「論語」と孔子の名言

故事成語を知る辞典 「「論語」と孔子の名言」の解説

「論語」と孔子の名言

日本人は昔から、中国の書物に親しんできました。その中でも、最も多くの人々に読まれ、人生の指針とされてきた書物。それが、「論語」です。

■「論語」とは、儒教開祖孔子言行を記録した書物です。孔子は、紀元前五五二年(一節には五五一年)に、現在の山東省にあった、という国に生まれました。若いころは貧しく、さまざまな苦労をしたようですが、やがて、その伝統文化に対する深い理解と、筋の通った言動とで一目置かれるようになり、役人として頭角を現します。五〇代のはじめには大臣クラスにまで昇り詰めましたが、政権争いに敗れて辞職以後、自分の主張を実現するため、十数年にわたって諸国を遊説して回ったものの、召し抱えてくれる国はありませんでした。晩年は、故国に戻り、弟子たちの教育と、伝統文化を伝える書物の整理とに精力を傾け、紀元前四七九年に亡くなっています。

■「論語」が愛読されてきた理由の一つは、いわゆる処世訓を数多く含んでいるところにあるでしょう。「過ちては改むるに憚ることなかれ、「己の欲せざる所は人に施すなかれ、「義を見てせざるは勇なきなり、「過ぎたるはなお及ばざるがごとしなどは、いずれも、人が生きていく上で大切なことを簡潔に言い表した、名言です。

■処世訓に富んでいる「論語」は、説教臭い書物だと思われがちです。しかし、実際の「論語」には、処世訓とはことなる魅力を持つことばも、たくさん見られます。

■たとえば、「逝く者はかくのごときかでは、川の流れを前にしながら、孔子が詩人のようなつぶやきを洩らして見せます。「酒は量無し、乱に及ばずでは、お酒を飲む孔子の姿が。また、「鶏を割くになんぞ牛刀を用いんや「この人にしてこの病ありのように、孔子と弟子たちとの人間的な交流をしのばせることばも、含まれています。

■このように、「論語」とは、人生を知り尽くした孔子という人物の、人間的な魅力が詰まった書物なのです。

■なお、紀元前の中国における孔子の存在感は抜群で、儒教以外の書物にも、よく孔子が登場します。「荘子」に由来する「君子の交わりは淡きこと水のごとしや、「流水に鑑みる無くして止水に鑑みるは、その例です。

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