ベニン王国(読み)べにんおうこく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベニン王国」の意味・わかりやすい解説

ベニン王国
べにんおうこく

西アフリカナイジェリア南部の熱帯雨林地帯に、14世紀ごろに建設され15~17世紀に繁栄した王国ニジェール川デルタから西端はダオメー(現ベナン)に至る広大な領土を有した。首都ベニン・シティはポルトガル人商人や宣教師の活動の場所となり、胡椒(こしょう)、象牙(ぞうげ)、奴隷などが取引された。来訪したヨーロッパ人が当時のベニン・シティの規模の大きさ、大通り、整然とした家並み、また広壮な王宮についての報告を残している。芸術性が高く世界的に有名なベニンの青銅細工(人像、飾り板)は13世紀に始まるといわれ、ベニン博物館には王国初期のものも残されている。19世紀ごろから王国は衰退し、1897年には宣教師団が殺害されたことに反発したイギリスの攻撃を受け、王は追放されイギリス領に組み入れられた。

[中村弘光]

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百科事典マイペディア 「ベニン王国」の意味・わかりやすい解説

ベニン王国【ベニンおうこく】

現在のナイジェリア南部,ニジェール川の西岸に13世紀から19世紀まで存在したエド族の王国。文化的には近隣ヨルバ族の影響を受け,なかでも青銅彫刻は名高い。15世紀からはヨーロッパ人が来航,象牙や奴隷の交易で大いに繁栄した。特に首都ベニン・シティの壮大で整然としたさまはヨーロッパ人も目をみはったという。17世紀後半以降オヨ王国の勢力伸長にともない徐々に衰退,最後は1897年英国軍の攻撃で滅んだ。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ベニン王国」の解説

ベニン王国
ベニンおうこく
Benin

西アフリカ・ナイジェリア南部の熱帯雨林地域に13世紀ごろ建てられた王国
首都のベニン−シティにはポルトガル商人や宣教師が訪れ,胡椒・象牙・奴隷などとヨーロッパの銃火器との取り引きが盛んとなった。また,青銅や象牙細工,木彫りなどは芸術性が高く,世界的に有名である。15〜17世紀に繁栄したが,18世紀ごろより衰退し,1897年宣教師団の殺害を機にイギリス領となった。

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世界大百科事典 第2版 「ベニン王国」の意味・わかりやすい解説

ベニンおうこく【ベニン王国】

西アフリカ,現在のナイジェリアの西部州にあるベニン・シティに13~18世紀ころに存在した王国。ベニン・シティより西にいくつかの国家をもっていたヨルバ族の一部が,13世紀ころにはこの王国の原型をつくっており,15世紀までにはこの都市を中心にニジェール川の西方に広がるデルタ地帯にかなり大きな国家をつくっていた。したがってベニン王国はヨルバ文化の影響下にある。 ヨーロッパとの接触以前に強大な王国をつくったのは,15世紀半ばから後半に在位したウアレ王で,ニジェール川西岸の領土を拡大する一方,首都ベニンを整備するとともに要塞化して強固にした。

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世界大百科事典内のベニン王国の言及

【アフリカ】より

…中部アフリカのナイジェリアでは,前500‐後200年にノク文化が栄え,抽象的造形に特色のあるテラコッタ製の人物像が生み出された。後世同地域に栄えたイフェ王国ベニン王国では,造形的・技術的にすぐれた青銅およびシンチュウの彫刻(人物・人頭,動物など)が製作されている。そして11~18世紀には,モノモタパないしマンボMamboという称号をもつ王が支配する王国(モノモタパ王国)が,ジンバブウェをはじめ南部アフリカ各地に巨大な石造建築群をのこした。…

【象牙】より

…アフリカが供給してきた象牙はほとんどすべて未加工の素材であったが,アフリカにすぐれた象牙製品が存在しないわけではない。たとえば15世紀に興隆をきわめたギニア湾岸のベニン王国では,宮廷に専門の象牙職人を擁し,腕輪や仮面,2m前後の巨大な象牙をそのまま用いて全面に精緻な彫刻をほどこした祭祀用具などは,いずれも高度な技術と美的完成度において,世界的レベルに達している。象牙彫【渡部 重行】。…

【部族美術】より

…その様式は非常に写実的で,骨,筋肉,皮膚の詳細を的確に表現し,とくに青銅彫刻の鋳造技術は抜群である(イフェ王国)。イフェ王国の青銅彫刻の伝統はビニ族のベニン王国(14~19世紀)に受けつがれた。ベニン王国の美術には丸彫の種々の人物像,動物像,祭儀用具や人物,動物,植物を組み合わせた浮彫板などがある。…

※「ベニン王国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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