精選版 日本国語大辞典 「言立」の意味・読み・例文・類語
いい‐たて いひ‥【言立】
〘名〙 (動詞「いいたてる(言立)」の連用形の名詞化。「いいだて」とも)
① 特に取り立てて言うこと。強く主張すること。
※史記抄(1477)一五「只今禍ができさうらわうぞと云て、云立にするぞ」
※虎寛本狂言・八幡の前(室町末‐近世初)「わごりょは何も云立にする様な芸は覚へぬが、何と云立にするぞ」
※浮世草子・武家義理物語(1688)六「蜷川氏の筋なき事をいひ立(タテ)して」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「お勢は気分の悪いのを口実(イヒダテ)にして、英語の稽古にも往かず」
※歌舞伎・助六廓夜桜(1779)「『いつもの通り、白酒の言ひ立てが』『所望ぢゃ所望ぢゃ』」
いい‐た・てる いひ‥【言立】
〘他タ下一〙 いひた・つ 〘他タ下二〙
① 特に取り立てて言う。強調する。主張する。言い張る。
※拾遺(1005‐07頃か)雑下・五六二「なき名のみたかをの山といひたつる君はあたごの峯にやあるらん〈八条大君〉」
② 次々と数え上げて言う。列挙して強く述べる。数え立てる。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「人をそしることを好て、とがをつよく云立て」
③ 目上の人に向かって言う。申し上げる。
④ 言いふらす。評判を立てる。
⑤ 宣伝の口上を述べる。
こと‐だ・つ【言立】
[1] 〘自タ下二〙
① 思っていることをはっきりと口に出して言う。特にとりたてて言明する。ことばに出して誓う。誓言する。ことあげする。
※万葉(8C後)二〇・四四六五「隠さはぬ あかき心を すめらへに 極め尽して 仕へ来る 祖(おや)の職(つかさ)と 許等太弖(コトダテ)て 授け給へる」
② 普通とは違ったことを言う。
※蓬左文庫本続日本紀‐慶雲四年(707)七月一七日・宣命「天皇が御世御世、天つ日嗣と高御座に坐して、此の食国天下を撫で賜ひ慈み賜ふ事は辞立に在らず」
[2] 〘自タ四〙 (一)に同じ。
※古事記(712)下「天皇の使はせる妾(みめ)は、宮の中をも得(え)臨かず、言立(ことだて)ば、足もあがかに嫉妬(ねた)みたまひき」
いい‐た・つ いひ‥【言立】
[1] 〘自タ四〙
① (物を)言って立っている。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「猶、犬からすにもくれて、こめすゑたらましものをといひたち給つるを」
② 言い始める。言い出す。
※落窪(10C後)三「かくいひたちてとどまりたらむ、いとをこならむ」
③ 自然にうわさが立つ。人々の評判になる。
※宇治拾遺(1221頃)二「いかにして死ぬるやらんと、心も得ざりける程に、此いはのある故ぞといひたちにけり」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒いいたてる(言立)
こと‐だて【言立】
〘名〙 心にあること、うわさ、決意などをはっきりと口に出して言うこと。誓言。ことあげ。立言。揚言。
※書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡「貴人(うまひと)の 立つる虚等太氐(コトダテ) 設弦(うさゆづる) 絶えば継がむに 並べてもがも」
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