白酒(読み)しろき

精選版 日本国語大辞典 「白酒」の意味・読み・例文・類語

しろ‐き【白酒】

〘名〙 (「き」は「さけ(酒)」の古名) 神前に供える一対の酒の一方。特に大嘗祭新嘗祭に用いるものをいう。特別に選んだ米を醸造して酒をつくり、これを二分して、一方を白酒とし、他方にはくさぎ(恒山)の灰を入れて黒酒(くろき)と称した。
続日本紀‐天平神護元年(765)一一月二三日・宣命「由紀・須伎二国の献れる黒紀・白紀(しろキ)の御酒を」
[補注]「御酒」の上代特殊仮名遣は「み」「き」ともに甲類であるが、「白酒」「黒酒」の場合の「き」は乙類となる。その理由は不明。

しろ‐ざけ【白酒】

〘名〙
① 濁醪(どぶろく)の異称。しろうま。
② 味醂(みりん)に蒸した米や麹(こうじ)を混合して熟成糖化させた甘味が強くて白く濁った酒。雛祭などに用いる。山川酒(やまがわざけ)。《季・春》 〔和玉篇(15C後)〕
※雑俳・寄太鼓(1701)「いたづらな事いたづらな事・お内儀がはぎのしろざけはやらかす」

しろ‐ささ【白酒】

〘名〙 白酒(しろざけ)をいう女房詞。しろねりのくもじ。しろくもじ。
御湯殿上日記‐文明一二年(1480)三月二二日「松木よりしろささまいる」

はく‐しゅ【白酒】

〘名〙 にごりざけ。どぶろく。しろざけ。
※梵舜本沙石集(1283)五末「或時、白酒を尋て待ちけれども」 〔梁武帝‐子夜四時歌〕

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デジタル大辞泉 「白酒」の意味・読み・例文・類語

しろ‐ざけ【白酒】

蒸したもち米こうじみりんしょうちゅうなどを加えて作った、白くて濃い、特有の香気がある甘い酒。ひな祭りなどに飲む。山川酒やまかわざけ 春》「―や玉の杯一つづつ/鬼城
[類語]酒類さけるい酒類しゅるい般若湯アルコール御酒お神酒銘酒美酒原酒地酒忘憂の物醸造酒蒸留酒混成酒合成酒日本酒清酒濁酒どぶろく濁り酒生酒新酒古酒樽酒純米酒灘の生一本本醸造酒吟醸酒大吟醸冷や卸し屠蘇とそ甘露酒卵酒甘酒焼酎泡盛ビール葡萄酒ワインウイスキーブランデーウオツカラムテキーラジン焼酎リキュール果実酒梅酒薬酒やくしゅみりん紹興酒ラオチューマオタイチューカクテルサワージントニックジンフィーズカイピリーニャマティーニ

しろ‐き【白酒】

新嘗祭しんじょうさい大嘗祭だいじょうさいなどで、黒酒くろきとともに神前に供える白い酒。醸造にあたり、クサギの焼き灰を加えないものをいう。→黒酒

パイチュー【白酒】

《〈中国語〉》中国の無色透明な蒸留酒。米・麦・コーリャントウモロコシなどから作る。アルコール度数が高く、独特の香りがある。

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飲み物がわかる辞典 「白酒」の解説

パイチュウ【白酒 (中国)】


中国酒で、穀類を原料とする蒸留酒の総称。主原料はもっとも一般的なものはコーリャン(中国産のもろこしの一種)で、そのほかコーリャン・もち米・うるち米・とうもろこし・小麦・そばなどを数種配合してつくるものなどがある。酒の発酵は一般に主原料に仕込み水を加えて行うが、白酒では水を加えず、固体の状態のまま行う。主原料を蒸し、麹とともに、「窖池(こうち)」と呼ばれる地面に掘った長方形の穴や、首まで地中に埋めたかめに入れ、密閉して発酵させる。もろみとなっても固体のままなので、蒸留はもろみを蒸し、その蒸気を冷却して行う。この際、もろみにコーリャンの皮や籾殻(もみがら)などを混ぜて蒸すが、これで隙間を作って蒸気を通しやすくするとともに、これらに含まれる成分からも新たな風味が付加される。また、このとき次に仕込む新たなコーリャンを一緒に混ぜ、蒸留と次の蒸しを同時に行うことも多く、「双蒸合一」などと呼ばれる。蒸留後のかすには蒸されて未発酵の状態のコーリャンが含まれており、このかすを麹とともに窖池に戻して再び発酵させる。発酵と蒸留を繰り返す「連醸」と呼ばれる工程は、風味にきわめて大きな影響を及ぼす。これをかめで熟成させて製する。固体のもろみ、窖池発酵、双蒸合一、連醸は、伝統的な白酒の製法上の際だった特徴であり、複雑で濃醇な独特の風味を生み出している。茅台酒(マオタイしゅ)、汾酒(フェンチュウ)などが特に知られる。このほか近年は、主原料にさつまいもを用い、液体の麹などで発酵させ、連続式蒸留機で蒸留して高濃度のアルコールを得、香味成分を添加してつくる安価な白酒も中国国内に普及している。アルコール度数は50~65度程度の強いものが一般的であったが、近年の嗜好の変化に合わせて25度からの比較的度数の低いものもつくられるようになった。⇒黄酒

