精選版 日本国語大辞典 「糸目」の意味・読み・例文・類語
いと‐め【糸目】
〘名〙
① 糸のように細い筋。
※七十一番職人歌合(1500頃か)五五番「我が恋はかさかけひきめ塗りこめていとめも見えずなく涙かな」
② 糸の筋目。
※黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉三「左の肩の所が少しいたむでぼやけた糸目(イトメ)を見せた〈略〉紋付羽織を被て」
※雑俳・川傍柳(1780‐83)一「ひんな子はしかられながら糸目持」
④ 柳の枝。また、その芽だち。
⑤ 器物に模様としてつけた筋。
⑥ 事物をつなぎとめるもの。つないでいる節。脈絡。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉八「吸付てはなれぬ縁の糸目(イトメ)より」
⑦ (③から転じて) 事を運ぶための資金。
※洒落本・四十八手後の巻(1818か)外花街「羽織を二階まで着てあがり、〈略〉引手茶屋にもたしてかへし、まげてこんやふたりのいとめなり」
⑧ 中世末期から近世後期にわたって、甲斐国(山梨県)や駿河国(静岡県)などで用いられた金の量目の名称。一両の六四分の一。〔甲斐国志(1804‐18)〕
⑨ 着物の合わせ目。胸倉(むなぐら)。
※雑俳・柳多留‐六五(1814)「客の糸目をひっつかむ大くぜつ」
⑩ 模様染めで、模様を引き立たせるために色と色との境目に引く糸のような細い線。
⑪ 機織りで、杼(ひ)から緯(よこいと)を引き出す糸の出口。
⑫ 一定重量の繭から繰り糸して得られる生糸量の割合。糸歩(いとぶ)。
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉後「米が南京お菜(かず)がヒジキそれで糸目が出るものか」
⑬ 環形動物ゴカイ科の一種。海岸近くの河口の泥地や汽水湖にすむ。ゴカイに似ているが、いっそう細長く、体長約二五センチメートルで、環節数は約三〇〇。体の前方は青緑色、ほかは紅色。海釣り用の釣りえにする。ばち。
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