デジタル大辞泉
「有様」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
あり‐さま【有様】
〘名〙
① 外から見ることのできる、物事の状態。様子、景色、
光景、また、人の
容姿、
態度など。
※土左(935頃)承平五年二月一六日「家にいたりて門
(かど)に入るに、月あかければ、いとよく
ありさま見ゆ」
※イタリアの歌(1936)〈
川端康成〉「赤く膨れて崩れた顔は、〈略〉化物じみたありさまだった」
② そのものがおかれ
ている状態。人の身分、境遇など。
※
源氏(1001‐14頃)宿木「数ならぬありさまなめれば、かならず、人笑へに、憂き事いでこんものぞ」
③ 一見しただけではわからないような、物事の
事情。実際の状態。
実情。また、物事のくわしい様子。詳細。
※伊勢物語(10C前)二一「出でていなば心軽しといひやせん世のありさまを人は知らねば」
※
地蔵菩薩霊験記(16C後)二「罪障のほど犯科の分野
(アリサマ)を乞受け給ふ」
④ 物事の状態と、それから感じとられる気配。形勢。また、物事の変わっていこうとする様子。情勢。
※
太平記(14C後)
一一「只今打ち立たんずる形勢
(アリサマ)にて、楯を矯
(はが)せ、鏃
(やじり)を礪
(と)ぐ最中也」
あり‐よう ‥ヤウ【有様】
〘名〙
①
事物の状態。様子。ありさま。あるよう。なりゆき。
※土左(935頃)承平五年一月一一日「人皆まだ寝たれば、海のありやうも見えず」
※宇治拾遺(1221頃)四「まづ篤昌(あつまさ)がありやうをうけたまはらん」
② 状態の原因。事情。理由。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「『なぞかく申す』とて御随身問へば『〈略〉さらせ給なん時、ありやうは申さん』とていへば」
③ 偽りや、飾りのない、そのままのありさま。実情。ありのまま。あるよう。ありてい。
※玉塵抄(1563)三「正直にかざらずありやうにしるいたぞ」
④ (「ありよう(有様)は」の形で用いて) 実際のところは。本当のところは。
⑤ あるべき様子。また、あるべき理由。あるわけ。「この会のありよう」「ありようがない」
ある‐よう ‥ヤウ【有様】
〘名〙
※源氏(1001‐14頃)
総角「旅の宿りのあるやうなど、人の語る思しやられて、をかしく思さる」
※宇津保(970‐999頃)
嵯峨院「この君は、あるやうありてやかくこもりゐ給つらん」
※能因本枕(10C終)四四「梨の花〈略〉もろこしには限りなき物にて文にも作るなるを、さりともあるやうあらんとて、せめて見れば」
[語誌]本辞典では
名詞としたが、「ありさま」「ありよう」が一語として意識されていたのに対し、この語は二語として意識されていたのではないかと思われる。したがって、「有」「在」の実質的な意味が失われずに用いられている例が多く見られる。中古以降「ありよう」に吸収されたと考えられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報