しろざけ【白酒】


焼酎やみりんに蒸したもち米と米麹を加えて1ヵ月ほど熟成させ、すりつぶしてつくる、とろりとした甘みの強い白濁した酒。近世以降は3月3日の桃の節句に飲む酒とされた。アルコール度数は10度前後。酒税法上の品目としてはリキュールに該当するものが多い。

しろき【白酒】


神田(じんでん)でとれた米で醸造した酒。黒酒(くろき)とともに祭祀(さいし)に用いた。◇「き」は酒の古名。

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改訂新版 世界大百科事典 「白酒」の意味・わかりやすい解説

白酒 (しろざけ)

雛祭の祝酒とされる混成酒。清酒,焼酎,みりんなどに蒸したもち米とこうじを加えて発酵させ,甘いもろみになったところで,もろみをすりつぶして粘稠(ねんちゆう)な酒にしたもので,白く濁って甘みが強い。雛祭に白酒を使うようになったのは19世紀に入ってからのようであるが,白酒そのものは江戸初期にはすでに京都六条油小路の酒屋でつくっていたものが有名であった。山川酒というのがそれで,歌舞伎の《助六》や《乗合船》に登場する白酒売は〈山川〉と書いたうちわを手に持っている。幕末近く大坂と江戸に白酒で有名な店があった。大坂にあったのは堀江(現,中央区)和光寺門前にあったみそ屋の河庄で,店先に水車ようの大きな車をすえつけ,その中に人が入ってまわすと,いくつもの石臼がそれに連動してもろみをすりつぶして白酒ができるというのが評判だった。江戸では神田鎌倉河岸の豊島屋酒店の白酒がたいへんな人気だった。毎年2月の末に売ったというが,売出し当日は未明から手に手に桶を携えた人々が詰めかけ,その客めあてのそば屋や大福餅屋が路傍に店開きするほどであった。白酒売は《守貞漫稿》のいうように春のもので,元禄ころには春の町を呼売していたようで,《続猿蓑》に〈朧夜(おぼろよ)の白酒売の名残かな 支考〉の句が見られる。
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百科事典マイペディア 「白酒」の意味・わかりやすい解説

白酒【しろざけ】

混成酒の一種。白濁した甘味の強い酒で,古くから雛祭(ひなまつり)の祝酒とされる。みりんに蒸米,米麹(こうじ)を混和し20〜30日放置し熟成させ,すりつぶして作る。みりんの代りに清酒,焼酎(しょうちゅう)なども用いられる。京都の山川酒が有名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白酒」の意味・わかりやすい解説

白酒
しろざけ

白く濁った甘味の強い酒。蒸した白米と米麹を混ぜ合せたものに焼酎あるいは酒を加えて熟成させ,石臼でひいて造られる。歴史は古く,戦国時代以前から発達したもので,古来,桃の節句に供される。

白酒
パイチュー

高粱酒」のページをご覧ください。

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とっさの日本語便利帳 「白酒」の解説

白酒

中国の蒸留酒。高粱、米などの穀類を蒸して、水と麹を加えて発酵させ、蒸留する。公式行事の乾杯に使われる茅台酒(マオタイチュウ)や、汾酒(フンチュウ)など。

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普及版 字通 「白酒」の読み・字形・画数・意味

【白酒】はくしゆ

にごり酒。

字通「白」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の白酒の言及

【白酒・黒酒】より

…新嘗祭(にいなめさい),大嘗祭(だいじようさい)に供する酒のこと。白酒は,醸したままの原酒をこしたもので,色が白いためこの名がある。黒酒は,この白酒にさらに久佐木(くさき)の灰を加えてつくったもの。…

【清酒】より

… 大化改新後,宮内省のなかに造酒司(さけのつかさ)がおかれ,《延喜式》によるとここでこうじを使ってなん種類かの酒がつくられていた。なかでは新嘗会(しんじようえ)に使われた白貴(しろき)(白酒(しろき)),黒貴(くろき)(黒酒(くろき))と呼ばれる酒が有名で,10月上旬の吉日に臼殿(うすどの)で米をつき,こうじ室(むろ)でこうじをつくり,酒殿(さかどの)に並べたかめに蒸米とこうじと水を混ぜて酒を仕込んだ。現在の酒母(しゆぼ)の仕込みに近いが,こうして10日ほどで白貴ができる。…

【中国酒】より

…(4)麩麴(ふきく) 麩は小麦製粉の副産物であるふすまのことで,ふすまと米ぬか,コーリャンぬかなどの混合物に,純粋培養のクロコウジカビAspergillus niger,シロコウジカビA.kawachii,コウジカビA.oryzaeなどの糖化力の強い菌と酵母を接種,培養したもの。このこうじによって,とくに白酒用の大麴原料である麦や豆が節約できるようになったほか,製麴に要する日時が短縮された。1960年の通風製麴の創案によって,麩麴による白酒製造は能率化し,現在中国の白酒の80%以上がこれを用いてつくられている。…

※「白酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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