日本大百科全書(ニッポニカ) 「大便」の意味・わかりやすい解説
大便
だいべん
消化過程の最終産物で、肛門(こうもん)から排泄(はいせつ)される糞便(ふんべん)をいう。食物の不消化部分、消化液、消化管上皮の剥離(はくり)したもの、腸内細菌などを含む。大便の量および回数は食物の種類や分量、消化吸収状態によって異なるが、だいたい1日100~200グラムで、1日1回が普通である。一般に、動物性食品を多くとると植物性食品の多食時に比べて量・回数とも少なくなる。色は胆汁色素によって黄褐色を呈するが、肉食が多いと黒褐色となり、下痢便では黄色ないし黄緑色となる。また薬剤の服用によっても種々の色を呈し、鉄剤やビスマス剤では黒色、センナ剤では黄赤色、ケイ酸アルミ剤では銀灰色となる。上部消化管で多量の出血があると、タール状の黒色泥状便となる。
大便の異常としては水分の多い下痢便と、排便の回数が健康時に比べて少ない、あるいは量が少なくて不快感を伴う便秘がある。また、糞便中の脂肪量は日本人の場合、1日3グラム以下を正常とするが、5グラム以上になると異常とされ、脂肪便とよばれる。これは軟便で水に浮き、吸収不良症候群にみられる症状の一つである。なお、大便の臭気はインドール、スカトール、硫化水素などによるもので、肉食が多いとこれらの発生が増して臭気が強くなる。
糞便の検査は消化器疾患の診断上非常に有用で、量、回数、色、形状、臭気などのほか、顕微鏡による成分や寄生虫卵の検査、潜血反応などが調べられる。
[柳下徳雄]