いられていた可能性が強い。こういった基本的な調味料に対して、加工や、複雑な発酵を必要とする調味料の出現は、かなり後世になる。古代の日本では、醤(ひしお)、未醤(みそ)、豉(くき)といった調味料が醸造されていたが、これらからのちにみそやしょうゆが生まれる。甘味料としては飴(あめ)や甘葛(あまずら)も知られるが、おもに菓子に用いられたようである。また、トマトケチャップやウースターソースなどは材料からみても、中世になってトマトがヨーロッパに入ったのちにできたものである。

[河野友美・山口米子]

種類

基本的な調味料には、前述のように食塩、酢、砂糖および糖類があげられる。酢は発酵させた酢と柑橘など果実の果汁、および合成酢がある。また梅酢も古くから用いられた酢の一つである。糖類では砂糖、ブドウ糖、水飴(みずあめ)、蜂蜜、人工甘味料類がある。しょうゆには大豆などからつくるもののほかに動物性の魚醤(ぎょしょう)(秋田のしょっつる、ベトナムのニョクマン)などがある。みそは、ほとんどが大豆など植物性の原料を用いる。酒類は純粋に調味料として使われるものはみりんであるが、清酒、ワイン、シェリーブランデーなども調味料として使用される。加工調味料としては、ウースターソース、トマトケチャップ、バーベキューソース、マヨネーズなどがある。このほか、植物油などの油脂も調味料として使われることが多い。うま味の調味料としては、日本では昆布、しいたけ、かつお節、煮干し(出しじゃこ)などのだしと、昆布のうま味成分グルタミン酸、かつお節のうま味成分イノシン酸を化学的にナトリウム塩として製造したうま味調味料などがあり、また香辛料も加えれば、調味料の幅はかなり広いものとなる。

[河野友美・山口米子]

調味料の使用上の順序

調味料は、料理によって、使用上好ましい順序のあるものが多い。よくいわれるのは「さしすせそ」で、これは、和風の煮物などの場合、まず砂糖から加え、塩、酢、しょうゆ、みその順に加えることをさしている。砂糖は、いもなどデンプン質のものを煮るとき最初に加えておくと、水分や熱の浸透がよくなり、あとに加える調味料と材料とのなじみをよくする。これがよく浸透してから食塩を加えることは、浸透圧の作用により、材料中の水分が吸い出されることが防止できる。もし最初に食塩を加えると、材料から脱水されたり、あるいは、タンパク質を含むものでは堅く締まったりすることがある。酢は食塩の味をまるくするから、食塩がなじんでから加えるほうがよい。酢は酸味の主体が酢酸で蒸発しやすいため、最初に加えて長く加熱すると酸味分が失われることがある。また、酢は香りがだいじで、これは加えてからあまり加熱すると逃げてしまい、せっかくの風味が減少する。しょうゆも初めに加えるとよい香りが逃げる。また食塩を多く含むため、塩と同様、砂糖よりあとがよい。みそは粘性があり、長く加熱すると粒子が互いに凝集してざらついたり焦げやすいこともあり、香りを生かすためにもあとのほうがよいとされる。

 しかし、これはあくまでも一つの説であり、料理ごとにかなり使用方法に違いがある。たとえばみそは臭み抜きの効力があり、これを利用するためにはみそ煮など早く加えて長く煮たほうがよい。

[河野友美・山口米子]

緩衝作用

調味料には緩衝作用のあるものが多い。これは味を和らげ、料理全体の味をまろやかにする。また、強い調味料をきかしたときも、その味を強烈に感じない場合があるが、これも緩衝作用があるためである。一般に調味料は緩衝作用の強いもののほうが調味効果が大きいといえる。

[河野友美・山口米子]

うま味調味料

うま味調味料はうま味の主成分であるが、それのみで調味料として使用することは、料理の味の幅を狭くする。したがって、他のものと混合して補助的に使用するのがよい方法である。

[河野友美・山口米子]

『河野友美著『調味料の基礎知識 その特質と働き』(1985・家政教育社)』『河野友美編『新・食品事典7 調味料』(1991・真珠書院)』『福場博保・小林彰夫編『調味料・香辛料の事典』(1991・朝倉書店)』『越智宏倫著『光琳テクノブックス13 天然調味料』(1993・光琳)』『リュシアン・ギュイヨ著、池崎一郎・平山弓月・八木尚子訳『香辛料の世界史』(白水社・文庫クセジュ)』

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改訂新版 世界大百科事典 「調味料」の意味・わかりやすい解説

調味料 (ちょうみりょう)

飲食物に味をつけ,調えるために用いる材料。鹹(かん),酸,甘,苦,辛の,いわゆる五味に対応するものといえるが,実際の味はそれらによって付与されるより,はるかに複雑な組成をもっており,だし,ブイヨン,化学調味料などのうまみ料や油脂,酒類,香料はもとより,トマト,タマネギそのほか香味野菜と呼ばれるものなども,味を形成するうえで大きな役割を果たしている。そのため,広義にはそれらをも調味料に含める場合もある。また辛味料は,辛みが味というよりは物理的刺激に近いため,香気を付与する香料とともに香辛料として区別されており,苦味料はカクテルに使うビターやビール醸造におけるホップなどのほかはまず使用されない。すなわち狭義の調味料とは以上を除外したあとの鹹味料,酸味料,甘味料を指すことになる。鹹味料では塩,みそ,しょうゆがおもなもので,ウースターソースなどもこれに含まれる。酸味料には酢,ビネガーのほか,レモン,ライム,ダイダイその他のかんきつ類の果汁が使われ,マヨネーズ,ドレッシングなどもここに分類されよう。甘味料としては砂糖,みりん,あめ,はちみつ,合成甘味料といったものがある。

