更改(読み)コウカイ

デジタル大辞泉 「更改」の意味・読み・例文・類語

こう‐かい〔カウ‐〕【更改】

[名](スル)
古いきまりやしきたりなどを新しいものに変えること。「新制度更改する」
既存債務を消滅させ、これに代わる新しい債務を成立させる契約。「契約を更改する」
[類語]更新書き換え切り替え

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精選版 日本国語大辞典 「更改」の意味・読み・例文・類語

こう‐かい カウ‥【更改】

〘名〙
① しきたりや制度などをかえて新しくすること。更革改更
※美術真説(1882)〈フェノロサ〉「欧人の既に全く廃棄し若くは更改せんと欲する敝悪旧套」 〔宋書‐歴志・上〕
② 契約によってすでにある債務を消滅させ、代わりに新債務を成立させること。また、その契約。
民法(明治二九年)(1896)五一三条「当事者か債務の要素変更する契約を為したるときは其債務は更改に因りて消滅す」

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改訂新版 世界大百科事典 「更改」の意味・わかりやすい解説

更改 (こうかい)

既存の債務の要素を変更して新たな債務を発生させ,同時に既存の債務(旧債務)を消滅させる契約(民法513~518条)。民法では旧債務が消滅する点に着目して,弁済や免除等とともに債務の消滅原因の一つとして規定しているが,内容的には債務の切替契約である。債務の要素の変更には,(1)債権者の変更(AのBに対する債権をCのBに対する債権に変更する),(2)債務者の変更(AのBに対する債権をAのCに対する債権に変更する),(3)債権の目的の変更(AのBに対する貸金債権をAのBに対する物の引渡請求権に変更する)という三つの態様がある。債権債務関係における人的要素を重視し,債権の目的の変更を伴わない(1)(2)のケースでも新債務と旧債務との間の同一性を否定したローマ法のもとでは,債権者の交代による更改は債権譲渡に,債務者の交代による更改は債務引受けに代わる制度として意義を有していた。しかし,債権債務関係が債権者・債務者という個別的な人的関係を離れて,取引上客観的な存在とみられるに至って,債権者・債務者の変更については別個の債権譲渡・債務引受けという制度が認められるようになり,更改の存在意義を大幅に減殺した。民法でも債権譲渡については明文の規定を設け,債務引受けについては,明文の規定はないものの,学説・判例上異論なく認められている。ちなみにドイツ民法では,債権譲渡・債務引受けについてそれぞれ明文で規定し,更改については規定を設けていない。(3)のケースの更改も,旧債務が消滅するという更改の本質的な内容が,旧債務に付着している保証,担保権あるいは抗弁権の消滅をもたらすこととなり,債権者・債務者の利益に反するという理由で,実際上に行われることはきわめてまれである。結局,民法に規定はあるものの,更改はいずれの態様についても社会的な意義に乏しい契約といえる。

 なお,プロ野球の球団選手との間の選手契約につき,シーズン・オフに球団と選手とが新たな報酬等を定めて次のシーズンの契約を締結することを契約更改または単に更改と呼ぶことがあるけれども,それは法律的な意味での更改には該当しない。それは,法律的には選手契約が現在は1年限りの契約であることによって生ずる,単なる新契約の締結と解すべきものであろう。
債権・債務
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「更改」の意味・わかりやすい解説

更改
こうかい

新債務を成立せしめることによって旧債務を消滅させる契約(民法513条)。一個の契約によって、新債務の成立と旧債務の消滅という2個の法律効果が生ずるものであり、両効果の間には因果関係がある。すなわち、旧債務の消滅がないときには新債務は成立せず、また、新債務が成立しないときには旧債務は消滅しない(同法517条)。更改は、新しい債務が成立し、いわば債務の切替えが行われるだけであるから、現実に給付が行われて債務が消滅する代物弁済とは異なる。今日、更改の社会的意義はそれほど大きくはない。更改には、債権者の交替による更改、債務者の交替による更改、目的の変更による更改の3種類がある。更改の成立要件は、消滅せしめられるべき旧債務が有効に存在すること、新債務が成立すること、旧債務と新債務とがその要素を異にすること、である。また、更改の効果は、旧債務が消滅し、これと同一性のない新債務が成立することである。

[淡路剛久]

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普及版 字通 「更改」の読み・字形・画数・意味

【更改】こう(かう)かい

改める。〔漢書、韓延寿伝〕潁川、豪彊多くして治めし。~民に怨讐多し。壽之れを改し、ふるに禮讓を以てせんと欲す。

字通「更」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「更改」の意味・わかりやすい解説

更改
こうかい
Schuldersetzung; novation

債務を成立させることによって旧債務を消滅させる契約をいう (民法 513) 。これには,債権者の変更によるもの,債務者の変更によるもの,債務の目的を変更するものとの3つの種類がある。もっとも,前2者は現行法上債権譲渡が認められており,また債務引受も有効であると解されているので,あまり意味のない契約となっている。また,債務の目的を変更するものについても,軽々に旧債務の消滅を認めるべきではなく,原則としてはむしろ債務は同一性をもって変更されたものとみるべきだとされている。

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百科事典マイペディア 「更改」の意味・わかりやすい解説

更改【こうかい】

契約によって,既存の債務を消滅させると同時にこれに代わる新しい債権を成立させること(民法513条以下)。甲の乙に対する債権を丙の乙に対する債権に切り替えるもの,甲の乙に対する債権を甲の丙に対する債権に切り替えるもの,債権の目的を切り替えるものの3種がある。→債権譲渡

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