精選版 日本国語大辞典 「設・儲」の意味・読み・例文・類語
もうけ まうけ【設・儲】
① 前もって用意・準備をしておくこと。準備。用意。したく。また、将来の事態のために必要な品物や設備。
※伊勢物語（１０Ｃ前）七八「親王よろこび給うて、夜の御座(おまし)のまうけせさせ給ふ」
② 特に、もてなし・供応のための、食事などの用意・したく。あるじもうけ。
③ 将来のためのたくわえ。貯蓄。
※世俗諺文鎌倉期点（1250頃）「九年の儲(マウケ)」
④ あらかじめ練習をしておくこと。予行。
⑤ 予備のもの。
⑥ 事を成そうとして計画すること。計略をめぐらすこと。また、その計画・計略。
⑦ (②から転じて) 食事。食物。
※徒然草（1331頃）五八「紙の衾、麻の衣、一鉢のまうけ、藜(あかざ)のあつ物、いくばくか人の費をなさん」
※竹むきが記（1349）下「人々にも盃度々すすむ。永清、まうけの事さまざまありて、夜とともにひしめきあへり」
⑨ 地位などが、あらかじめ決められていること。予定されていること。
※今鏡（1170）四「まうけの関白、一の人の太郎君にて、あへなくなり給ひにしかば」
⑩ 子を得ること。誕生すること。
⑪ あらたに作りもうけること。設備・組織などを設立すること。
※西国立志編（1870‐71）〈中村正直訳〉一一「未だ学校の設(モウケ)あらざりし前に」
※玉塵抄（1563）五五「羊を庖丁してそのまうけで世をすぐる者を説(えつ)と云たぞ」
もう・ける まうける【設・儲】
〘他カ下一〙 まう・く 〘他カ下二〙
[一] 将来それが必要となるときのために、あらかじめ用意・準備をする。まく。
① 前もって用意・準備をする。用意し整える。
② 特に、食事や供応、あるいは儀式などのしたくをする。また、そこに来る人を待ちうける。
※落窪（１０Ｃ後）一「四の君もまた御婿取し給はんとまうけ給ふめりと」
③ あらかじめ計画をめぐらす。すぐ応じられるように準備する。用意をととのえて待ち構える。
※今昔（1120頃か）二九「夜半許に其の門の許に至て門を押さば、儲て門を開よ」
[二] 作り構える。また、ある物を自分のものとして備える。
① 建物・設備・組織などを作り構える。設置する。
※宇津保（970‐999頃）藤原の君「あなたの御腹の三所、宮の御腹の四所、町々に住ませ奉り給ふ。御男なき御かたも、皆まうけ給へり」
② わが身にゆかりある人を作る。縁を結んで自分のものにする。
(イ) 妻・夫・義理の親などの関係を結ぶ。妻・夫・義理の親などを持つ。
※大和（947‐957頃）一四九「この女いとわろくなりにければ、思ひわづらひて、かぎりなくおもひながら妻をまうけてけり」
(ロ) 子どもを得る。また、懐妊する。
※源氏（1001‐14頃）末摘花「故常陸の親王の末にまうけて、いみじうかなしうかしづき給ひし御むすめ」
[三] 思いがけなく身に受ける。
① 思いがけなく病気などにかかる。
※徒然草（1331頃）一七五「財を失ひ、病をまうく」
② 思いがけない得をする。利益を得る。また、金銭の利益を得る。利潤を得る。
※今昔（1120頃か）二五「衣の要有ければ、衣少し儲と思て」
※徒然草（1331頃）五三「からき命まうけて、久しく病みゐたりけり」
③ 芸能で、観客の同情や共感が得やすい役柄やしぐさで人気や喝采(かっさい)を一人占めにする。当たりをとる。転じて、一般的に好評をうけることにもいう。
※滑稽本・八笑人（1820‐49）二「扇をぱっトひらいて、一とつギックリやって、まうけさっし、扇をば遣ッコなしがよからう」
まけ【設・儲】
〘名〙 (動詞「まく（設）」の連用形の名詞化) 用意すること。また、用意した物事。もうけ。
※孔雀船（1906）〈伊良子清白〉戯れに「わが居る家の厨内(くりやうち)、働く妻をよびとめて、夕(ゆふべ)の設(マケ)をたづぬるに」
もう・く まうく【設・儲】
〘他カ下二〙 ⇒もうける（設）
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