金沢八景(読み)かなざわはっけい

精選版 日本国語大辞典 「金沢八景」の意味・読み・例文・類語

かなざわ‐はっけい かなざは‥【金沢八景】

神奈川県横浜市金沢の景勝地、八か所を選んだもの。元祿七年(一六九四)頃、明の心越禅師が中国瀟湘(しょうしょう)八景に模して選定。洲崎の晴嵐、瀬戸の秋月、小泉の夜雨、乙艫(おつとも)の帰帆、称名寺晩鐘、平潟の落雁、野島の夕照、内川の暮雪をいう。

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デジタル大辞泉 「金沢八景」の意味・読み・例文・類語

かなざわ‐はっけい〔かなざは‐〕【金沢八景】

横浜市金沢区にあった景勝地。洲崎すざき晴嵐せいらん、瀬戸の秋月、小泉の夜雨、乙艫おっともの帰帆、称名寺しょうみょうじの晩鐘、平潟の落雁らくがん、野島の夕照、内川の暮雪。みんの心越禅師の命名という。

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日本歴史地名大系 「金沢八景」の解説

金沢八景
かなざわはつけい

六浦むつうらの海を中心とした景勝地で、鎌倉時代には将軍が度々諸武将を招いて遊覧したという。文明一九年(一四八七)頃の僧尭恵の「北国紀行」には「六浦金沢をみるに、乱山かさなりて島となり、青嶂そばだちて海をかくす、神霊絶妙の勝地なり」と記している。元和二年(一六一六)成稿の林道春の「丙辰紀行」にも「金沢の絶景は東州の佳境にて、事好むもの丹青の手をかりて屏風にうつし、市杵島天橋立にも、いかでかおとるべきなどもてなしあへり」とある。

慶長一九年(一六一四)頃の「名所和歌物語」に「されば、金沢、八景の詩哥と号し、皆人もてあそび給へり、扨八景ハ、いづくをさして、名付やらん、くわしくをしへ給へ、翁答て、金沢八景の詩哥、世にかくれなし○瀟湘夜雨とハ、あれに見えたる一村の、こずみといふ在所也、晴天の夜も、かならず雨そゝぐ○洞庭秋月ハ向ひの原○漁村夕照ハ瀬戸○江天暮雪は、野島○遠浦皈帆ハ、むろの木○山市晴嵐ハ、たうげ○平沙落鴈ハ、ひらかた○遠寺晩鐘ハ、称名寺、是を八景と号す」とあり、中国瀟湘八景名勝をあてはめている。しかし万治二年(一六五九)刊の「鎌倉物語」には「瀟湘夜雨 こつみといふ所をいへり、洞庭秋月 原といふ所をいへり、遠寺晩鐘 せとのはしの事なり、遠帆帰帆 むろの木のもとをいふ、山市晴嵐 峠をいふ、漁村夕照 せとの浦辺をいふ、江天暮雪 野島をいふ、平沙落雁 ひらかたと云所をいふ」として、それぞれに八首の和歌を付ける。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金沢八景」の意味・わかりやすい解説

金沢八景
かなざわはっけい

横浜市南部、金沢区の平潟(ひらかた)湾岸の景勝地。京浜急行電鉄本線金沢八景駅付近が中心。平潟湾は波静かなうえに、野島、夏島を控えて好風景が繰り広げられ、瀬戸神社、称名寺(しょうみょうじ)、金沢文庫なども加わって、情趣豊かな好地であった。また鎌倉時代には平潟湾奥の金沢湊(みなと)は、鎌倉と房総半島、東京湾岸諸地との連絡や鎌倉への消費物資の輸送基地をもなしていた。そのうえこの地一帯が北条氏の荘園(しょうえん)でもあったので、将軍をはじめ鎌倉武士の訪れがたび重ねられていた。金沢八景の名は、江戸初期に明(みん)からきていた心越(しんおつ)禅師によってつけられたもので、平潟の落雁(らくがん)、称名寺の晩鐘(ばんしょう)、内川(うちかわ)の暮雪(ぼせつ)、乙艫(おっとも)の帰帆(きはん)、野島の夕照(せきしょう)、洲崎(すさき)の晴嵐(せいらん)、小泉の夜雨(やう)、瀬戸の秋月をいう。江戸時代には鎌倉、江の島、さらに大山(おおやま)と結んで、江戸市民の観光ルートをなしていた。現在は湾岸が埋め立てられ、そのおもかげは著しく失われている。

[浅香幸雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金沢八景」の意味・わかりやすい解説

金沢八景
かなざわはっけい

神奈川県東部,横浜市金沢区南東部の平潟湾北西岸の呼称。江戸時代に明から渡来した心越禅師が風光をたたえたことから呼称が生じた。都市化で変貌が著しく,工場や住宅地が急増,八景は消失した。付近には金沢文庫,自然公園などがあり,臨海部には野島公園をはじめ,人工砂浜の海の公園や水族館遊園地などのある八景島シーパラダイスがある。

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デジタル大辞泉プラス 「金沢八景」の解説

金沢八景

神奈川県横浜市金沢区の平潟湾沿岸の8つの景勝地。江戸時代初期に中国・明からの渡来僧、心越禅師が命名したものと伝わる。洲崎の晴嵐、瀬戸の秋月、小泉の夜雨、乙舳の帰帆、称名の晩鐘、平潟の落雁、野島の夕照、内川の暮雪の8か所で、広重の浮世絵などにより広く知られる観光地となった。埋め立てなどにより、現在では当時の面影がほとんど残っていないため、2008年には区民参加により「新金沢八景」が選定された。

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事典・日本の観光資源 「金沢八景」の解説

金沢八景

(神奈川県横浜市金沢区)
かながわ未来遺産100」指定の観光名所。

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