大便(読み)だいべん(英語表記)feces

翻訳|feces

精選版 日本国語大辞典 「大便」の意味・読み・例文・類語

だい‐べん【大便】

〘名〙 食べた食物のうち栄養素と水分小腸大腸で吸収した残りと、腸粘膜分泌物直腸から肛門を通って排泄されたもの。大用くそ。ふん。〔十巻本和名抄(934頃)〕

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デジタル大辞泉 「大便」の意味・読み・例文・類語

だい‐べん【大便】

肛門から排出される、食物のかす腸粘膜からの分泌物などのかたまり。便。くそ
[類語]うんこうんち便くそばばふん糞便人糞

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改訂新版 世界大百科事典 「大便」の意味・わかりやすい解説

大便 (だいべん)
feces

大便は消化過程の最終産物で,肛門から体外に排出される。大便の量は,食物の種類,分量によって異なるが,混合食の成人では1日100~200g,1日1回が普通である。動物性食品が多いときは量,回数とも少なくなる。大便の3/4は水分で,1/4が固形分である。固形分は,腸内細菌約30%,セルロースなどの食品中の不消化物や脱落消化管上皮約30%,脂質10~20%,無機物10~20%,タンパク質2~3%から成る。無機物はリン酸およびシュウ酸カルシウム,リン酸鉄などで,有機物はセルロース,タンパク質,脂質である。タンパク質中の窒素の約半分は腸内細菌に由来し,残りの半分は消化液,粘液,脱落上皮などからのもので,食物中のタンパク質はほとんど大便には出てこない。脂質の大部分は腸内細菌と脱落上皮由来の中性脂肪,脂肪酸とその塩で,一部は食物中の脂肪酸の未吸収分である。膵液や胆汁の分泌が不十分になると,大便中の脂質の量は著しく増加する。これを脂肪便という。このように大便の主成分は食物に由来しないから,長期の断食中でもかなりの量の大便が排出される。大便の色は胆汁色素による。通常は,胆汁中のビリルビンが腸内細菌の作用で還元されて生じたステルコビリンstercobilinにより,黄褐色を呈する。高度の下痢の場合は,ビリルビン還元の時間が不足するため,ビリルビン本来の色である黄色に近づく。肉食が多いと,ヘマチン硫化鉄などのために黒褐色になる。大便の臭気は,インドールスカトールメルカプタン硫化水素などによる。個人差が大きく,腸内細菌叢や食事内容によって左右される。

大便の貯留によって直腸壁が伸展されると便意を催す。同時に,副交感神経(骨盤神経)支配の内肛門括約筋は反射的に弛緩する。陰部神経支配の外肛門括約筋は横紋筋で常時緊張状態にあるが,意識的にゆるめることができ,拡張した直腸の反射的収縮によって排便がおこる。このような排便は脊髄反射であるが,外肛門括約筋の緊張と弛緩,それに腹筋の収縮(いきみ)によって意志的にも制御することができる。

激しい下痢は体力を消耗し,小児ではそのために死ぬこともある。下痢の際は多量の水分,ナトリウムイオンNa⁺,カリウムイオンK⁺が失われ,脱水,血液量減少を招き,ついにはショックに陥る。軽い下痢でも長時間続くと著しい低カリウム血症をきたす。下痢の反対便秘である。頑固な便秘や急に便通の様子の変わった場合には,病的原因の有無を精査する必要がある。しかし便通は元来健康人でも毎日1回必ずあるわけではなく,生活習慣による無害な便秘が多い。
(ふん)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大便」の意味・わかりやすい解説

大便
だいべん

消化過程の最終産物で、肛門(こうもん)から排泄(はいせつ)される糞便(ふんべん)をいう。食物の不消化部分、消化液、消化管上皮の剥離(はくり)したもの、腸内細菌などを含む。大便の量および回数は食物の種類や分量、消化吸収状態によって異なるが、だいたい1日100~200グラムで、1日1回が普通である。一般に、動物性食品を多くとると植物性食品の多食時に比べて量・回数とも少なくなる。色は胆汁色素によって黄褐色を呈するが、肉食が多いと黒褐色となり、下痢便では黄色ないし黄緑色となる。また薬剤の服用によっても種々の色を呈し、鉄剤やビスマス剤では黒色、センナ剤では黄赤色、ケイ酸アルミ剤では銀灰色となる。上部消化管で多量の出血があると、タール状の黒色泥状便となる。

 大便の異常としては水分の多い下痢便と、排便の回数が健康時に比べて少ない、あるいは量が少なくて不快感を伴う便秘がある。また、糞便中の脂肪量は日本人の場合、1日3グラム以下を正常とするが、5グラム以上になると異常とされ、脂肪便とよばれる。これは軟便で水に浮き、吸収不良症候群にみられる症状の一つである。なお、大便の臭気はインドール、スカトール、硫化水素などによるもので、肉食が多いとこれらの発生が増して臭気が強くなる。

 糞便の検査は消化器疾患の診断上非常に有用で、量、回数、色、形状、臭気などのほか、顕微鏡による成分や寄生虫卵の検査、潜血反応などが調べられる。

[柳下徳雄]

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百科事典マイペディア 「大便」の意味・わかりやすい解説

大便【だいべん】

普通,ヒトの(ふん)をいう。健康人では1日総量100〜250gほどで,そのうち水分は65〜80%。色は胆汁色素ビリルビンやその代謝産物に,臭気はインドール,スカトール,硫化水素などによる。異常便には下痢便(下痢),血便などがある。→便秘

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