晩年
ばんねん
太宰治(だざいおさむ)の第一創作集。1936年(昭和11)6月、砂子屋(すなごや)書房より刊行。思想混乱の時代の青年の生存苦をテーマに、多彩な手法を試みた短編15編を収める。『葉』は習作の断片を集めた精神的自伝。『思ひ出』は自伝的小説。『魚服(ぎょふく)記』『地球図』『猿ヶ島』は伝統的短編小説の手法による佳作。『道化の華』は心中の体験を素材にするが、登場人物でも作者でもない「僕」が創作の意味方法について混迷を告白するという実験的小説。『逆行』は小品を連ねた形式で、第1回芥川(あくたがわ)賞候補作。
[鳥居邦朗]
『『晩年』(新潮文庫)』
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ばん‐ねん【晩年】
[1] 〘名〙
※凌雲集(814)「久在二外国一晩年帰学」
※随筆・文会雑記(1782)三「僧契沖〈
略〉晩年摂州妙法寺の住持となり」 〔盧思道‐春夕経行留侯墓詩〕
② 一年の終わりのころ。年末。
※俳諧・毛吹草(1638)二「極月〈略〉年たかへ、柊さす門、晩年」
[2] 短編小説集。太宰治作。昭和一一年(
一九三六)刊。同八年ごろから
遺書のつもりで書いた、「葉」「思ひ出」「魚服記」「
ロマネスク」など一五編を収録した第一創作集。
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デジタル大辞泉
「晩年」の意味・読み・例文・類語
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ばんねん【晩年】
太宰治の第1創作集。1936年砂子屋書房刊。初版には,1933年から36年にかけて発表された15の短編が収められている。遺書のつもりで書いたので《晩年》と題された。内容,文体ともに多彩で,太宰治の才能の萌芽がすべて出そろっている。そのなかで《葉》(1934)は習作の断簡によって構成された異色の作品。左翼運動からの転向後最初に書かれた《思ひ出》(1933)は幼年期から中学時代までの特異な感受性の成長をすなおに描き出した自伝的小説であり,《魚服記》(1933)は作者の内面の苦悩と民話的世界とが一体となった変身譚である。
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普及版 字通
「晩年」の読み・字形・画数・意味
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