言立(読み)いいたて

精選版 日本国語大辞典 「言立」の意味・読み・例文・類語

いい‐たて いひ‥【言立】

〘名〙 (動詞「いいたてる(言立)」の連用形の名詞化。「いいだて」とも)
① 特に取り立てて言うこと。強く主張すること。
史記抄(1477)一五「只今禍ができさうらわうぞと云て、云立にするぞ」
※虎寛本狂言・八幡の前(室町末‐近世初)「わごりょは何も云立にする様な芸は覚へぬが、何と云立にするぞ」
事柄を述べ立てて主張すること。また、主張の口実。理由。
※浮世草子・武家義理物語(1688)六「蜷川氏の筋なき事をいひ立(タテ)して」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「お勢は気分の悪いのを口実(イヒダテ)にして、英語の稽古にも往かず」
宣伝口上。また、それをする人。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※歌舞伎・助六廓夜桜(1779)「『いつもの通り、白酒の言ひ立てが』『所望ぢゃ所望ぢゃ』」
④ 歌舞伎舞台における口上の一つ。延年舞曲、猿若の雄弁術の系統を引くもの。たとえば「すまいのゆいたて」(寛文七年(一六六七)、相撲の言ひ立て)、「芝居の言たて」(同八年、狂言の始めに小舞庄左衛門が述べた)、「名所の言立」(同一三年、若衆方小勘が述べた)などの類。
俳諧で、物事を興味深く言いまわすこと。また、その句。⇔見立て

いい‐た・てる いひ‥【言立】

〘他タ下一〙 いひた・つ 〘他タ下二〙
① 特に取り立てて言う。強調する。主張する。言い張る。
源氏(1001‐14頃)末摘花「着給へるものどもをさへいひたつるも物いひさがなきやうなれど」
拾遺(1005‐07頃か)雑下・五六二「なき名のみたかをの山といひたつる君はあたごの峯にやあるらん〈八条大君〉」
② 次々と数え上げて言う。列挙して強く述べる。数え立てる。
※源氏(1001‐14頃)空蝉「にほはしき所も見えず、いひたつれば、悪(わろ)きによれるかたちを」
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「人をそしることを好て、とがをつよく云立て」
目上の人に向かって言う。申し上げる。
④ 言いふらす。評判を立てる。
人情本春色梅児誉美(1832‐33)後「金は残らずおめへが巻あげ、世間は分散ひろぐといひたて」
⑤ 宣伝の口上を述べる。
※歌舞伎・浮世柄比翼稲妻(鞘当)(1823)二幕「木戸口に浮世又平、白髪親仁にて、云(イ)ひ立(タ)てて居る」

こと‐だ・つ【言立】

[1] 〘自タ下二〙
① 思っていることをはっきりと口に出して言う。特にとりたてて言明する。ことばに出して誓う。誓言する。ことあげする。
万葉(8C後)二〇・四四六五「隠さはぬ あかき心を すめらへに 極め尽して 仕へ来る 祖(おや)の職(つかさ)と 許等太弖(コトダテ)て 授け給へる」
② 普通とは違ったことを言う。
※蓬左文庫本続日本紀‐慶雲四年(707)七月一七日・宣命「天皇が御世御世、天つ日嗣と高御座に坐して、此の食国天下を撫で賜ひ慈み賜ふ事は辞立に在らず」
[2] 〘自タ四〙 (一)に同じ。
※古事記(712)下「天皇の使はせる妾(みめ)は、宮の中をも得(え)臨かず、言立(ことだて)ば、足もあがかに嫉妬(ねた)みたまひき」

いい‐た・つ いひ‥【言立】

[1] 〘自タ四〙
① (物を)言って立っている。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「猶、犬からすにもくれて、こめすゑたらましものをといひたち給つるを」
② 言い始める。言い出す。
※落窪(10C後)三「かくいひたちてとどまりたらむ、いとをこならむ」
③ 自然にうわさが立つ。人々の評判になる。
※宇治拾遺(1221頃)二「いかにして死ぬるやらんと、心も得ざりける程に、此いはのある故ぞといひたちにけり」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒いいたてる(言立)

こと‐だて【言立】

〘名〙 心にあること、うわさ、決意などをはっきりと口に出して言うこと。誓言。ことあげ。立言。揚言。
※書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡「貴人(うまひと)の 立つる虚等太氐(コトダテ) 設弦(うさゆづる) 絶えば継がむに 並べてもがも」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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