(読み)ショウ

デジタル大辞泉 「嘯」の意味・読み・例文・類語

しょう【嘯】[漢字項目]

[音]ショウ(セウ)(呉)(漢) [訓]うそぶく
口をすぼめて声を出す。うそぶく。「嘯風吟嘯長嘯
ほえる。うなる。「海嘯虎嘯こしょう

うそ‐ふき【×嘯】

狂言面の一。口笛を吹くように、口をとがらした形の面。蚊・タコキノコなどの精、案山子かかしなどに用いる。里神楽ひょっとこ面の原形

うそ【×嘯】

口をすぼめて息を強く出すこと。また、口笛。うそぶき。
「貝をも持たぬ山伏が―を吹かうよ」〈虎明狂・柿山伏

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精選版 日本国語大辞典 「嘯」の意味・読み・例文・類語

うそ‐ぶ・く【嘯】

〘自カ五(四)〙 (古くは「うそふく」とも)
① 口をすぼめて息を強く吐き、また、音を立てる。ふうふうと息を吐き出す。うそむく。
書紀(720)神代下(水戸本訓)「弟(おとのみこと)(うみべた)にましまして嘯(ウソフキ)たまふ。時に迅風(はやち)忽に起る」
詩歌などを低い声で口ずさむ。吟詠する。また、ふしを付けていう。うそむく。目的語をとって他動詞のようにも用いる。
※武藤本竹取(9C末‐10C初)「あるいは笛を吹き〈略〉あるひはうそふき、扇を鳴らしなどするに」
③ 口笛を吹く。また、ある物を見て感嘆のあまり、ため息をつく。
日葡辞書(1603‐04)「Vsobuqi, qu, buita(ウソブク)〈訳〉月や花をながめて息をつき、口笛を吹く」
④ 虎などがほえる。鳥などが鳴き声をあげる。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「虎粛(ウソフケ)ば風生こる」
⑤ てれかくしにそらとぼける。また、開き直ったり得意になったりして相手を無視するような態度をとる。そらうそぶく。
更級日記(1059頃)「舟のかぢとりたる男ども、舟を待つ人の数も知らぬに心おごりしたる気色にて、〈略〉とみに舟も寄せず、うそふいて見まはし
⑥ 強がりをいう。大きなことをいう。
[語誌]→「うそむく(嘯)」の語誌

うそ‐む・く【嘯】

〘自カ四〙 =うそぶく(嘯)
※享和本新撰字鏡(898‐901頃)「嘯 宇曾牟久」
※雲形本狂言鳴子(室町末‐近世初)「ころものせきや。つぼのいしぶみ。そとのはま風。ふけ行月にうそむく」
[語誌]「うそぶく」の子音交替形。「うそぶく」「うそむく」は、文献的には「うそぶ」「うそむ」より遅れて出現する。「ぶ」から「む」への変化時期については平安中期以降であると言われる。中世、近世を通して使用されたが、近世の仮名遣い書に見られるように、当時、「うそふく」と書いて「うそむく」と読むということもあったらしい。

うそ‐ふき【嘯】

〘名〙
① 狂言面の一つ。狂言や里神楽などに用いる、うそぶいて口をとがらした形の仮面。蚊、蝉の精や、かかし、石神などに用いる。ひょっとこ面。
※虎明本狂言・瓜盗人(室町末‐近世初)「うそふきの面を着せなし」

うそ・ぶ【嘯】

〘自バ四〙 口をつぼめて息や声を出す。うそぶく。うそむ。
※新撰字鏡(898‐901頃)「啾々 小児声 宇曾布」
[語誌]「うそぶく」とほぼ同意であるが、「うそぶく」に比べ訓点語の色彩が強い。活用については、体言「うそ」を動詞化したものとするならば上二段活用である可能性も大きい。

うそ・む【嘯】

〘自マ四〙 口をつぼめて息を吹き、声を出す。うそぶく。うそぶ。うそむく。
※書紀(720)皇極四年正月(岩崎本訓)「就(ゆ)きて視れば物便ち見えずして、尚鳴き嘯(ウソム)(おと)聞ゆ」

うそ‐ぶき【嘯】

〘名〙 (動詞「うそぶく(嘯)」の連用形の名詞化) うそぶくこと。口笛などを吹くこと。
※玉塵抄(1563)三一「登が嘯(うそ)を吹た声、うそ吹の上手なり」

うそ【嘯】

〘名〙 口をすぼめて息を強く吐き出すこと。また、その音。うそぶき。うそむき。口笛。皮笛。
※たまきはる(1219)「こぜんじの紙、まきあげの筆と、うそに吹きいだしたるを」

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