玄界灘(読み)ゲンカイナダ

デジタル大辞泉 「玄界灘」の意味・読み・例文・類語

げんかい‐なだ【玄界灘/玄海灘】

九州北西部の海域。西は対馬海峡、東はひびきに連なる。冬季は風波が荒い。
(玄界灘)金達寿長編小説。昭和27年(1952)から昭和28年(1953)にかけて「新日本文学」誌に連載。日本の植民統治下における朝鮮の人々の苦悩を描く。昭和29年(1954)刊行。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玄界灘」の意味・わかりやすい解説

玄界灘
げんかいなだ

九州北西部の海域で玄海と略称される。西は対馬(つしま)海峡東水道、壱岐(いき)水道で東シナ海に続き、東は鐘ノ岬(かねのみさき)、地島(じのしま)の線で響灘(ひびきなだ)に至る。福岡県から佐賀県にわたり、東から筑前(ちくぜん)大島、相島(あいのしま)、玄界島、小呂(おろ)島、烏帽子(えぼし)島、神集(かしわ)島、小川(おがわ)島、加部(かべ)島などの島々や多数の岩礁があり、福岡(博多(はかた))、唐津(からつ)の両湾が開けている。水深は100メートル内外であるが、大部分は50~60メートル未満の浅い大陸棚が中心で、対馬海流が南西から北東に流れる好漁場であるが、冬季は季節風により海が荒れるため、小型船の遭難が多い。古来、大陸、朝鮮半島との海上交通の要路として利用され、元寇(げんこう)の侵入路にもなったが、現在は韓国からの密航、密輸の場でもある。タイをはじめイカ、アジ、サバ、ブリ、フグ、イサキイワシ、ウニ、ワカメなどの好漁場で、沿岸に多数の漁港が発達しているが、近年は漁場の荒廃が進行中で、魚礁設置などで水産資源の開発が努められている。沿岸一帯は芥屋大門(けやのおおと)や七ツ釜(がま)をはじめ、志賀島(しかのしま)、生の松原(いきのまつばら)、海の中道(うみのなかみち)、虹の松原(にじのまつばら)などの景勝地や、怡土(いと)城跡、元寇防塁跡、宗像(むなかた)大社、香椎宮(かしいぐう)、筥崎八幡宮(はこざきはちまんぐう)などの史跡に富み、玄海国定公園に指定されている。

[石黒正紀]


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改訂新版 世界大百科事典 「玄界灘」の意味・わかりやすい解説

玄界灘 (げんかいなだ)

九州北西部,福岡・佐賀両県の北にひろがる海域。玄海ともいう。西は壱岐水道,対馬海峡東水道で東シナ海に,東は福岡県宗像(むなかた)市の大島と九州本土(同市)との間の倉良(くらら)瀬戸を通じて響(ひびき)灘に,それぞれ接している。沿岸近くに東から大島,相ノ島,玄界島,姫島,烏帽子(えぼし)島,神集(かしわ)島,小川島,加唐(かから)島,中央北部沖合に小呂(おろ)島などの島や灯台瀬,横曾根,長間瀬など多数の岩礁が散在し,南部に博多,唐津の二大湾入がある。大部分が水深50~60m未満の浅い大陸棚で,対馬海流が北東へゆるく流れる。タイ,イカ,アジ,サバ,イワシ,ブリ,フグ,イサキ,ウニ,アワビ,ワカメなどの好漁場であるが,沿岸部では汚染や埋立てなどによる荒廃化もみられ,コンクリート魚礁を設置するなど水産資源増殖事業が進められている。冬は強い北西季節風による高波で知られ,小型船の遭難が多い。古来,大陸と北九州を結ぶ交通の要路であった。沿岸部にある金印(漢倭奴国王印)出土の志賀島,怡土(いと)城跡,元寇防塁跡,宗像大社香椎宮筥崎宮(はこざきぐう)などは多かれ少なかれ大陸とかかわりのある史跡や神社である。白砂青松の虹ノ松原生ノ松原,海ノ中道や海食洞の芥屋大門(けやのおおと),七ッ釜などの景勝地にも富み,玄海国定公園に指定されている。
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百科事典マイペディア 「玄界灘」の意味・わかりやすい解説

玄界灘【げんかいなだ】

福岡・佐賀両県の北西に広がる海域。玄海とも。西は壱岐・対馬両海峡,東は響灘に続き,大部分は50〜60m以浅で,冬は北西季節風が強く波が高い。古来,大陸への海上交通の要路。イワシ,タイ,イカ,サバ,アジ,ブリなどが漁獲される。地島,相島,志賀島,玄界島や本土海岸は玄海国定公園に属する。
→関連項目海ノ中道勝本[町]北松浦半島玄海[町]古賀[市]佐賀[県]新宮[町]福間[町]宗像[市]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「玄界灘」の意味・わかりやすい解説

玄界灘
げんかいなだ

玄海ともいう。福岡,佐賀両県の北西部に広がる海で,日本海の一部。東は鐘ノ岬,地ノ島の線で響灘に続き,西は壱岐水道対馬海峡によって東シナ海に通じる。大陸棚の発達する浅海で,大部分は水深 50~60m以内。古くから大陸および朝鮮半島と北九州を結ぶ海上交通の要路として重視された。対馬海流がゆっくり北東流し,島や岩礁が多く,タイ,イカ,アジ,サバ,ブリ,フグなどの好漁場となっている。冬季には強い北西季節風による高波で知られ,漁船の遭難も多い。沿岸には多くの史跡,名勝があり,玄海国定公園に属する。

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