后稷(読み)こうしょく(英語表記)Hòu jì

精選版 日本国語大辞典 「后稷」の意味・読み・例文・類語

こう‐しょく【后稷】

[1] 〘名〙 中国古代の官名農事をつかさどった。
[2] 中国の周王朝の祖と伝えられる人物本名は姫棄。農耕にすぐれ、堯帝に用いられ、舜のときに(一)についたという。

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デジタル大辞泉 「后稷」の意味・読み・例文・類語

こう‐しょく【后×稷】

中国古代の官名で、農事をつかさどる長官
中国、王朝の始祖とされる伝説上の人物。姓は、名は母親姜原きょうげん巨人足跡を踏み、妊娠して生まれたといわれる。農耕を好み、しゅんのときとなったという。

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改訂新版 世界大百科事典 「后稷」の意味・わかりやすい解説

后稷 (こうしょく)
Hòu jì

中国古代の神話にみえる農業神。周王朝の始祖とされる。その出生について,母の姜嫄きようげん)が大人の足あとをふんで妊(はら)んだという感生帝説話があり,《詩経》大雅・生民に歌われている。足あとを践(ふ)むのは舞踏の形式とも,また神衣を着けて神位に座息するとする説もある。神異の子であるので棄(き)と名づけ,いくども棄(す)てられたが,そのたびに奇瑞によって救われた。稷の字形穀霊を形代(かたしろ)にした形で,農業神を示す。后稷のとき嘉禾(かか)をえたという伝承があり,屈家嶺(くつかれい)文化(屈家嶺遺跡)に近いその地に,早くから良種がもたらされたのであろう。《書経》尭典・呂刑(りよけい)に后稷播種のことがみえる。《山海経(せんがいきよう)》海内経に死して都広の野に葬られたが,そこには菽(まめ),稲,黍,稷など百穀が生じ,鸞鳳が舞い歌う楽園とされている。また崑崙を南に望む〈帝の平圃(へいほ)〉に后稷がひそむという。《淮南子(えなんじ)》墜形訓(ちけいくん)に蘇(よみがえ)る神で半ば魚形であるというのは,農耕神に洪水神の性格が加わったものであろう。
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普及版 字通 「后稷」の読み・字形・画数・意味

【后稷】こうしよく

周の祖神。稷は五穀。のち、その農官。〔書、舜典〕(き)(后稷の名)、黎民(れいみん)(う)ゑに阻(なや)めり。汝后稷となり、時(こ)の百を播(ま)け。

字通「后」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「后稷」の意味・わかりやすい解説

后稷
こうしょく

中国古代、周王朝の始祖とされる人物。『史記』周本紀によれば、有邰(ゆうたい)氏の娘で帝嚳(こう)の妃(ひ)であった姜原(きょうげん)が、野で巨人の足跡を踏んでみごもり、産んだのが后稷といわれる。中国古代における感生説話の一例とされる。また后稷は農耕を教えたといわれ、農業神ともされる。これについては、周族が、周原に初めて定住したとき、土着の姜姓の女との間に生まれたのが后稷で、彼らより農業を学んだことが、このような伝説の生因になったとする説がある。

[松丸道雄]

『岡崎文夫著『古代支那史要』(1944・弘文堂書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「后稷」の意味・わかりやすい解説

后稷
こうしょく
Hou-ji

中国,周王朝の伝説的祖先。農業神。姓は姫。名は棄。姜原 (きょうげん) が巨人の足跡を踏んではらみ生れたので (感生説話) ,不祥としてたびたび棄てられたが,そのたびに助けられた (棄子説話) 。のち帝堯の農官となり「たい」 (陝西省武功県付近) に封じられ,后稷となった。周王朝の始祖神であるが,また社稷の神 (地神) であり,五穀の神でもある。

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世界大百科事典(旧版)内の后稷の言及

【禹】より

…尭のあとを継いだ舜帝は,かわって禹に治水を命じた。禹は益(えき)や后稷(こうしよく)などの部下とともに天下を経めぐって水を導き,農業などの産業を整備した。このときの記録が《尚書》禹貢篇に編まれたとされる。…

【周】より

…前1050?‐前256年。《史記》によると,尭帝の農官であった后稷(こうしよく)が始祖とされる。后稷の15世後の子孫の武王が,前1050年ころ殷王帝辛(紂王)を牧野(河南省淇県)で破り,殷を倒して,王朝を創設した。…

※「后稷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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