過ぎたるはなお及ばざるがごとし(読み)すぎたるはなおおよばざるがごとし

故事成語を知る辞典 の解説

過ぎたるはなお及ばざるがごとし

度が過ぎたものは、足りないものと同様によくない。ものごとには程よさが大切である、ということ。

[使用例] 過ぎたるはなほ及ばざるが如しとは、即ち弊害と本色と相反対するを評したる語なり。たとえば食物の要は身体を養うに在りといえども、これを過食すればかえっその栄養を害するが如し[福沢諭吉学問のすすめ|1872~76]

[使用例] 無双な腕力を持っていても、これを生かすべき戦乱はなく、ために栄達の折もなく、むしろ過ぎたるは及ばざるにかずのごとき無事泰平を示現しつつありましたので[佐々木味津三*旗本退屈男|1929]

[由来] 「論語先進」に出て来る、孔子名言弟子こうが、先輩弟子のちょうとのどちらがすぐれているか、孔子に尋ねたことがありました。孔子の答えは、「子張は行きすぎるところがあり、子夏は足りないところがある」。「では、子張の方がすぐれているのですか」と、子貢が重ねて質問すると、孔子は、「過ぎたるはなほ及ばざるがごとし(行きすぎは、足りないのと同じようなものだ)」と答えたということです。

[解説] ❶子貢は才知にあふれた人物で、外交官として活躍する一方投機をして巨万の富をも築きました。そんな彼が「行きすぎ」の方がすぐれていると思ったのは、自分に近いからでしょうか。孔子のことばは、子貢自身に対する戒めだったのかもしれません。❷「論語」の章句としては、「中庸(ほどよいこと)」のすすめとして解釈されていますが、故事成語としては、「行きすぎ」を戒める意味で用いられるのがふつうです。

〔異形〕過ぎたるは及ばざるがごとし/過ぎたるは及ばざるにかず。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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