出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
一定の空間の中にある絶景を八つ定めて,八景としてめでる感覚は,中国から渡来したものである。本居宣長《玉勝間》巻十二にも,〈もともろこしの国の,なにがしの八景といふをならひてさだめたる〉と記されており,日本では慶長・元和(1596-1624)のころからしだいに人口に膾炙(かいしや)しはじめた。最初にいいだされた八景は近江八景といわれ,京都円光寺の長老が近江に蟄居しているとき,中国の瀟湘(しようしよう)八景になぞらえたものという。すなわち,比良の暮雪,矢橋(やばせ)の帰帆,石山の秋月,勢田の夕照,三井の晩鐘,堅田の落雁,粟津の晴嵐,唐崎の夜雨の八景である。これをモデルとして,各地に八景の称が次々と生まれた。京都の八景,南都の八景,嵯峨の八景,稲荷山の八景,泉涌寺の八景など,いずれも限定された空間の内部に定め,それらを描写する漢詩や和歌がそえられている。公家や武家の上流社会の風習で,江戸時代には大名旗本などの別荘のある土地に競って八景を作り,風流を楽しむ傾向があった。
執筆者:宮田 登
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