 世界で最も広く使われている調味料は,塩,酢,砂糖である。東アジア,とくに日本ではみそ,しょうゆといったダイズ原料の発酵調味料がきわめて広範囲に利用されているが,ヨーロッパにはそうしたものがない。これはまずダイズの原産地である東アジアでは古くからその栽培利用が行われていたのに対して,ヨーロッパにはそれがなかったというのが第1の理由である。つぎにヨーロッパでは肉食の比重が大きく,塩とともに香辛料や油脂を多用し,既製の調味料を使わずに肉のうまみを生かす調理法が発達したことによる。また,現在東南アジア一帯に魚を塩漬にして発酵させた魚醬(ぎよしよう)が広く用いられているが,ヨーロッパにはアンチョビーがあるくらいである。しかし,古代ローマにはガルムgarumと呼ぶ魚醬があり,盛んに調理に用いられていたのだが,それも前記のようにいわゆる調理ソースに席を譲ってしまったのである。

《和名抄》巻十六に〈塩梅類〉という個所があるが,この塩梅類というのがどうやら今の調味料の語に相当しそうである。そこに列挙されているのは梅酢,塩,酢,醬(ひしお),煎汁(いろり),未醬(みそ),豉(くき)といったもので,醬と未醬はしょうゆやみその前身,豉は今の浜納豆に近いもの,煎汁はカツオなどの煮出し汁だったようである。これらに甘味料の甘葛(あまずら)とあめを加えると,ほぼ当時の調味料は尽くされる。以上のうち,醬,未醬,豉は宮内省大膳職の醬院でも作られており,平安京の東西の市には塩,醬,未醬,あめを売る店もあった。甘葛やあめはおおむねデザートの調理に用いられたが,他は調理用のほか,酢,塩,醬に酒を加えて〈四種(しす)〉と呼び,小型の土器や銀器に盛って卓上調味料ともされた。ちなみに,調味料を用いての調味を具体的に記した最古の文献は《万葉集》巻十六で,そこには〈醬酢(ひしおす)に蒜(ひる)搗き合(か)てて〉といった表現が見られる。日本人の食生活が大きく変化し始めるのは室町期に入ってからだが,この時期になると中国からの砂糖の輸入がふえて菓子に使われるようになり,後期にはしょうゆが現れてくる。しょうゆは江戸時代に入って急速に普及するが,このすぐれた鹹味調味料の出現によって,日本料理はその独自性を強めつつ,完成の域に達した。万能調味料と呼ばれるように,しょうゆの利用範囲はきわめて広く,現在の日本ではしょうゆなしの食生活は考えられないといってよい。また,室町期までは決してうまい魚ではなかったウナギが,蒲焼という調理法によってきわめて美味なものに転換させられたのも,また味をつけずに供される刺身という料理が日本料理を代表するメニューになったのも,しょうゆあってのことであった。
日本料理
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「調味料」の意味・わかりやすい解説

調味料
ちょうみりょう
flavouring

食べ物に各人の嗜好に合った味をつけ,食事をおいしくさせる材料の総称。料理をつくる際に副材料として用いるものと,料理を食べる際に用いるものとがある。食塩,食酢,砂糖は基本的なものであるが,うまみ料,香辛料など多くのものがこれに属する。うまみ料としてかつお節,こんぶ,しいたけ,煮干しなどの天然調味料のほかに,グルタミン酸ソーダ,イノシン酸ソーダなどの化学調味料も多く用いられる。さらに,味噌,醤油,ソース,カレー粉などの各国独自のものがある。

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栄養・生化学辞典 「調味料」の解説

調味料

 食物に味,香りなどを付与する材料.塩,砂糖,酢,うま味調味料など.

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世界大百科事典(旧版)内の調味料の言及

【中国料理】より

…(1)材料の種類が多く,ごく普通の青菜から珍しいものはつばめの巣(燕窩),熊の掌,駱駝(らくだ)のこぶ,象の鼻,鱶(ふか)の鰭(ひれ)(魚翅),田鶏(食用蛙),キノコ類などの山海の珍味,さらには鳥獣魚肉,甲殻類,貝類,野菜,果物類の生鮮,乾物,塩蔵,発酵品,漬物類にいたるまで多岐にわたる。これらの材料と各種香辛料・調味料30種以上を用いた料理法を組み合わせ,油を多用し強弱の火かげんを自在にあやつって,それぞれ風味のことなる1万点以上の料理がつくられた。単品の材料で作る料理もあるが,ほとんどが主材料のほかにいくつかの副材料をバランスよくとり合わせ,調理の前に料理の種類に合わせて,材料を切りそろえたり,肉や魚に下味をつける。…

※「調味料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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