便(漢字)

普及版 字通 「便(漢字)」の読み・字形・画数・意味

便
常用漢字 9画

(旧字)
9画

[字音] ベン・ビン
[字訓] やすらか・ならう・たより・たやすく・すなわち

[説文解字]

[字形] 会意
人+(更)。更改の意がある。〔説文〕八上に「安んずるなり。人、不なることるときは、之れを(あらた)む。人ととに從ふ」とするが、その会意によって便安・便利の意となることを説きえない。金文(ぎよ)は馬に鞭度(べんたく)を加える形であるが、そのの従うところは字形に近く、とは人に鞭度を加える意象の字であろうと思われる。ゆえに人を駆使する意となり、便利捷給の意となる。は変更・更改の意で、もとその呪的な方法を示す字であった。鞭度を加えて祓い、安することから、他の諸義が生じたものであろう。

[訓義]
1. やすらか、やすらかにする、くつろぐ。
2. ならう、なれる、くつろぐ。
3. たより、音信
4. たやすく、すなわち、容易。
5. 都合がよい、はやい、たくみ。
6. へつらう、口上手。
7. いばり、ゆばり、くそ、大小便
8. 平・辨(弁)と通じ、わかつ。

[古辞書の訓]
名義抄 スナハチ・タヨリ・タヤスク・ヤガテ・タル・ワキマフ・ウルハシ・ナラフ/方 ツキヅキシ・ヤスラフ/ スナハチ 〔字鏡集〕 タル・ヤガテ・ウルハシ・ワキマフ・ナラフ・タヨリナリ・スナハチ・タヨリ・ユバリ・タヤスシ

[声系]
〔説文〕に声として鞭・の四字を収める。(あさ)を以て両股交辮するもので、鞭策の制と似たところがある。は竹の輿で編竹を以て作る。はまた声の字に作り、声と声と通ずることがある。

[語系]
bianはphyenと声近く、軽挙(へん)は〔説文〕十二下に「輕き皃なり」とあり、軽便のさまをいう。また三上は「巧の言なり」とあり、声・声に声義の通ずるところがある。

[熟語]
便箋・便愛・便悪・便安・便衣・便易・便意・便益・便液便悁・便可・便家・便器便宜・便計・便・便便娟・便・便言・便戸・便幸・便巧・便坐・便・便私・便辞・便事・便時・便室便疾・便習・便就便捷・便章・便人・便勢便旋・便体・便地・便程・便殿・便道・便便佞・便寧・便飯便煩・便繁・便美便媚・便敏・便風・便服・便腹便嬖便辟便僻・便便・便房・便面・便・便門・便桶・便頼便覧・便利・便路便鑪
[下接語]
安便・応便・穏便・歓便・簡便・形便・軽便・巧便・好便・幸便・便・小便・清便・静便・溲便・体便・大便・不便・方便・郵便・利便・両便

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報