中折(読み)なかおり

精選版 日本国語大辞典 「中折」の意味・読み・例文・類語

なか‐おり ‥をり【中折】

〘名〙
① 中ほどを折りかえすこと。中ほどから折ってあること。
満佐須計装束抄(1184)一「其の縫ひ目を、長ざまになかおりにして」
② 「なかおりがみ(中折紙)②」の略。
言継卿記‐大永七年(1527)一二月二九日「賀州より髪上候方々へ文あり。逍遙院へ塩引 一尺、〈略〉、同中将へ中折 一束」
③ 表付きの駒下駄一種。草履的な形態中央の折れた部分を革でつないで屈折に便利としたもの。中折りの下駄。中打ち。中切り。
随筆守貞漫稿(1837‐53)二七「中折り 表付同前男女用同前江俗専ら堂島とも云、此下駄のみ今も板製江戸製ともに並行る」

なか‐おれ ‥をれ【中折】

〘名〙
① 中央で折れかえり、またはくぼんでいること。
② (━する) 途中中止になること。中絶すること。
歌舞伎・出来龝月花雪聚(真田幸村)(1871)序幕「今少しく立合ひなば此の景久が腕前を、お目に掛けんもの、中折(ナカヲ)れがして残念至極」
風俗画報‐一七四号(1898)流行門「中折(ナカヲレ)〈略〉帽子の中にも尤も販路の広きはこの中折なるべし」
※風俗画報‐一五四号(1897)人事門「半紙当国の需用紙にて中折(ナカヲレ)と云ふ)」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中折」の意味・わかりやすい解説

中折
なかおり

室町時代から江戸時代にかけて漉(す)かれていた和紙の一種。中折紙の略。20枚一帖(じょう)を二つに折って懐中紙としたところから、この名がある。1603年(慶長8)刊『日葡(にっぽ)辞書』には、小さな判の紙の名と説明されており、標準寸法は縦27センチメートル、横41センチメートルであった。1933年(昭和8)刊の渡部道太郎(わたべみちたろう)著『和紙類考』には「清帳(せいちょう)と同種類で書類や障子紙として用いる」とある。石見(いわみ)国(島根県)の石州(せきしゅう)中折、吉賀(よしが)中折、筑後(ちくご)国(福岡県)の柳川(やながわ)中折、紀伊国(和歌山県)の高野(こうや)中折などが有名で、そのほかに土佐国(高知県)、豊後(ぶんご)国(大分県)、薩摩(さつま)国(鹿児島県)などでも産出された。また中折ということばは、製本用語では16ページ掛けの刷り本を折り畳むときの第2回目の折をいう。

[町田誠之]

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